二次創作女夢主

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  • 其れを与える権利【鬼丸←モブ女】

    20240419(金)18:59
    それが愛でなくても良かった。
    あなたから離れることなど到底出来ないのだから。
    この感情がなんでも、名前の付かない代物でも良かったのに。

    「どうして……」

    目の前で血溜まりを作るその神はいつもの顔で言った。

    「俺が、そうしたいと思ったからだ」

    此処に、従ったまでだ。
    そう言いながら心臓の辺りに拳を宛がうその神の美しさたるや。
    誰がこの神に『其れ』を与えたのだろう。
    その者が心底羨ましい。妬ましい。
    いっそ鬼女にでもなれたのならば、あなたはわたしを見てくださったのだろうか?

    (ああ、恨めしい。羨ましい。その位置が、心底)

    審神者になれなかったわたしでは、この方の心に留まるころとすらできないというのに。
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    刀剣乱舞

  • 望まぬ明日/アサ晶

    20230225(土)23:57
     いつかあなたを乗せて飛んだ空であなたは言った。

    「私がいつか居なくなっても、アーサーはどうか笑っていてくださいね」

     それは甘やかな毒のような呪いだと思ったけれど、きっと彼女の望みではないのだろうとも思ったけれども、私はその言葉に頷いた。

    「賢者様が望むのなら、私はいつでも笑顔を絶やしません」

     賢者様は少し困った顔をされていたけれども、まだ幼い私に出来る精一杯の抵抗であった。今思えばかなり幼稚な抵抗であったが。
     私は、あなたが居なくなる未来だなんて要らないのに。
     あなたが居てくれる未来だけを望むのに。
     この世界は無情にも其れを好む。
     あなたと共にずっと在れたなら、私はどれほど幸せなのだろう。
     そう夢想して、思考して、けれどもこの世界は無情にも私から賢者様を奪う。
     まるで初めから存在しなかったと言わんばかりに賢者様は居なくなった。
    【大いなる厄災】を退けたのは、それが私たちの使命だからだ。
     だけどこんなにも悲しいことが起きるなら、いっそこの世界など——
     そこまで考えて、自分が中央の国の王子であることを思い出す。
     思い出さなければ幸せだったのかも知れないなと、笑った。
     あなたが笑って欲しいと願ったから、笑ったのに。
     どうしてこの両の目からは涙が溢れて留まらないのだろう?
     

     遠い春を待っている。
     あなたにただもう一度逢いたいと。
     私の望みは、あなたが居る明日だけだった。
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    まほやく

  • 『夢うつつ』アサ晶♀

    20230120(金)19:52
    守りたいものはありますか?
    それはどれほど大事なものですか?
    国も民も身分もすべて捨ててしまった時。
    あなたは傍に居てくれるでしょうか?
    私はそれが怖いのです。
    あなたが離れていくのが、怖いのです。


    風が揺れる音がする。ふんわりと何かが身体にかけられた気配がした。
    まるで幼い時にオズ様にして頂いたような感覚を覚えて、一瞬オズ様かとも思った。
    けれどもそこに在る気配が、ほのかに香る甘い匂いが、オズ様ではなく別の人物であることを物語っていて。
    その人物には覚えがあった。ゆるりと瞼を開けようともがけば、くすくすと小さく笑う声が聞こえてくる。

    「まだ眠っていても大丈夫ですよ?」

    柔らかな、まるで母親が子供にかけるような優しい声。私の好きな声。
    ふんわりとした手つきで頭を撫でられた。

    「アーサーは頑張り屋さんですね」

    その言葉に、何故だか涙が出そうになった。今すぐにでも彼女を抱き締めてしまいたくなった。
    けれどもう少し、もう少しだけ。この時間を堪能したくて寝たフリをしてみた。
    なんだか子供のようなことだとは思ったが、仕方がない。
    彼女の、賢者様の手のひらがあたたかいのがいけないのだ。
    なんて、勝手に彼女のせいにして。


    国も、民も、身分もすべて無くしても。
    あなたは私の傍に居てくれますか?
    きっと私に足りないのは、その言葉を発する勇気なのだろう。
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    まほやく

  • 鶴さに

    20220126(水)14:49
    ねぇ、私たぶんあんまりアンタのこと理解できなかったと思うんだけど、それでもよ?
    それでも……もし、そんなアンタが私の事を少しでも好いてくれていたのなら。

