小ネタ

私はそれでも笑うのです

2018/07/12 03:33
散文
私が例えばもっと我儘だったら。
この世界は、いえ、貴方は幸せだった?


「貴方に生きて欲しい。それが私の願いだわ」

「君が居ない世界なんて間違っているっていうのに?君はそれでもそんな酷いことを言うの?」

「ええ、私は酷い……酷い魔物だから」

「……嘘つきだなぁ、君は」

泣き出してしまいそうな顔を向けられて、私は少しだけ悲しくなった。
少しだけよ。本当よ。

「君が生きていない世界なんて、僕にとったら価値なんてまったくないのに」

「それでも、生きて」

私は精一杯の笑顔を向けて、彼に向かって腕を広げた。
さあ。ここを刺せと言わんばかりに胸を張る。
彼は持っていた剣を迷いなく構え、私の心臓に当てた。

「君を心から愛してる」

「奇遇ね。私も貴方を愛していたわ」

そう言った瞬間。
一瞬の迷いもなく突き立てられた剣は、私の心臓を難なく止めようと深く、深く、突き立てられた。
きっと私が少しでも苦しまないようにしてくれたのでしょうね。
それはとても。とても、嬉しいわ。

『勇者』と『魔王』

そんな関係でなければ、私は貴方を泣かせることは無かったのかしら。

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