小ネタ

灰青の音色

2018/08/19 23:46
連作幕の外
彼に出逢って、絆されるように付き合うようになってから、私は確かに変わったのかも知れない。

「とはいえ、私はあなたのことが好きなわけではないのだけれども」

「それでもええよ、いつか好きになってくれたら、それでええねん」

阿呆みたいに明るく笑う大河くんに、私はキュッと唇を噛み締める。
あなたが私を甘やかすから、だから私はまだ何も言えないのだと、そうやって責任転嫁をしてしまう。

「大河くん」

「んー?」

間延びした声。ゆるりと首をこちらに向けるその姿はあまりに無防備で。
その顔に、その髪に、その唇に触れたいと、そんなことを考えるのに。
まだ何も『答え』を出していない私にはその権利はない。

「なんでもないわ」

「えー!気になるんですけど!」

「そのまま気になっていたら?」

ずっと気になっていてくれたなら良いなと、騒いでいる彼に浅ましくも思ってしまう。

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