二次創作女夢主

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  • 女審神者

    20181121(水)20:07
    しゃん、しゃん。
    鈴の音が聞こえる。我らが主が我らの元へ向かう音。
    広間に並ぶ我らは皆、脇へと控えて居る。
    その面持ちは一様に硬い。
    しゃん、しゃん。……しゃん。
    鈴の音が止まった。主が広間の前へと来たのだろう。
    脇に控えた前田と平野が何を言うでもなく静かに障子を開け、頭を下げた。
    主はその凛とした顔で前を見据え、奥へ奥へと歩いて行く。俺達は何も言わずに頭を下げた。
    まるで江戸の時代にあった大奥のようだな、と俺は思う。
    神である我らに平伏をさせる彼女は、本当に人間なのかとすら思う時もある。
    けれども平伏せざるを得ない。
    主には、そうさせる力があるのだから。
    鈴の音が鼓膜に響く。其れは俺達に対しての隷属の証なのだと笑った彼女の、何と恐ろしいことか。
    我らを、俺を隷属させて置いて尚、自身が隷属の身なのだと。俺達を神と称えながらも、その圧倒的な霊力で俺達を屈服させるくせに。
    それこそまさに、神から与えられたような力で。
    どの神に与えられたか知らないが、俺はそれが羨ましい。恨めしい。
    この手で彼女を染めてしまえぬ付喪神の俺が、恨めしい。

    「三日月宗近」

    「なんだ、主」

    「聞いていなかったのか」

    「あい、すまん」

    「構わん。この次の進軍ではあるが三日月に部隊長を任せたいと思う。少々危険ではあるが、受けてくれるか」

    「はっはっは。それは俺に死地に赴けと言っているのか?」

    「聞きようによっては、そうも取れるな。けれど私はお前たちの誰一人折れることを許した覚えはない」

    「それは、光栄の極み。謹んで受け入れよう」

    主はひとつ頷いて、それから部隊編成を行っていく。
    折れることは許さない、か。
    笑い出したくなってしまう言葉だな。そうは思いながらも嬉しいと思ってしまうのも、また事実。
    俺はこの主に囚われている。
    俺だけでなく、きっとこの本丸のすべての刀剣男士が。
    まるで女王蜂に蜜を捧げるように。
    我らに隷属した気になっている主に我らは屈服するのだ。
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  • 鶴さに

    20181121(水)20:06
    綺麗な蜂蜜色と目が合ったが即座に逸らした。
    絶賛恋仲である鶴丸と喧嘩中の身だからだ。
    かなりの大喧嘩をした覚えはある。
    けれど内容は既に朧気で。
    些細な事が始まりだったのだろう。
    そろそろ仲直りしないと。
    そんな事を思っていた時だった。

    鶴丸が重傷になって帰ってきたのは。

    「大将。そろそろ寝ないと体に障るぞ」

    「うん、寝るよ」

    「そう言って三日もロクに寝てないだろう」

    薬研が心配したような顔をするけれども、私は頑として鶴丸の居室から離れることな無かった。

    「鶴丸……」

    さらりと髪を撫でる。
    手入れをしたからいつもと変わらない見た目。
    目を覚まさない、それ以外は。

    「おい、きみ。こんな所で寝ていたら風邪を引くぞ」

    心地の好い声に揺り動かされ目を開く。
    目を覚ましたらしい鶴丸の姿がそこに在った。

    「鶴丸!」

    「な、なんだなんだ!俺達は喧嘩中の身じゃなかったのか?」

    「そんな事些細なことだよ!」

    「些細な事か!?」

    叫んだ鶴丸のその姿が嬉しくて涙が零れた。

    「ところで俺達は何で喧嘩したんだったか」

    「……忘れちゃったよ、そんなの」

    「きみはもう少し素直になれば良い」

    「え」

    「そんな始まりだった気がする」

    「そんなくだらないこと?」

    「くだらないか?」

    「くだらないよ」

    鶴丸が居なくなるよりずっと。
    そう言えば鶴丸はニヤリと笑って肩を抱いてきた。

    「きみが素直で俺は嬉しいぞ!」

    「私はあんな心臓に悪い出来事嫌だよ」

    「ああ、俺も嫌だ」

    きみに会えない五日間は損した気分だ。
    真面目な顔でそんなことを言うから私は可笑しくて笑ってしまった。
    こんな幸せが続けば良いのにと願いながら、私達は手を繋いで庭を歩く。
    ずっとこうして歩いていこう。
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    刀剣乱舞

  • くりさに

    20181121(水)20:06
    「好きだ」

    端的に告げられた言葉。

    「君の言い分は伝わっている。ただ、私も君も酔っていたんだ」

    恋人ごっこと言う名の関係に。

    「忘れてくれ、大倶利伽羅」

    私は笑みを浮かべた後に審神者に与えられた部屋の前に佇む彼から目を背けた。
    彼の本気の気持ちから逃げているのだと知りながら。
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    刀剣乱舞

  • へしさに

    20181012(金)20:20
    初めて命令を下した貴女のその言葉を、俺は拒絶した。
    怖かったのだと気付いた時にはもう遅く。
    貴女はこの本丸から去っていた。
    人間の男と祝言を上げたのだ。
    それで良いと俺は思った筈なのに、これが正解なのだと思った筈なのに。
    心の底から祝えなかったのは、きっと、貴女がくださった心がそうさせたのだろう。

