小ネタ
【烏】メイド長の想い
2019/05/23 22:38続かない筈だったその後
「メイド長、お前様はヴェルの味方だろう?」
嗚呼、奥様。あなた様はそのように快活に笑いながら、あまりに酷なことを言うのですね。
「……ええ、私はスパロウ家のメイド長ですから」
凛と伸ばした背よ。どうか丸まらないで。
この優しくあたたかな方の残り少ない命を、どうか少しでも伸ばして差し上げられたなら。
私の命でもなんでも、交換出来たなら良かったのに。
「旦那様が悲しまれることは、致しません」
さあ、奥様。あなた様は早くお眠りになられてくださいませ。
そう言って、私は奥様を寝台に押し込んだ。
さり気なく煙管に手を伸ばそうとした奥様から煙管盆を少し遠くに置いてから、寝室を出た。
自身の部屋に逃げるように小走りに入ったら、グッと堪えていた何かが決壊するかのように涙が零れてきた。
本当に泣きたいのは奥様だというのに。
『ヴェルに会いたいねぇ』
そう仰られて微かに笑われた奥様の声を聞いて、私は泣いてしまった。
気丈で居なくてはいけないのに。
すべてを知っている私が、しっかりしなくてはならないのに。
「インヴェルノ様……。申し訳御座いません」
鼻を啜って、私は仕える主人に謝った。
謝ったところで、どうにかなることではないのに。
それでも口から零れたのは、謝罪の言葉だった。
嗚呼、奥様。あなた様はそのように快活に笑いながら、あまりに酷なことを言うのですね。
「……ええ、私はスパロウ家のメイド長ですから」
凛と伸ばした背よ。どうか丸まらないで。
この優しくあたたかな方の残り少ない命を、どうか少しでも伸ばして差し上げられたなら。
私の命でもなんでも、交換出来たなら良かったのに。
「旦那様が悲しまれることは、致しません」
さあ、奥様。あなた様は早くお眠りになられてくださいませ。
そう言って、私は奥様を寝台に押し込んだ。
さり気なく煙管に手を伸ばそうとした奥様から煙管盆を少し遠くに置いてから、寝室を出た。
自身の部屋に逃げるように小走りに入ったら、グッと堪えていた何かが決壊するかのように涙が零れてきた。
本当に泣きたいのは奥様だというのに。
『ヴェルに会いたいねぇ』
そう仰られて微かに笑われた奥様の声を聞いて、私は泣いてしまった。
気丈で居なくてはいけないのに。
すべてを知っている私が、しっかりしなくてはならないのに。
「インヴェルノ様……。申し訳御座いません」
鼻を啜って、私は仕える主人に謝った。
謝ったところで、どうにかなることではないのに。
それでも口から零れたのは、謝罪の言葉だった。