小ネタ

あなたと云うただ一人

2024/05/17 11:01
散文
 私と云う人間は、あなたにとってはきっと大した存在ではなかったのでしょう。
 私はあなたに何かを残せた人間ではなかったのでしょう。
 けれども私は、あなたと云う人間を愛していました。
 それは雛鳥が最初に見たものを親と認識する刷り込みのようなものであったのかも知れませんが。
 それでも、私は——

「あなたを、愛していたのです」

 例えこの想いが刷り込みでも良かった。何が切っ掛けとなっていても良かったのです。
 私はあなたと云うただ一人の人間を愛しました。
 それが罪となるのなら、その罪は私一人で受けましょう。
 これはあなたが受けるべき罪ではないのですから。

「あなたに、幸多からんことを」

 嗚呼、でも。欲をいうのであれば。
 ——私もあなたに、愛されてみたかった。

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