小ネタ

嘘つきが吐いた嘘

2018/06/21 19:23
連作幕の外
出来れば最期くらいはアナタの腕の中で死にたいものよねぇ。
そうチェシャ猫のようだと称される笑みを浮かべながら言ったなら、彼は酷く険しい顔をした後にアタシの脳天にチョップをかました。
地味に痛い。

「俺で遊んでいるのか」

「いいえ?事実を述べただけよ」

「死ぬとか、なんだとか、そういったことを気軽に口にするのはやめろ」

「そうねぇ、でも、それが事実なんだもの」

アタシが死ぬとき、それはアナタの腕に抱かれた時が良いわ。
アドルは険しい顔のまま、アタシを押し倒す。
アタシはアドルの首に腕を回した。

「嘘つきが」

耳に吐息と共に吐かれた言葉にぞわりと背筋が震えたような、そんな感覚を得た。
アタシは否定も肯定もしない。
その代わりにキスをねだれば、可愛らしいとは程遠い荒々しい口付けが降ってきた。
アタシはそれを甘受しながら「明日は晴れると良いわねぇ」なんて、キスの合間に呟いた。

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