小ネタ

SSよりも小さなお話を置く場所。

記事一覧

  • ご主人と吸血鬼のエイプリルフール

    20181009(火)19:16
    「ご主人~。今日は嘘をついても良い日なんですよ!」

    「何ワクワクした顔してんだお前は」

    「ふふふ。ご主人にどんな嘘をつきましょうかねー」

    「嘘って分かってたら意味ねぇだろ」

    「……ご主人」

    「なんだ?」

    「どうやら私……大切なご主人に嘘なんてとてもつけそうにないことが分かりました!」

    「……そぉか。そりゃ良かったな」

    「なんででちょっと嬉しそうなんです?」

    「なんでだろうなぁ?」
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    連作幕の外イベント事

  • 天魔界事変

    20180927(木)00:04
    きみが居たから僕は笑えた。
    きみが居たから僕は寂しくなかった。
    きみが居たから僕は優しさを知った。
    きみの存在で回っていた世界が、きみのお陰で広がった。
    ありがとう。愛しているよ。
    僕が好きになったただひとりの可愛い女の子。

    「好きだよー!魔王!」

    「蛆虫の戯言が聞こえました」

    「本音ですぅー!」
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    連作幕の外

  • 【烏】涼やかな冬

    20180926(水)23:59
    愛娘が軍に入る際に贈ったのは大事に仕舞っていた煙管。
    この世で一番愛しい妻が愛用していた煙管だ。
    それを渡したら驚いた顔をされた。
    けれども何も言わずに煙管を受け取る娘。

    数年後。たまたま見付けた紫煙をくゆらせる娘の姿が妻にそっくりで。
    当たり前かと小さく笑った。
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    連作幕の外

  • 天魔界事変/­葡萄­

    20180912(水)19:38
    「この!黒光りした美味しそうな粒!香りからもかなりの糖度と分かります!どうしたのですか?賄賂ですか、神」

    「賄賂じゃないよー。まあ、ある意味賄賂だけどー。丁度女の子に葡萄貰っちゃったけど僕が食べるより魔王が食べた方が葡萄も幸せかな?って思って」

    「……へぇ、女の子、ですか」

    「ん?なんか機嫌悪い?」

    「いえ。相変わらず屑ですね、蛆虫」

    「なんで!?僕、葡萄あげただけなのに!?」

    「それは置いておいて美味しいです」

    「色々言ったけど食べるんだ……」

    「食べますよ。食物を無駄にしてはいけません」

    「ふふ。魔王が食べてる姿、可愛い」

    「……ふんっ」

    「目潰し!あっぶな!僕じゃなかったら避けられなかったよ!?」

    「ッチ」

    「舌打ち良くない!」
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    連作幕の外

  • 冷たくなっていく躰に縋り付いて

    20180911(火)23:37
    ねぇ、神様。
    あなたがもしこの世界に居るのなら、どうして僕のこの手は愛おしい人の血で濡れているの?
    どうして彼女は紅い華を咲かせながら倒れているの?
    何故、どうして。
    そんな感情ばかりが頭を過ぎる。
    彼女が一体何をした?
    彼女はただ、世界の取り決めの通りに『魔王』という役柄を得ただけの、魔力が強いだけの、普通の女の子で。
    異端児されていた僕にも笑いかけてくれるような、優しい子で。
    なのにどうして。
    現実はこうも残酷なんだ。


    魔王城に響き渡るは、慟哭。
    君の居ない世界になんて興味がなかった。
    君だけが居れば幸せだった。
    けれど君を殺したのは――僕だった。


    愛していたのか。
    ただ、好んでいただけだったのか。
    今となっては分からないけれども。
    冷たくなっていく、温度のない躰に縋り付いて泣いても、君の優しい手は僕の頭を撫でてはくれなかった。
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    散文

  • きみの隣で死ぬために、生きてきた気がする

    20180823(木)16:40
    ぽたり、ぽたり、と紅い華が地面に落ちる。
    ああ、これまでか。なんて思いながら僕は目の前のきみを見る。
    きみは息も絶え絶えといった風で、当然か。
    僕がきみをこの手で国王から渡された剣で突き刺したんだから。

    「ねえ、生きてる?」

    「ええ、辛うじて……」

    「そっか。ごめんね。ちゃんと一撃で殺してあげられなくて」

    「……構いません。これも、国王……あの人の願いならば……私は喜んでこの命を天に返しましょう」

    「どうして、そこまで思えるのかな」

    自分の妻を殺せと命じた男のことを、どうして。

    「わたくしにも分かりません。ですが、これもまた運命なのでしょうね」

    ゆっくりと息を吐くきみは儚くて。疲れたように瞼を閉じるきみは切なくて。頬に陰った睫毛はあまりに美しくて。

    「僕が一緒に行ってあげようか」

    「え、」

    「僕は今まで生かされてきた意味が分からなかった。でも、今ようやく分かった気がする」

    きみの隣で死ぬために、生きてきた気がする。
    きょとんとした顔をするきみが何だか可笑しくて。
    いつもは澄ました顔をしているくせに。すべてを受け入れて、すべて諦めているくせに。
    その眦に溜まった雫が、きみの心を表している気がした。

