小ネタ

冷たくなっていく躰に縋り付いて

2018/09/11 23:37
散文
ねぇ、神様。
あなたがもしこの世界に居るのなら、どうして僕のこの手は愛おしい人の血で濡れているの?
どうして彼女は紅い華を咲かせながら倒れているの?
何故、どうして。
そんな感情ばかりが頭を過ぎる。
彼女が一体何をした?
彼女はただ、世界の取り決めの通りに『魔王』という役柄を得ただけの、魔力が強いだけの、普通の女の子で。
異端児されていた僕にも笑いかけてくれるような、優しい子で。
なのにどうして。
現実はこうも残酷なんだ。


魔王城に響き渡るは、慟哭。
君の居ない世界になんて興味がなかった。
君だけが居れば幸せだった。
けれど君を殺したのは――僕だった。


愛していたのか。
ただ、好んでいただけだったのか。
今となっては分からないけれども。
冷たくなっていく、温度のない躰に縋り付いて泣いても、君の優しい手は僕の頭を撫でてはくれなかった。

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