1章
夢小説設定
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私を包んだ闇には大きな目と鋭い牙を持つ口が無数についていた
だが私は恐怖を感じない
むしろ一人ぼっちだった私の心を満たしてくれる
右も左も分からない私に寄り添ってくれる、唯一無二の存在は意外と温かかった
「こ、これは…!!」
「はは、はははははははははッ!!いいぞ!そうだ、それがお前の力だ!!その脅威の力でヒーローを殺せ!!」
私の影から伸びる闇は部屋を飲み込む勢いで範囲を広げていく
マッドサイエンティストがまるで自分の偉業のように腕を広げて己の征服欲を満たしている
その様が何とも滑稽で、まるで画面越しにコメディを見ているような気分だ
うるさいので軽く黙らせようと私が口を開くよりも先に、闇が鋭い形に変わってマッドサイエンティストをきつく締め上げると同時に口を塞いだ
聞き間違いでなければ確かに骨の軋む音が聞こえた筈なんだが…加減は必要最低限しかしないらしい
《うるさいですね…》
「「!?」」
頭の中で聞こえた声と同じ声が、今度は鼓膜を通じて聞こえた
やっぱりこうした方が慣れていて落ち着く…
闇は赤く光る目で締め上げ、持ち上げたマッドサイエンティストを睨む
《あまり喚かないで頂きたい。私達の大切な宝の繊細な鼓膜が穢れます》
「んーッ!?んんーー!!」
《無駄ですよ。貴方のような脆弱な人間ごとき、私が少し力を入れるだけでその身体を裂くことも出来ます》
「んぅうッ!!?」
「ま、待ってくれ少女!殺しては駄目だ!!」
アメコミ男…確か、オールマイトだったか
印象的な喋り口調で話す彼に意識を向ける前に私のやせ細った貧相な体が宙に浮いた
正確には、闇に持ち上げられて揺り籠のように包み込んでくれている
闇は私を守るようにオールマイトと私の間に入った
《人間ごときが…宝に命令などしないで頂きたいですね》
「命令ではない!頼みだ!ここでその男を殺せば、彼女は人殺しの業を背負わなければいけなくなる!!それでは少女の明るい未来が閉ざされてしまう…ッ!!」
『……!』
この人は、本当に私のことを心配してくれているんだ…
私の"個性"とやらであるこの闇が犯罪を犯せば、それは全て私の責任になる
私は犯罪者として新しい生を謳歌出来ないまま無駄な時間を過ごすことになるかもしれない
それは、嫌だな…
《……ではこの男はどうするのですか?宝にこんな仕打ちをしておいて、まさか赦される筈がありませんよね?》
闇が触手で持ち上げたマッドサイエンティストは何と気絶していた
どうやらさっきの脅しが効いたらしい
「無論、この男には然るべき罰が与えられる。それにこの研究所で何をしていたのかも聞き出さなければならない。だからどうか、その男の身柄を渡してほしい」
《…どうします?宝》
唐突に話し掛けられた私だが、頭は至って冷静だ
こんな得体の知れない男の為に新しい人生を棒に振る程私はバカじゃない
『…わたしてあげて』
《分かりました》
随分と若い自分の声と舌っ足らずな口調が恥ずかしく、小さく答えてから私は闇の触手の後ろに隠れた
肉体がどれだけ幼くても精神はいい年の大人なんだ
羞恥心を持たない方がおかしいと断言出来る
オールマイトがマッドサイエンティストを受け取ったのを確認してから、私は闇に話し掛ける
『あなた、なまえは?』
《私は、傲慢 のプライド》
『プライド…』
《私の他にも、あと6人居ますよ。皆、貴女に会いたがっています。ですが…今は外に出ることを優先しましょう。自己紹介はそれからでも遅くはありませんので》
『ん、わかった』
《いい子ですよ、私の宝》
自分の能力に人格があるのには驚いたが、天涯孤独な私には有難い
これでもし家なき子になっても話し相手にはなってくれるだろう
そうなったら公園の遊具にでも隠れて生活しよう
存外前向きだな、私
というか、凄く今更だが…私の名前は前世と同じなんだな
名前がない筈の私のことをプライドは普通に呼んでいるのはおかし過ぎる
もし聞かれたら適当に答えておかないと…
「…すまなかった」
『え?』
「もっと早く見つけていれば、こんな事態にはならなかっただろう…。本当に、すまない」
子ども相手に頭を下げるオールマイトからは、悔みと悲しみの感情が伝わってくる
私の存在が今後、表社会に限らず裏社会でも注目を浴びるのは避けられない
だけど、私から見ればそんなの些末なことだ
『だれも、しんでない』
「!!」
『だから、だいじょーぶ』
見上げた先にある青い2つの光
