小ネタ

呪いにかかった公爵×嘘つきな魔女

2019/03/14 01:45
散文
「運命なんて信じていなかったのよ」

そう言ったのは魔女だった。
森に住む魔女だった。
大層な魔法を使うと噂の、恐ろしい魔女だった。

「俺に呪いをかけたのは、お前ではなかったんだな」

公爵様は呪いにかかっていた。
死の病の呪いにかかっていた。
其れをかけた容疑で、森の魔女は捕まった。

「どうして言わなかったんだ」

「言って何になるの?」

「お前を救えた」

「馬鹿ね」

魔女は笑う。不敵に笑う。

「私ね、運命なんて信じてないの」

信じてなかったの。
公爵様。貴方を愛しただなんて、明日処刑される身でなければ口が裂けても言えなかったわ。

「……愛して、くれていたのか?」

公爵の疑問に魔女は笑うだけで。
公爵は項垂れながら、その場に座り込んだ。

「お前を救えない愚かな私を、お前は其れでも愛してくれるのか?」

「傲慢ね」

でも、そんなところを愛していたわ。


あるところに魔女が居ました。
嘘つきな魔女が居ました。
嘘つきな魔女が最期に吐いたのは、愛しい男にのみ向けた本音でした。

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