小ネタ

SSよりも小さなお話を置く場所。

記事一覧

  • 天魔界事変

    20180820(月)01:28
    あなたは何れ居なくなるのでしょう?そんな噂を聞きました。
    何処でそんなことを?と言った顔ですね。
    私には有能な側近が居ますので。
    ああ、その言葉で分かりましたか。いい気味ですね。あなたが居なくなるというのは。
    本当に、いい気味です。
    明日からの世界はきっと輝いて見えることでしょう。
    ……ねぇ、蛆虫。
    あなた、どうしてこんなにも貶されているのに笑っているのですか。どうして、あなたは、笑っていられるのですか。

    「きみが好きだからだよ」

    「意味がわかりません」

    「分からなくても良い。でも、本当に好きだから。だから、そんな可愛くないことを言ってるのに僕の最期の時を見送りに来てくれた可愛い僕の魔王を僕はきっと、愛し続けるよ」

    「……意味がわかりません」

    私を好きだと、愛していると言うのであれば。

    「何故、消えてしまうのですか……」

    残ったものは何も無い。丸ごと消えてしまったあなたに、私は涙すら出なくて。
    こんなにも非情だったのかと、笑いたいのに、笑えなくて。
    どうしたら良いのかすら分からなかった。
    あなたが教えてくれたから、私は感情を得たと言うのに。
    厄介なものを私に植え付けていったものですね、あなたは。

    連作幕の外

  • 魔導書館は変人だらけ

    20180820(月)01:27
    「あなたは今、どんな気持ちですか」

    くっきー、と胸にある宝石に問い掛けた。
    わたくしの命を繋ぐ石。紅い血を連想させるような宝石は胸に飾られ、揺れる。
    何事かを問い掛けたいのか、ただ揺れただけなのか。
    宝石になってしまったあなたの考えは全くもって分かりは致しませんが。

    「もし、くっきーがまた姿を現す時があれば、わたくし一発あなたを殴りたいのですよねぇ」

    まあ、もっとも。その時が来るということは、わたくしの命が尽きる時なのでしょうけれども。

    「壱乃さぁん!また天蔵さんが本を売り飛ばしに行こうとしてますよー」

    「あ!咲良ちゃんのおばかちん!壱乃に言ったらまァた椅子にされるでしょー!」

    騒がしい館内にわたくしはふふ、と微笑む。
    この『魔導書館』の館長を務めるのがわたくしの大事なお役目、としか思ってはいませんでしたが。
    騒々しい『友人』と『助手』のお陰でわたくしも生きたいと願うようになりましたよ。

    「それもくっきー。あなたの狙いですかね」

    連作幕の外

  • 春告げ鳥が哭いた日

    20180819(日)23:47
    愛されたかった。
    そうだ、俺はただ愛されたかった。

    「ふーゆひーこくん!」

    にこやかに笑う女。太陽みたいだと思ったのはきっと出逢ってすぐのことだった。
    俺が困った時、悩んだ時、疲れた時、共に居てくれたのはこの女だった。

    「なあ、どこに居るんだ?」

    答えは帰ってこない。
    何故なら女は俺の目の前で銃弾に撃たれ、血溜まりを作り、そのまま消息を絶ったのだから。

    「……はるひ」

    春の陽と書いて、春陽。
    ただの一度もまともに呼べたことはないけれども。
    お前はその名前をあまり好いてはいなかったけれども。
    俺は好きだったよ。お前の名前も。お前を形成するすべてが。

    「なあ、どこに居るんだ?」

    その問い掛けに答えはないと知りながら。
    俺は何度だって、たぶん、死ぬまで問い掛ける。

    連作幕の外

  • 灰青の音色

    20180819(日)23:46
    彼に出逢って、絆されるように付き合うようになってから、私は確かに変わったのかも知れない。

    「とはいえ、私はあなたのことが好きなわけではないのだけれども」

    「それでもええよ、いつか好きになってくれたら、それでええねん」

    阿呆みたいに明るく笑う大河くんに、私はキュッと唇を噛み締める。
    あなたが私を甘やかすから、だから私はまだ何も言えないのだと、そうやって責任転嫁をしてしまう。

    「大河くん」

    「んー?」

    間延びした声。ゆるりと首をこちらに向けるその姿はあまりに無防備で。
    その顔に、その髪に、その唇に触れたいと、そんなことを考えるのに。
    まだ何も『答え』を出していない私にはその権利はない。

    「なんでもないわ」

    「えー!気になるんですけど!」

    「そのまま気になっていたら?」

    ずっと気になっていてくれたなら良いなと、騒いでいる彼に浅ましくも思ってしまう。

    連作幕の外

  • 私はそれでも笑うのです

    20180712(木)03:33
    私が例えばもっと我儘だったら。
    この世界は、いえ、貴方は幸せだった?


    「貴方に生きて欲しい。それが私の願いだわ」

    「君が居ない世界なんて間違っているっていうのに?君はそれでもそんな酷いことを言うの?」

    「ええ、私は酷い……酷い魔物だから」

    「……嘘つきだなぁ、君は」

    泣き出してしまいそうな顔を向けられて、私は少しだけ悲しくなった。
    少しだけよ。本当よ。

    「君が生きていない世界なんて、僕にとったら価値なんてまったくないのに」

    「それでも、生きて」

    私は精一杯の笑顔を向けて、彼に向かって腕を広げた。
    さあ。ここを刺せと言わんばかりに胸を張る。
    彼は持っていた剣を迷いなく構え、私の心臓に当てた。

    「君を心から愛してる」

    「奇遇ね。私も貴方を愛していたわ」

    そう言った瞬間。
    一瞬の迷いもなく突き立てられた剣は、私の心臓を難なく止めようと深く、深く、突き立てられた。
    きっと私が少しでも苦しまないようにしてくれたのでしょうね。
    それはとても。とても、嬉しいわ。

