小ネタ

春告げ鳥が哭いた日

2018/08/19 23:47
連作幕の外
愛されたかった。
そうだ、俺はただ愛されたかった。

「ふーゆひーこくん!」

にこやかに笑う女。太陽みたいだと思ったのはきっと出逢ってすぐのことだった。
俺が困った時、悩んだ時、疲れた時、共に居てくれたのはこの女だった。

「なあ、どこに居るんだ?」

答えは帰ってこない。
何故なら女は俺の目の前で銃弾に撃たれ、血溜まりを作り、そのまま消息を絶ったのだから。

「……はるひ」

春の陽と書いて、春陽。
ただの一度もまともに呼べたことはないけれども。
お前はその名前をあまり好いてはいなかったけれども。
俺は好きだったよ。お前の名前も。お前を形成するすべてが。

「なあ、どこに居るんだ?」

その問い掛けに答えはないと知りながら。
俺は何度だって、たぶん、死ぬまで問い掛ける。

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