小ネタ

魔導書館は変人ばかり

2018/06/12 21:16
連作幕の外
自分の名前が咲良だからか?昔から花植物には変な親近感があった。
風で折れたであろうその花の枝を諸事情あって今の住処であり就職先でもある場所に飾ろうと持ち帰ってみた。

「壱乃さん。花瓶ってありましたっけ?」

「まぁまぁ、咲良さんたら。……そんな可愛らしい方をかどわかしてどうなさられたのです? 天蔵さんでもあるまいし」

「おぅおぅ壱乃ちゃぁん? おっちゃんがどうしたって?」

「可愛らしい方?」

天蔵さんを当然のように無視して、俺は首を傾げる。
壱乃さんはいつものようにゆったりと微笑むと、その綺麗な白い指先を俺に向けた。

「咲良さんの手に持たれている紫陽花の枝木で御座います」

「これがどうかしたんすか?」

「それに必死に憑いているのですよ。花の精霊が」

しかも生まれたて。嗚呼、珍しいですね。

感心したような言葉を吐く壱乃さんは「花瓶に飾るよりも元在った場所に返してあげてくださいな」と柔らかく微笑んだ。
俺もその通りにした方が良い気がして、視えない精霊とやらを元居た場所に返しに行ってやろうと踵を返す。
その前に、「ああ」と声を出した。

「ラスクさんが今夜来るそうですよ」

「まぁまぁ。一昨日もいらっしゃられましたが……異端審問官様はそんなに魔女の元に来るのがお好きなので御座いますかねぇ」

「ただ単に壱乃さんに会いに来たいだけだと思いますがね」

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