    「アンタのことだけを想って死ねるよ」

    鶴丸、私ね、アンタのこと好きだったの、本当よ?
    目の前に迫り来る時間遡行軍を見つめながら、まあ、死ぬ気はないけどね?と薄く笑った。
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    刀剣乱舞

  • アサ晶♀

    20210617(木)10:53
    私にとって最大の不幸は、あなたと出逢ってしまったことだろう。
    国も、立場も、すべてを放り出すことすら叶わない私の前に現れたまるで光のような存在。
    けれども同時に思うのだ。

    「あなたに出逢えて良かった」

    これは戯れ。おままごとのような感情なのかも知れない。国を背負う私が持ってはいけなかったモノのなのかも知れない。
    だからこっそりとあなたに願う。約束の出来ない私は、願うことしか出来ないけれど。
    あなたの笑顔がどうか曇りませんように。
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    まほやく

  • 伝えられぬ想いなど/ヒス←晶♀

    20210613(日)16:53
    きっとこの『恋』は生まれてはいけなかった想い。

    「賢者様?どうされましたか?」

    「……っ、ヒースクリフ。なんでもないですよ」

    にへら、と笑って見せても彼は納得した顔をしない。
    ああ、早く。仮面が解ける前に。早く。どこかに行って欲しい。
    願いは通じず、ヒースクリフは私の手を取った。

    「つらそうな顔をしています」

    「……つらくなんて、」

    「なら、何故そのようなお顔を?」

    自分が今どんな顔をしているかは分からないけれども、たぶんすごく酷い顔をしているのだけは確かだ。

    「……ヒースクリフ。私は、」

    そこまで言って、やめた。この想いは沈めようと決めたのだ。いつでも取り出せる宝箱の中ではなく、暗い海の底へ。

    「なんでもないです」

    「……賢者様!」

    怒ったような顔。心配してくれる顔。それらが嬉しいのに、どうしたって心の底から喜べないのだ。
    こんな想い、早く朽ちて無くなってしまえと、呪いの言葉を心の奥底で吐いた。
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    まほやく

  • mhyk アサ晶♀【月はいつでもあなたの傍に】

    20210605(土)14:06
     はじめて逢ったその時、王子様みたいだと思った。

    「月が綺麗ですね」
     
     元居た世界での常套句を言えば、「それは愛の告白というやつですか?」と返された。

    「驚いた。知っているんですか?」

    「……はい。前の賢者様に教えて頂きましたから」

    「そう、ですか……」

     知らないと思っていたから口から滑り出た言葉だったというのに。
     恥ずかしさで顏あ赤くなっていくのを如実に感じる。
     今すぐにでも逃げ出したいのに、彼はそれを許してはくれなっかった。

    「賢者様。私のことを想ってくださって、凄く嬉しいです。本当に……心の底から」

     頬を染め、私の手を取りそこに口付けるアーサーはあの日見た時と同じ、やっぱり王子様みたいだ。いやまあ、王子様なんだけれども。

    「もっと言葉で伝えてください。私も何度でも、何度でも、返しますから」

     笑ってそう言うアーサーは王子様というにはあまりにも、ひとりの男の目をして私を見据える。
     その眼光の中に秘められた想いに気付けぬほど、残念ながら鈍くはなかった。

    「お手柔らかに……」

     そう、小さく彼の鳴くような声で伝えることしか出来なかった。
     アーサーは笑って私を見つめる。その瞳の中には優しさと、意地悪さと、そうしてどうしようもなく私を好んでくれている色を感じるのに。
     ――その瞳に奥底に在る、憂いのような感情は、何?


     ◇◆◇

     きっと、この感情は出逢った時から。
     ずっと好ましく想っていたんです。
     けれども、想いが通じ合ったあと賢者様は私のことを忘れてしまうようになった。
     なった、と過去形を使ったことには意味がもちろんある。
     私と賢者様の心はもう何度も、何度も、周りが辟易するくらい、繋がっているのだから。
     初めて想いが通じた時、嬉しくて泣いてしまったのを覚えている。
     初めて賢者様の中から『恋仲であったアーサー』という存在が消えた時も、少しだけ泣いたことを覚えている。
     一度だけ賢者様を責め立てたこともあった。
     カインに止められなければ、賢者様は二度と私のことを愛してはくれなかっただろう。
     もう何度目か。恋仲になっては忘れられるのは。賢者様がこの関係性を忘れる周期は少しずつ、しかし着実に短くなっている。まるで大いなる厄災が近付いているのに合わせるように。