    『勇者』と『魔王』

    そんな関係でなければ、私は貴方を泣かせることは無かったのかしら。

    散文

  • 嘘つきが吐いた嘘

    20180621(木)19:23
    出来れば最期くらいはアナタの腕の中で死にたいものよねぇ。
    そうチェシャ猫のようだと称される笑みを浮かべながら言ったなら、彼は酷く険しい顔をした後にアタシの脳天にチョップをかました。
    地味に痛い。

    「俺で遊んでいるのか」

    「いいえ?事実を述べただけよ」

    「死ぬとか、なんだとか、そういったことを気軽に口にするのはやめろ」

    「そうねぇ、でも、それが事実なんだもの」

    アタシが死ぬとき、それはアナタの腕に抱かれた時が良いわ。
    アドルは険しい顔のまま、アタシを押し倒す。
    アタシはアドルの首に腕を回した。

    「嘘つきが」

    耳に吐息と共に吐かれた言葉にぞわりと背筋が震えたような、そんな感覚を得た。
    アタシは否定も肯定もしない。
    その代わりにキスをねだれば、可愛らしいとは程遠い荒々しい口付けが降ってきた。
    アタシはそれを甘受しながら「明日は晴れると良いわねぇ」なんて、キスの合間に呟いた。

    連作幕の外

  • 天魔界事変

    20180620(水)23:14
    「きっと僕は君に出逢う為に創られたんだね」

    「馬鹿ですか」

    そう告げた私の声は凛としていた……筈だ。

    「私に逢う為に創られたと言うのならどうして、」

    どうして貴方は――

    その先の言葉は続かなかった。
    骨と皮だけの彼が、その蜂蜜色の瞳が、強く輝いていたから。

    連作幕の外

  • 天魔界事変

    20180612(火)21:16
    「魔王さま!」

    「その声はアグリですね? 良く一人で遊びに来れましたね。父上殿の許可は得ているのですか」

    執務中、唐突に背後から何者かに抱き着かれて私は少しだけ前のめりになります。
    まあ、気配で誰かは解っていましたけれども。
    灰色の髪に紫の縦に割れた瞳孔を持つ幼い少年がそこに立っていました。
    凛と伸ばした背は、「魔王様をお守りする立派な悪魔へと育てます!」と宣言され、実行されている賜物か。
    この子が私の側近である女悪魔の胎に宿った時からこの子の道は決まっているようで、私には少しだけ心苦しくもありました。
    けれども、

    「魔王さま。お仕事が終わったらぼくと遊んでくださいませんか?」

    「両親のどちらにも許可を得ていないのですね。――仕方がありません、超特急で仕事を終わらせますから少しだけ待っていてくださいね」

    しかし私にとってアグリは大切な部下の子ながら弟のような存在だと勝手に認識しています。
    とにかく可愛くて仕方がない。
    この子の可愛いおねだりに応える為、今日も私は最近になって大人しくしているようで結局遊び惚けている蛆虫、ああ、間違えました。
    神の起こした魔界での不始末を一秒でも早く片付ける為に机に向かうのです。

    連作幕の外

  • 魔導書館は変人ばかり

    20180612(火)21:16
    自分の名前が咲良だからか?昔から花植物には変な親近感があった。
    風で折れたであろうその花の枝を諸事情あって今の住処であり就職先でもある場所に飾ろうと持ち帰ってみた。

    「壱乃さん。花瓶ってありましたっけ?」

    「まぁまぁ、咲良さんたら。……そんな可愛らしい方をかどわかしてどうなさられたのです? 天蔵さんでもあるまいし」

    「おぅおぅ壱乃ちゃぁん? おっちゃんがどうしたって?」

    「可愛らしい方?」

    天蔵さんを当然のように無視して、俺は首を傾げる。
    壱乃さんはいつものようにゆったりと微笑むと、その綺麗な白い指先を俺に向けた。

    「咲良さんの手に持たれている紫陽花の枝木で御座います」

    「これがどうかしたんすか?」

    「それに必死に憑いているのですよ。花の精霊が」

    しかも生まれたて。嗚呼、珍しいですね。

    感心したような言葉を吐く壱乃さんは「花瓶に飾るよりも元在った場所に返してあげてくださいな」と柔らかく微笑んだ。
    俺もその通りにした方が良い気がして、視えない精霊とやらを元居た場所に返しに行ってやろうと踵を返す。
    その前に、「ああ」と声を出した。

    「ラスクさんが今夜来るそうですよ」

    「まぁまぁ。一昨日もいらっしゃられましたが……異端審問官様はそんなに魔女の元に来るのがお好きなので御座いますかねぇ」

    「ただ単に壱乃さんに会いに来たいだけだと思いますがね」

    連作幕の外

  • 年末/灰青の音色

    20180423(月)20:15
    灰青の音色
    大河×瑠璃葉


    「年末やね!」

    「何を嬉々としているのかしら?」

    「いやぁ、瑠璃葉と出逢ってからほんまに幸せな1年やったなぁ!と」

    「……貴方は阿呆なのかしら?」

    「ええー。年末にまで阿呆呼ばわりなん?」

    「当然のことを言ったまでよ。貴方は阿呆なのだもの」

    「アホアホ言うなやぁ。しまいにゃへこむで?」

    「好きにすれば良いわ」

    まあ。でも。

    「私も貴方と過ごすのは嫌いじゃないわ」

    「……」

    「大河くん?」

    「……いつか、俺だけやなくてお前にも俺が好きやって言わせたるさかい覚悟しときや!」

    「それは有り得ないわね」

    「ふふん。そう言えるんも今のウチやで!」

    「期待しないで待っているわ」

    連作幕の外イベント事