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onychophagia


「ドンヒョギ?眠たい?」
「うんん…」
すごく眠たそうだ。こっくりこっくり船漕いでるし。小さい子みたい、かわいいなぁ。ドンヒョギを横目にオムライスを一口食べる。二人で食べていた一つのオムライスは、もうあと少ししか残っていない。あとは俺が食べればいいか。
「寝てもいいよ。膝貸してあげる、ほら」
肩を抱いて引き倒す。素直に腿に側頭部を預けたドンヒョギは、すぐに寝息を立て始めた。指でサラサラの髪を梳く。ああ、やっぱりかわいい。
顔を上げてもう一口。と、その時、大きな目でじっとこっちを見るチャヌに気が付いた。
「チャヌヤ?オムライス食べたいの?」
「いりません」
じっと俺の目を見て首を横に振るチャヌ。じゃあなんだろう。新しいイタズラかな?
オムライスを30回以上咀嚼して(これ最近の俺の食事ルール)吞み下す。それと同時にチャヌが口を開いた。
「ユニョンヒョン、ドンヒョギと帰ってきてから嬉しそう」
「ばれた?実はさ、ドンヒョギもう爪噛むのやめるって約束してくれたんだよ!」
「あー、そうなんですか」
俺はこんなに嬉しいのに、チャヌヤは興味がないのか席を立ってしまう。部屋戻っちゃうの?話聞かずに?お兄さん寂しい。
「僕はてっきり、ドンヒョギが失恋したのが嬉しいのかと思ってました」
バタン。
チャヌが閉めたリビングのドアが嫌に大きな音を立てる。
ドンヒョギが失恋したのが嬉しい、だって?
「あの子は何言ってるんだろうねぇ、ドンヒョギ」
ヒョンはよくわからないよ、とドンヒョギの頭を撫でる。
失恋も何もない。ドンヒョギの恋は、始まった時にはもう終わっていたのだから。
それでもなかなか恋心が死のうとしないからこんなに待つことになったんだ。この日を何年待ったと思ってる?チャヌヤ、お前がここへ来るずっと前から、俺はこの日を待ってたんだ。嬉しいのなんて当たり前だろ?
ずーっと知ってた。ドンヒョギがジウォナのこと好きなのも、それで苦しんでるのも、ジウォナのこと考える時に爪を噛むのも。ジュネにそれを教えたのは俺だ。といっても、さりげなく、匂わせるくらいだけど。あいつは仲間想いな男だから行動を起こしてくれるって信じてたよ。やっぱり動いてくれたね。
ドンヒョギが爪を噛むのを俺が嫌がった理由もそれだ。ドンヒョギが爪を噛むたびにイライラした。宿舎、楽屋、移動車の中でもガリガリガリガリ。うんざりだ。四六時中他の男、しかも一人の男のことばかり考えやがって。何度爪を剥がしてやろうかと思ったかわからない。
だから最近は嬉しかったんだ。ドンヒョギが爪を噛まなくなったから。それに俺知ってるんだよね、爪を見て俺を見てふふって笑うのをちょこちょこやってたこと。それ、俺のこと考えてたんでしょ?爪塗ったの俺だもんね。
そういえばあの赤いマニキュア、ファンから貰ったって言ったけどあれは嘘だ。その場で考えてでっち上げた。本当は俺が買った。いつかドンヒョギに塗ってやりたいと思って。まさかジウォナとハンビナ以外の全員に見られるとは思ってなかったからかなり焦ったな。チャヌヤあたりにはばれてたかも。
それにしても今日は良い日だ。最高の日だ。
傷付いたドンヒョギの側にいたのは俺、何も聞かずに優しくしてやったのも俺、今こうして甘やかしているのも俺。
ねえドンヒョギ、本当は起きてるんでしょ?
演技が下手だね。震えてるのがバレてるよ。
顔を近づけてにこっと笑う。
お前ができないなら俺がしてあげる。
俺はこの日を待ち焦がれていた。ずっと、ずっと。
お前の、ジウォナへの恋心を殺す日を。
俺は暴れ回る『それ』の首に手をかける。
「ドンヒョギ、おまえはいつ俺のものになるの?」
そして、優しく絞め上げた。
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