    「アーサー。もう賢者様のことは諦めた方がいいんじゃ……」

    「大丈夫だ。カイン。私は大丈夫だよ」

     今度こそきっと大丈夫。そう信じて思っても、賢者様の中から何度も消え行く『私と過ごした』記憶。
     それでも、忘れられなくて。忘れて欲しくなくて。
     何度でも、何度だって、同じことを繰り返す。

    「月が綺麗ですね」

     ああ、この言葉を聞くのはいつだって胸が苦しくなる。
     この言葉を発したということは、賢者様の中から『恋仲であった私』が消えている証なのだから。

    「アーサー? どうかしましたか?」

     同じ言葉、同じ答え。何かが変わるかも知れないと思っても、結局。
     何度でも、何度でも、繰り返そう。
     賢者様の中に留まれるその日まで。

    「それは、愛の告白というやつですか?」
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    まほやく

  • 鶴さに

    20190107(月)00:05
    鶴丸国永という刀は不思議な刀だ。刀なのに人間味があるというか。
    それでも彼の刀は刀なのだ。
    無残にも切り捨てられた死骸の山に、私はカタカタと身を震わせる。

    「きみ、もう大丈夫だ」

    優しい声なのに、その月光を背負ったからか普段より際立つ絹糸のような白い髪に蜂蜜のような金の瞳が私を逃がさないとばかりに捕らえて、離さなくて。
    別段彼は私に危害を加えるだなんてしないだろうに。なのに、どうして私の体は震えるのか。

    「……俺が怖いかい?」

    「……いいえ」

    そこでようやく声を発せた。
    彼が怖い?違う。私は彼を見て、血に染まり、生き生きと命を狩る私の刀を見て、ただ純粋に思ったのだ。

    「貴方が恐ろしいわ」

    私の心を魅了して、掴んで、離れなくさせた。
    そんな貴方が、私にはとても恐ろしい存在に見えた。
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    刀剣乱舞

  • 鶴さに

    20190106(日)23:45
    元は白かった衣を赤く染めあげた頃には、残敵は気配で感じられる範囲では一人も居なかった。
    一息ついて、地面にへたり込む。
    随分と長いこと本体たる刀を握り締めていたらしい。指が固まってしまったようだ。剥がすこともせず、その場で大の字になった。
    ピキリ、と視界が歪んだのが分かる。
    嗚呼、もうすぐだ。もうすぐ俺という刀は終わる。

    「俺はきみに驚きをもたらせたかい」

    問うて、帰ってくる返事もないと分かっていても。それでも問うたのは、これが最期だと分かっていたからか。

    「なぁ、俺はきみを……」

    そこまで言いかけて、やめた。虚しくなるだけだ。
    きみは泣くことを知らないようなところがあるから少しばかり心配ではあるが、本丸の皆がきっときみを支えて、そうしている内に新しい分霊たる俺がやってくるのだろう。

    「……他の俺、か」

    ひび割れた視界が世界を埋め尽くす。
    微かに見える青空に腕を伸ばして、俺は笑った。

    「きみが命尽きるまで、」

    ――俺はきみの傍に、居たかった。
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    刀剣乱舞

  • へしさに

    20181128(水)16:51
    主が悪いんですよ。
    そんなことを言いながら膨れ面をする長谷部に私は肩を竦めた。

    「そんな可愛い顔されてもねぇ?」

    明日は現世での仕事で、護衛を長谷部にしなかったことに大層この刀はヤキモチを妬いているのだ。
    可愛いものねぇ、と顔を緩ませていれば「あるじ…」と突然耳の傍で声が聞こえた。

    「はせ…っ」

    「俺がどれだけ主をお想いか、まだ分かってらっしゃらないようですね」

    その顔は先程の可愛い膨れ面ではなく、男の顔。
    翌朝、にこやかな顔で私を抱き締める男は、ただ一言。

    「分かられましたか?」

    とだけ言った。
    もうヤキモチを妬かせたくて意地悪をするのはやめにしようと心に誓った朝だった。
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    刀剣乱舞