カラーシャンプー
「あ?ジナニヒョンもう風呂入ったの、一緒に入ろうと思ってたのに」
「うん。アホなこと言ってないでジュンフェも早く入ってきたら、…ふぁ」
小さな口を手で隠し、ひとつあくびをする。涙に濡れる睫毛とか、あくびの後にもにょもにょ動く唇とか、なんでこんなに可愛いんだこの人は。小動物みたいな可愛さがあって、俺は思わずジナニヒョンの赤い頭を撫でてしまう。
「てかちゃんと頭拭けよ…」
よく見れば髪から水が滴っていて、撫でた手にも冷え始めた水が付いている。風邪引くぞマジ。
「んん〜」
話聞いてんのかこの人。相当眠いっていうかもう半分寝てる?
「すぐ上がるんで。髪乾かして待っててくださいね」
「はぁ〜い」
返事だけは良いな。…いや、今の返事良かったか?気の抜ける返事だったろ。良くはないだろ。俺あの人に対して甘すぎなのかな。でも表情可愛かったし…、こういうとこか俺。やっぱ甘すぎかも。
まあいいや、さっさとシャワー浴びてジナニヒョンのとこ行こ。
服を脱いで風呂場のドアを開けると、独特の湿って暖かい空気が俺を出迎える。誰かが入った後って寒くなくていいな。
「…?」
使おうと思って手を伸ばしたシャンプー。その横には、半分くらいまで真っ赤な中身が入った透明な…、何の容器?
どこかで見たな。どこで見たんだっけ。そもそもこれなんだっけ。
手に取って眺めて思い出す。
これ、ジナニヒョンのカラーシャンプーか。
色持ちをよくするために使うとかなんとか言ってた気がする。俺もこういうの使った方が良いのかな。
それにしてもすげえ色だ。
何の気なしに中身を手に出してみる。ほんの少量、たぶん普通のシャンプー半プッシュ分とかそれくらい。それだけの量でもシャンプーの甘い匂いが鼻をくすぐる。
泡立ててみても色は赤いままで、そりゃ髪も色落ちしねえわ、と納得した。染まるわけだよ。めっちゃ色濃いもん。俺がこれ使っちゃったら色入るかな?入るよな。それは駄目だな。今髪青くしてるし。流そう。
…ちゃんと洗ったけど心なしか爪が赤く染まってる。気がする。気のせいかも。
あと、と手を鼻の近くに持っていく。
シャンプーの甘ったるい匂いが消えない。
「さっむ…」
脱衣所から部屋までの廊下はとにかく寒い。冷えた床が足に痛く、自然と早足になる。
すん、と指の匂いを嗅ぐ。あのあと普通にシャワーを済ませても匂いが残ってるような、残ってないような。なんとなく落ち着かない。
「ただいまー」
部屋に入ってため息をひとつ。
「髪乾かせっつったじゃん…」
そこには、ベッドに座り、壁にもたれて寝息を立てるジナニヒョンの姿があったからだ。
起こそうと思った。ジナニヒョンの前に歩み寄って、軽く揺するか何かして。
でも、近くで顔を見ると、起こすのがもったいなく感じてきた。
可愛かったんだ。俺より三つも年上のくせにあどけなくて、なのに微妙な色気が漏れる寝顔が。
ちょっと短い睫毛と小さい鼻、うっすら開いた桜色の唇、ハート形のほくろ、白くて柔らかそうな肌。水分を含んでよくわからないことになってる前髪すらかわいい。
こんなかわいいジナニヒョンの顔を見られるのは俺だけで、その優越感とヒョンの圧倒的な可愛さににやけが止まらない。ジナニヒョン超かわいい。世界で一番かわいい。誰にも見せない、この顔は俺だけが知ってればそれでいい。
ジナニヒョンかわいいだろ?でもだめ。ジナニヒョンは俺の。誰にもあげない。俺誰に話してんの?
