二次創作女夢主

『夢うつつ』アサ晶♀

2023/01/20 19:52
まほやく
守りたいものはありますか?
それはどれほど大事なものですか?
国も民も身分もすべて捨ててしまった時。
あなたは傍に居てくれるでしょうか?
私はそれが怖いのです。
あなたが離れていくのが、怖いのです。


風が揺れる音がする。ふんわりと何かが身体にかけられた気配がした。
まるで幼い時にオズ様にして頂いたような感覚を覚えて、一瞬オズ様かとも思った。
けれどもそこに在る気配が、ほのかに香る甘い匂いが、オズ様ではなく別の人物であることを物語っていて。
その人物には覚えがあった。ゆるりと瞼を開けようともがけば、くすくすと小さく笑う声が聞こえてくる。

「まだ眠っていても大丈夫ですよ?」

柔らかな、まるで母親が子供にかけるような優しい声。私の好きな声。
ふんわりとした手つきで頭を撫でられた。

「アーサーは頑張り屋さんですね」

その言葉に、何故だか涙が出そうになった。今すぐにでも彼女を抱き締めてしまいたくなった。
けれどもう少し、もう少しだけ。この時間を堪能したくて寝たフリをしてみた。
なんだか子供のようなことだとは思ったが、仕方がない。
彼女の、賢者様の手のひらがあたたかいのがいけないのだ。
なんて、勝手に彼女のせいにして。


国も、民も、身分もすべて無くしても。
あなたは私の傍に居てくれますか?
きっと私に足りないのは、その言葉を発する勇気なのだろう。

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