    「そう言えば、言い忘れてた。僕ね、きみのこと」

    そこまで言って、きみの息がないことに気が付いた。
    僕は瞼を伏せて、そうして言った。

    「きみが大好きだよ」

    そうしてきみを貫いた剣で、僕は自分の命を絶った。
    これはきっと、何処にでもある恋のお話。


    title by:確かに恋だった
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    散文

  • 天魔界事変

    20180820(月)01:28
    あなたは何れ居なくなるのでしょう?そんな噂を聞きました。
    何処でそんなことを?と言った顔ですね。
    私には有能な側近が居ますので。
    ああ、その言葉で分かりましたか。いい気味ですね。あなたが居なくなるというのは。
    本当に、いい気味です。
    明日からの世界はきっと輝いて見えることでしょう。
    ……ねぇ、蛆虫。
    あなた、どうしてこんなにも貶されているのに笑っているのですか。どうして、あなたは、笑っていられるのですか。

    「きみが好きだからだよ」

    「意味がわかりません」

    「分からなくても良い。でも、本当に好きだから。だから、そんな可愛くないことを言ってるのに僕の最期の時を見送りに来てくれた可愛い僕の魔王を僕はきっと、愛し続けるよ」

    「……意味がわかりません」

    私を好きだと、愛していると言うのであれば。

    「何故、消えてしまうのですか……」

    残ったものは何も無い。丸ごと消えてしまったあなたに、私は涙すら出なくて。
    こんなにも非情だったのかと、笑いたいのに、笑えなくて。
    どうしたら良いのかすら分からなかった。
    あなたが教えてくれたから、私は感情を得たと言うのに。
    厄介なものを私に植え付けていったものですね、あなたは。
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    連作幕の外

  • 魔導書館は変人だらけ

    20180820(月)01:27
    「あなたは今、どんな気持ちですか」

    くっきー、と胸にある宝石に問い掛けた。
    わたくしの命を繋ぐ石。紅い血を連想させるような宝石は胸に飾られ、揺れる。
    何事かを問い掛けたいのか、ただ揺れただけなのか。
    宝石になってしまったあなたの考えは全くもって分かりは致しませんが。

    「もし、くっきーがまた姿を現す時があれば、わたくし一発あなたを殴りたいのですよねぇ」

    まあ、もっとも。その時が来るということは、わたくしの命が尽きる時なのでしょうけれども。

    「壱乃さぁん!また天蔵さんが本を売り飛ばしに行こうとしてますよー」

    「あ!咲良ちゃんのおばかちん!壱乃に言ったらまァた椅子にされるでしょー!」

    騒がしい館内にわたくしはふふ、と微笑む。
    この『魔導書館』の館長を務めるのがわたくしの大事なお役目、としか思ってはいませんでしたが。
    騒々しい『友人』と『助手』のお陰でわたくしも生きたいと願うようになりましたよ。

    「それもくっきー。あなたの狙いですかね」
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    連作幕の外

  • 春告げ鳥が哭いた日

    20180819(日)23:47
    愛されたかった。
    そうだ、俺はただ愛されたかった。

    「ふーゆひーこくん!」

    にこやかに笑う女。太陽みたいだと思ったのはきっと出逢ってすぐのことだった。
    俺が困った時、悩んだ時、疲れた時、共に居てくれたのはこの女だった。

    「なあ、どこに居るんだ?」

    答えは帰ってこない。
    何故なら女は俺の目の前で銃弾に撃たれ、血溜まりを作り、そのまま消息を絶ったのだから。

    「……はるひ」

    春の陽と書いて、春陽。
    ただの一度もまともに呼べたことはないけれども。
    お前はその名前をあまり好いてはいなかったけれども。
    俺は好きだったよ。お前の名前も。お前を形成するすべてが。

    「なあ、どこに居るんだ?」

    その問い掛けに答えはないと知りながら。
    俺は何度だって、たぶん、死ぬまで問い掛ける。
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    連作幕の外

  • 灰青の音色

    20180819(日)23:46
    彼に出逢って、絆されるように付き合うようになってから、私は確かに変わったのかも知れない。

    「とはいえ、私はあなたのことが好きなわけではないのだけれども」

    「それでもええよ、いつか好きになってくれたら、それでええねん」

    阿呆みたいに明るく笑う大河くんに、私はキュッと唇を噛み締める。
    あなたが私を甘やかすから、だから私はまだ何も言えないのだと、そうやって責任転嫁をしてしまう。

    「大河くん」

    「んー?」

    間延びした声。ゆるりと首をこちらに向けるその姿はあまりに無防備で。
    その顔に、その髪に、その唇に触れたいと、そんなことを考えるのに。
    まだ何も『答え』を出していない私にはその権利はない。

    「なんでもないわ」

    「えー!気になるんですけど!」

    「そのまま気になっていたら?」

    ずっと気になっていてくれたなら良いなと、騒いでいる彼に浅ましくも思ってしまう。
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    連作幕の外