そんな世界一かわいいジナニヒョンだから、好きが溢れて俺がキスしちゃうのも当たり前のこと。
薄くて柔らかい唇、いつも綺麗な歌を紡ぐ唇、俺を狂わせるこの唇。
重ねるだけじゃ物足りなくなって、唇で唇を食んだのが悪かったのか、ジナニヒョンが目を開けてしまった。
「あ、ごめん。起こした」
「んんう…」
返事もそこそこに、今度はジナニヒョンの方から唇を塞いでくる。ついでに腕を俺の首に回して、唇の隙間から舌を入れて、部屋着に手を差し入れて煽るように俺の腰を…って、
「ちょちょちょ、待っ、ジナニヒョンストップ!」
「え?しないの?我慢できるの?」
「今日はしないから!ジナニヒョン半分寝てるし俺そんなに飢えてません!」
本当はちょっと期待してたけど!ジナニヒョン眠そうだし!お疲れモードのヒョンに無理させるほど俺は鬼でもダメ男でもない!…と思いたい。
「ふ〜ん、へ〜え」
「なんすか」
「ううん?ジュンフェ、明日はしようね」
「っ…ハイ」
あぶね、今グラっときたわ。だって笑って首かしげて言うんだもん。かわいすぎるだろ。でもここでやっぱしたいとか言ったら男が廃る、明日だ明日。明日の夜を楽しみにしてろクジュンフェ。最高にかわいいジナニヒョンがお前を待ってる。
「そういえばこれ忘れてましたよ」
ずっと手に持っていたカラーシャンプーを渡すと、ヒョンは一瞬目を見開いてからにっこり笑った。
「ん、あー!持ってきてくれたんだ、ありがとう」
俺この笑顔のために生きてる。
「いえいえ。ほらヒョン頭乾かして、俺言ったでしょ」
コンセントを挿してドライヤーを差し出す。けれどヒョンは受け取らずに「えーめんどくさい」とか言って、それから俺を見上げる。なんすかその顔。なんすかその上目遣い。
「ジュンフェやってよ」
「ン"ッ…」
変な声出た。変な声出た!かわいすぎて!
「しょうがないなジナニヒョンは…」
「やったあ」
もう、この人、本当になんなの?弟に甘えるなんてかわいいなーって次元じゃないんだけど?あなたは俺をどうしたいの?さっきから全力で抱き締めそうになってるのを耐え続けてるんだけど?
俺はベッドに、ジナニヒョンは俺の足の間の床に座り、ドライヤーの温風を当てていく。うつらうつらしてるけど乾かしてる間は起きててくださいね。
「…あ」
ジナニヒョンの髪からする甘い匂い、これカラーシャンプーの匂いか。なんか嗅いだことあると思ったんだよ。
もう乾いたかな、ってところで冷風を当てて終了。ジナニヒョン起きてます?
「んん〜、ありがとうジュンフェ…ふぁあ」
「ジナニヒョン起きてたの」
「いや半分ぐらい寝てた」
だよね。
あーもうほらほら目ぇ擦んな。痒いのは分かるけどダメだよヒョン。
「ほらもう寝よ。ジナニヒョン電気消してこっちきて」
布団を剥いでベッドに転がりながらベッドサイドの灯りを点ける。電気全消ししちゃったらジナニヒョンがこっち見えないからな。
少ししたらジナニヒョンがベッドに乗ってくる。二人で「そうじゃないよ」とか「こうしよ、ほら」とか言いながら身体の位置を調節して(これが結構難しい)、ちょうどいいところで剥がしてた布団を掛ける。
「くじゅんふぇー」
「なに」
「呼んだだけ」
「子供みてえ」
思わず小さく吹き出す。今夜のジナニヒョンは本当に子供みたいだ。甘えん坊で可愛くて、酒でも飲んだのかな?酔ってる?
「ジュンフェの前だけだよ、知ってるでしょ?」
「うん♡」
ハートマークつけちった。まあいいか今日くらい。だってジナニヒョンが俺の独占欲を満たす言葉を、めちゃくちゃ嬉しい言葉を言ってくれるから。ヒョン、そりゃときめきますって。
腕の中にいるヒョンの赤い頭に顔を埋めてそっと息を吸う。鼻腔をくすぐるのはあの甘い匂い。
「ジナニヒョンいい匂い…」
「うわ、なんだ、やめろぉ」
「かわいすぎかよ」
逃げられないようにぎゅっと抱きしめる。ぎゅ、ぎゅっ。
こんなに小さくて細くてもやっぱり男の体で、ごつごつしてたり筋肉に当たったりして、未だになんだか不思議だ。こんなにかわいい男がいるか?って感じ。いるけど。俺の腕の中に。
「じゅんふぇ」
「うん?」
「おやすみ」
機嫌良さそうに微笑んでそう告げるジナニヒョンに胸がギュッとする。キュン、じゃなくてギュッ。ちなみに最上級は胸が爆発だ。
この人のこのかわいさが俺を魅了してやまない。ほんと、いつもいつもヒョンのことばっかり考えてる。
ジナニヒョンの甘い匂いのする赤い髪にやわらかく唇を落とし、俺もこう囁いた。
「おやすみ」
「うん。アホなこと言ってないでジュンフェも早く入ってきたら、…ふぁ」
小さな口を手で隠し、ひとつあくびをする。涙に濡れる睫毛とか、あくびの後にもにょもにょ動く唇とか、なんでこんなに可愛いんだこの人は。小動物みたいな可愛さがあって、俺は思わずジナニヒョンの赤い頭を撫でてしまう。
「てかちゃんと頭拭けよ…」
よく見れば髪から水が滴っていて、撫でた手にも冷え始めた水が付いている。風邪引くぞマジ。
「んん〜」
話聞いてんのかこの人。相当眠いっていうかもう半分寝てる?