    「私を連れ去って」

    長谷部。と、そう俺の名を呼んだ貴女の泣きそうな顔を、今でも俺は忘れられないでいる。
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    刀剣乱舞

  • 鶴さに

    20181012(金)20:19
    「きみの事なんて嫌いだ」

    そう言いながらも気が付いたら傍に控えている鶴丸に溜息を吐きながら顔を向けた。

    「うわっ。真顔怖っ」

    「それが開口一番に言う言葉かい」

    だからきみは嫌いなんだ。

    「そんなに嫌いなら他の本丸に行く?」

    試しに発した言葉。
    気が付いたら押し倒されていた。

    「きみはそんなに簡単に俺を他にやると言うのか。そんなに俺が嫌いなのか」

    真顔の鶴丸の金色の瞳が私を真っ直ぐに見つめる。

    「嫌いなのは鶴丸の方じゃ……」

    発した言葉に鶴丸はじろりと私を見ながら言った。

    「きみなぁ……。嫌いなら構う訳がないだろう」

    その言葉と共に唇に暖かい感触が触れた。
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    刀剣乱舞

  • 鶴さに

    20180819(日)23:45
    「しゃんとした背中だとか、凛とした横顔だとか、折れてしまいそうな程に細くしなやかな腕だとか、そういったきみを形成す全てが愛おしいと言ったら、きみはなんて返すんだ?」

    「…鶴丸国永」

    「酔った勢いでしか口説けぬ男には絆されんよ、と私なら返すな」

    「はは、主は手厳しい」
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    刀剣乱舞

  • 月桂樹の花は枯れた

    20180716(月)02:29
    私は空を仰ぎ見る。
    藍に塗れた空は時折、瞬くような光を発するのみで月はない。
    私はくすりと微笑んだ。

    「来ると思っていたわよ」

    「……どうして逃げなかった」

    「逃げる?何からかしら?」

    とぼけるようにそう言えばギュッと唇を噛み締める男。
    私の恋人……だった男。バーボン。
    本名は知らない。知らないことにした。

    「何も、道はないのか……!」

    「ないわよ。何処にも」

    ねぇ、バーボン。
    あなたがなって頂戴な。
    私の死刑執行人に。

    「ノックであるあなたが私を殺すか、私があなたを殺すか。さて、どちらが早いかしらね?」

    にっこりと微笑めば、無情なくらい優しい彼は戸惑ったような顔をして。
    けれどもその手に持った拳銃は離さない。
    私に殺されることを危惧しているのかしらね?
    こんなところで殺されるわけにはいかないと。

    あなたが組織にとって邪魔な存在だと、ノックだと知っていたら。
    私はあなたを好きにならなかったのかしら?

    答えは簡単。

    「早く決めなさい、バーボン」

    私はあなたになら殺されても良い。
    でもね?とほくそ笑む。
    私はとても優しくて、とても非道だから。

    「……っ待て!」

    微笑みを浮かべながら、私はそっと自分のこめかみに銃口を。
    止めようと近づいてくるバーボンに、たった一言だけ囁いた。



    「愛していたわ」



    返事は要らない。
    死出の旅路に、そんなもの要らないでしょう?
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    コ/ナ/ン

  • 月桂樹の花を摘んで

    20180712(木)04:00
    「はは……嘘でしょ?」

    私は今しがた見たデータの内容を理解することが出来ないでいた。
    私は所謂マッドサイエンティストと呼ばれる部類の人間だろうか?
    学会で異端視され、表の世界に居づらくなった私は流れ流れて気が付いたらこの組織で研究者をしていた。

    それはどうでも良い。
    心底、今はどうでも良いことだわ。

    「彼が……警察?」

    にわかには信じ難いことだった。
    何せ私はずっと、恋人だと思っていた男に裏切られていたと言うことだから。
    彼は私から組織の情報を奪っていたと言うことだから。
    居場所のなかった、この私から。

    「……どうしてよ」

    ギュッと唇を噛み締める。
    この情報はたまたま私が暇潰しにハッキングして掴んだ情報だ。
    誰にも知られてはいない。
    居ない、けれども。

    「バーボンは、敵……」

    それは揺るがないただひとつの真実だった。
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    コ/ナ/ン

  • 鶴さに

    20180712(木)03:46
    「きみを四六時中見つめていたい」

    「何それ怖っ!」

    「きみ。一世一代の告白を怖いとはなんだ」

    鶴丸は私のおでこをピンと弾きながらむくれたような顔をする。

    「いやいや、四六時中見つめていたいは怖いって」

    「俺は本気だぞ」

    なぁ、本気だったんだ。
    そんな声が聞こえてきたような気がした。
    けれど酷く眠くて、私は答えることが出来なくて。
    瞼を伏せたまま、私はただ、鶴丸の嘆くような、責めるような言葉を聞く。

    「墓まで共にしたいと懇願したのは、きみが初めてだったんだ」

    ぽたりと落ちた雨は、いつかやんでくれるだろうか。
    いつか誰かが止めてくれるだろうか。
    そんなことを思いながら、私は深い深い眠りについた。
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    刀剣乱舞