前世で見た青空と同じその色に惹かれた私は、顔の表情筋を緩めて笑った
早く、貴方と同じ色の空が見たい
だが私は恐怖を感じない
むしろ一人ぼっちだった私の心を満たしてくれる
右も左も分からない私に寄り添ってくれる、唯一無二の存在は意外と温かかった
「こ、これは…!!」
「はは、はははははははははッ!!いいぞ!そうだ、それがお前の力だ!!その脅威の力でヒーローを殺せ!!」
私の影から伸びる闇は部屋を飲み込む勢いで範囲を広げていく
マッドサイエンティストがまるで自分の偉業のように腕を広げて己の征服欲を満たしている
その様が何とも滑稽で、まるで画面越しにコメディを見ているような気分だ
うるさいので軽く黙らせようと私が口を開くよりも先に、闇が鋭い形に変わってマッドサイエンティストをきつく締め上げると同時に口を塞いだ
聞き間違いでなければ確かに骨の軋む音が聞こえた筈なんだが…加減は必要最低限しかしないらしい
《うるさいですね…》
「「!?」」
頭の中で聞こえた声と同じ声が、今度は鼓膜を通じて聞こえた
やっぱりこうした方が慣れていて落ち着く…
闇は赤く光る目で締め上げ、持ち上げたマッドサイエンティストを睨む
《あまり喚かないで頂きたい。私達の大切な宝の繊細な鼓膜が穢れます》
「んーッ!?んんーー!!」
《無駄ですよ。貴方のような脆弱な人間ごとき、私が少し力を入れるだけでその身体を裂くことも出来ます》
「んぅうッ!!?」
「ま、待ってくれ少女!殺しては駄目だ!!」
アメコミ男…確か、オールマイトだったか
印象的な喋り口調で話す彼に意識を向ける前に私のやせ細った貧相な体が宙に浮いた
正確には、闇に持ち上げられて揺り籠のように包み込んでくれている
闇は私を守るようにオールマイトと私の間に入った
《人間ごときが…宝に命令などしないで頂きたいですね》
「命令ではない!頼みだ!ここでその男を殺せば、彼女は人殺しの業を背負わなければいけなくなる!!それでは少女の明るい未来が閉ざされてしまう…ッ!!」
『……!』
この人は、本当に私のことを心配してくれているんだ…
私の"個性"とやらであるこの闇が犯罪を犯せば、それは全て私の責任になる
私は犯罪者として新しい生を謳歌出来ないまま無駄な時間を過ごすことになるかもしれない
それは、嫌だな…
《……ではこの男はどうするのですか?宝にこんな仕打ちをしておいて、まさか赦される筈がありませんよね?》
闇が触手で持ち上げたマッドサイエンティストは何と気絶していた
どうやらさっきの脅しが効いたらしい
「無論、この男には然るべき罰が与えられる。それにこの研究所で何をしていたのかも聞き出さなければならない。だからどうか、その男の身柄を渡してほしい」
《…どうします?宝》
唐突に話し掛けられた私だが、頭は至って冷静だ
こんな得体の知れない男の為に新しい人生を棒に振る程私はバカじゃない
『…わたしてあげて』
《分かりました》
随分と若い自分の声と舌っ足らずな口調が恥ずかしく、小さく答えてから私は闇の触手の後ろに隠れた
肉体がどれだけ幼くても精神はいい年の大人なんだ
羞恥心を持たない方がおかしいと断言出来る
オールマイトがマッドサイエンティストを受け取ったのを確認してから、私は闇に話し掛ける
『あなた、なまえは?』
《私は、
『プライド…』
《私の他にも、あと6人居ますよ。皆、貴女に会いたがっています。ですが…今は外に出ることを優先しましょう。自己紹介はそれからでも遅くはありませんので》
『ん、わかった』
《いい子ですよ、私の宝》
自分の能力に人格があるのには驚いたが、天涯孤独な私には有難い
これでもし家なき子になっても話し相手にはなってくれるだろう
そうなったら公園の遊具にでも隠れて生活しよう
存外前向きだな、私
というか、凄く今更だが…私の名前は前世と同じなんだな
名前がない筈の私のことをプライドは普通に呼んでいるのはおかし過ぎる
もし聞かれたら適当に答えておかないと…
「…すまなかった」
『え?』
「もっと早く見つけていれば、こんな事態にはならなかっただろう…。本当に、すまない」
子ども相手に頭を下げるオールマイトからは、悔みと悲しみの感情が伝わってくる
私の存在が今後、表社会に限らず裏社会でも注目を浴びるのは避けられない
だけど、私から見ればそんなの些末なことだ
『だれも、しんでない』
「!!」
『だから、だいじょーぶ』
見上げた先にある青い2つの光
前世で見た青空と同じその色に惹かれた私は、顔の表情筋を緩めて笑った
早く、貴方と同じ色の空が見たい