「すぐ上がるんで。髪乾かして待っててくださいね」
「はぁ〜い」
返事だけは良いな。…いや、今の返事良かったか?気の抜ける返事だったろ。良くはないだろ。俺あの人に対して甘すぎなのかな。でも表情可愛かったし…、こういうとこか俺。やっぱ甘すぎかも。
まあいいや、さっさとシャワー浴びてジナニヒョンのとこ行こ。
服を脱いで風呂場のドアを開けると、独特の湿って暖かい空気が俺を出迎える。誰かが入った後って寒くなくていいな。
「…?」
使おうと思って手を伸ばしたシャンプー。その横には、半分くらいまで真っ赤な中身が入った透明な…、何の容器?
どこかで見たな。どこで見たんだっけ。そもそもこれなんだっけ。
手に取って眺めて思い出す。
これ、ジナニヒョンのカラーシャンプーか。
色持ちをよくするために使うとかなんとか言ってた気がする。俺もこういうの使った方が良いのかな。
それにしてもすげえ色だ。
何の気なしに中身を手に出してみる。ほんの少量、たぶん普通のシャンプー半プッシュ分とかそれくらい。それだけの量でもシャンプーの甘い匂いが鼻をくすぐる。
泡立ててみても色は赤いままで、そりゃ髪も色落ちしねえわ、と納得した。染まるわけだよ。めっちゃ色濃いもん。俺がこれ使っちゃったら色入るかな?入るよな。それは駄目だな。今髪青くしてるし。流そう。
…ちゃんと洗ったけど心なしか爪が赤く染まってる。気がする。気のせいかも。
あと、と手を鼻の近くに持っていく。
シャンプーの甘ったるい匂いが消えない。
「さっむ…」
脱衣所から部屋までの廊下はとにかく寒い。冷えた床が足に痛く、自然と早足になる。
すん、と指の匂いを嗅ぐ。あのあと普通にシャワーを済ませても匂いが残ってるような、残ってないような。なんとなく落ち着かない。
「ただいまー」
部屋に入ってため息をひとつ。
「髪乾かせっつったじゃん…」
そこには、ベッドに座り、壁にもたれて寝息を立てるジナニヒョンの姿があったからだ。
起こそうと思った。ジナニヒョンの前に歩み寄って、軽く揺するか何かして。
でも、近くで顔を見ると、起こすのがもったいなく感じてきた。
可愛かったんだ。俺より三つも年上のくせにあどけなくて、なのに微妙な色気が漏れる寝顔が。
ちょっと短い睫毛と小さい鼻、うっすら開いた桜色の唇、ハート形のほくろ、白くて柔らかそうな肌。水分を含んでよくわからないことになってる前髪すらかわいい。
こんなかわいいジナニヒョンの顔を見られるのは俺だけで、その優越感とヒョンの圧倒的な可愛さににやけが止まらない。ジナニヒョン超かわいい。世界で一番かわいい。誰にも見せない、この顔は俺だけが知ってればそれでいい。
ジナニヒョンかわいいだろ?でもだめ。ジナニヒョンは俺の。誰にもあげない。俺誰に話してんの?
