小ネタ

魔導書館は変人だらけ/散文

2020/07/31 20:38
散文連作幕の外続かない筈だったその後
この世界にもし神様という存在が居るのであれば、僕は『彼女』と結ばれたかった。
けれども『彼女』は僕を選ぶことはないだろう。
その胸の中心に揺れる大きな紅い宝石を見つめる『彼女』の顔はいつだって憂い顔。にも関わらずどこか楽しんでいるようにも見えた。

「あの宝石には壱乃の大事なヤツが眠ってんだよ」

天蔵さんがいつかの日にかそう言っていたのを良く覚えてる。
魔女である壱乃さんは異端審問官である僕が決して好きになってはいけない相手で。
けれども異端審問官でありながら神という存在を疑う僕もまた、愚かなのだろう。

「壱乃さん」

「なんしょう?ラスクさん」

「壱乃さんは僕の死を看取ってくれますか?」

「……なんという口説き文句なのでしょうねぇ」

「僕だって男ですので」

「ふふ。そうですね」

わたくしは優しくはないですがその男気に免じて、

「わたくしの命在る限り、貴方の命を視ていましょう」

にこやかに笑う壱乃さんの僕はどこかでホッとしていた。
僕より先に居なくなったりしない壱乃さんに、僕はどこかで安心していたんだ。
だから――

「こんなこと、あんまりだ……」

――壱乃さん。貴女の居ない世界は、あまりに寒すぎる。

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