小ネタ

きみの隣で死ぬために、生きてきた気がする

2018/08/23 16:40
散文
ぽたり、ぽたり、と紅い華が地面に落ちる。
ああ、これまでか。なんて思いながら僕は目の前のきみを見る。
きみは息も絶え絶えといった風で、当然か。
僕がきみをこの手で国王から渡された剣で突き刺したんだから。

「ねえ、生きてる?」

「ええ、辛うじて……」

「そっか。ごめんね。ちゃんと一撃で殺してあげられなくて」

「……構いません。これも、国王……あの人の願いならば……私は喜んでこの命を天に返しましょう」

「どうして、そこまで思えるのかな」

自分の妻を殺せと命じた男のことを、どうして。

「わたくしにも分かりません。ですが、これもまた運命なのでしょうね」

ゆっくりと息を吐くきみは儚くて。疲れたように瞼を閉じるきみは切なくて。頬に陰った睫毛はあまりに美しくて。

「僕が一緒に行ってあげようか」

「え、」

「僕は今まで生かされてきた意味が分からなかった。でも、今ようやく分かった気がする」

きみの隣で死ぬために、生きてきた気がする。
きょとんとした顔をするきみが何だか可笑しくて。
いつもは澄ました顔をしているくせに。すべてを受け入れて、すべて諦めているくせに。
その眦に溜まった雫が、きみの心を表している気がした。

「そう言えば、言い忘れてた。僕ね、きみのこと」

そこまで言って、きみの息がないことに気が付いた。
僕は瞼を伏せて、そうして言った。

「きみが大好きだよ」

そうしてきみを貫いた剣で、僕は自分の命を絶った。
これはきっと、何処にでもある恋のお話。


title by:確かに恋だった

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