そんな世界一かわいいジナニヒョンだから、好きが溢れて俺がキスしちゃうのも当たり前のこと。
薄くて柔らかい唇、いつも綺麗な歌を紡ぐ唇、俺を狂わせるこの唇。
重ねるだけじゃ物足りなくなって、唇で唇を食んだのが悪かったのか、ジナニヒョンが目を開けてしまった。
「あ、ごめん。起こした」
「んんう…」
返事もそこそこに、今度はジナニヒョンの方から唇を塞いでくる。ついでに腕を俺の首に回して、唇の隙間から舌を入れて、部屋着に手を差し入れて煽るように俺の腰を…って、
「ちょちょちょ、待っ、ジナニヒョンストップ!」
「え?しないの?我慢できるの?」
「今日はしないから!ジナニヒョン半分寝てるし俺そんなに飢えてません!」
本当はちょっと期待してたけど!ジナニヒョン眠そうだし!お疲れモードのヒョンに無理させるほど俺は鬼でもダメ男でもない!…と思いたい。
「ふ〜ん、へ〜え」
「なんすか」
「ううん?ジュンフェ、明日はしようね」
「っ…ハイ」
あぶね、今グラっときたわ。だって笑って首かしげて言うんだもん。かわいすぎるだろ。でもここでやっぱしたいとか言ったら男が廃る、明日だ明日。明日の夜を楽しみにしてろクジュンフェ。最高にかわいいジナニヒョンがお前を待ってる。
「そういえばこれ忘れてましたよ」
ずっと手に持っていたカラーシャンプーを渡すと、ヒョンは一瞬目を見開いてからにっこり笑った。
「ん、あー!持ってきてくれたんだ、ありがとう」
俺この笑顔のために生きてる。
「いえいえ。ほらヒョン頭乾かして、俺言ったでしょ」
コンセントを挿してドライヤーを差し出す。けれどヒョンは受け取らずに「えーめんどくさい」とか言って、それから俺を見上げる。なんすかその顔。なんすかその上目遣い。
「ジュンフェやってよ」
「ン"ッ…」
変な声出た。変な声出た!かわいすぎて!
「しょうがないなジナニヒョンは…」
「やったあ」
もう、この人、本当になんなの?弟に甘えるなんてかわいいなーって次元じゃないんだけど?あなたは俺をどうしたいの?さっきから全力で抱き締めそうになってるのを耐え続けてるんだけど?
俺はベッドに、ジナニヒョンは俺の足の間の床に座り、ドライヤーの温風を当てていく。うつらうつらしてるけど乾かしてる間は起きててくださいね。
「…あ」
ジナニヒョンの髪からする甘い匂い、これカラーシャンプーの匂いか。なんか嗅いだことあると思ったんだよ。
もう乾いたかな、ってところで冷風を当てて終了。ジナニヒョン起きてます?
「んん〜、ありがとうジュンフェ…ふぁあ」
「ジナニヒョン起きてたの」
「いや半分ぐらい寝てた」
だよね。
あーもうほらほら目ぇ擦んな。痒いのは分かるけどダメだよヒョン。
「ほらもう寝よ。ジナニヒョン電気消してこっちきて」
布団を剥いでベッドに転がりながらベッドサイドの灯りを点ける。電気全消ししちゃったらジナニヒョンがこっち見えないからな。
少ししたらジナニヒョンがベッドに乗ってくる。二人で「そうじゃないよ」とか「こうしよ、ほら」とか言いながら身体の位置を調節して(これが結構難しい)、ちょうどいいところで剥がしてた布団を掛ける。
「くじゅんふぇー」
「なに」
「呼んだだけ」
「子供みてえ」
思わず小さく吹き出す。今夜のジナニヒョンは本当に子供みたいだ。甘えん坊で可愛くて、酒でも飲んだのかな?酔ってる?
「ジュンフェの前だけだよ、知ってるでしょ?」
「うん♡」
ハートマークつけちった。まあいいか今日くらい。だってジナニヒョンが俺の独占欲を満たす言葉を、めちゃくちゃ嬉しい言葉を言ってくれるから。ヒョン、そりゃときめきますって。
腕の中にいるヒョンの赤い頭に顔を埋めてそっと息を吸う。鼻腔をくすぐるのはあの甘い匂い。
「ジナニヒョンいい匂い…」
「うわ、なんだ、やめろぉ」
「かわいすぎかよ」
逃げられないようにぎゅっと抱きしめる。ぎゅ、ぎゅっ。
こんなに小さくて細くてもやっぱり男の体で、ごつごつしてたり筋肉に当たったりして、未だになんだか不思議だ。こんなにかわいい男がいるか?って感じ。いるけど。俺の腕の中に。
「じゅんふぇ」
「うん?」
「おやすみ」
機嫌良さそうに微笑んでそう告げるジナニヒョンに胸がギュッとする。キュン、じゃなくてギュッ。ちなみに最上級は胸が爆発だ。
この人のこのかわいさが俺を魅了してやまない。ほんと、いつもいつもヒョンのことばっかり考えてる。
ジナニヒョンの甘い匂いのする赤い髪にやわらかく唇を落とし、俺もこう囁いた。
「おやすみ」
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