小ネタ
不条理に拾い上げた命/噓つきが吐いた嘘 幕間
2021/12/12 19:47散文連作幕の外
「死にたくない……!死にたくないんだ!」
そう言いながらナイフを振る回す少年は、アタシに向かって走って来る。
「そうは言われても、あなたここで死ぬのよ」
「い、イヤだ……!」
「嫌だって言われてもねぇ……」
アタシは少しだけ悩んで、そうしてにんまりと口角を釣り上げた。
その顔は良くチェシャ猫のようだと称される。
結構気に入っているのよね、その表現。
「おれは……まだ死にたくない……!」
「それはきっと、どんな人間もそうなのでしょうねぇ」
誰しも不条理に殺されたくはないだろう。
その生を終わらせられたくはないだろう。
「でも、だからこそ。アタシは不条理にあなたの命を拾いましょう」
「え、」
んふふ、と笑ってアタシはその日。殺す筈だったひとつの命を拾い上げた。
いつか駒として死ぬその日まで。
あなたの命を生かしましょう。
きっといつかアタシも殺されるのでしょうけれども。
それはそれ。その日まで楽しみに生きましょう。
そう言いながらナイフを振る回す少年は、アタシに向かって走って来る。
「そうは言われても、あなたここで死ぬのよ」
「い、イヤだ……!」
「嫌だって言われてもねぇ……」
アタシは少しだけ悩んで、そうしてにんまりと口角を釣り上げた。
その顔は良くチェシャ猫のようだと称される。
結構気に入っているのよね、その表現。
「おれは……まだ死にたくない……!」
「それはきっと、どんな人間もそうなのでしょうねぇ」
誰しも不条理に殺されたくはないだろう。
その生を終わらせられたくはないだろう。
「でも、だからこそ。アタシは不条理にあなたの命を拾いましょう」
「え、」
んふふ、と笑ってアタシはその日。殺す筈だったひとつの命を拾い上げた。
いつか駒として死ぬその日まで。
あなたの命を生かしましょう。
きっといつかアタシも殺されるのでしょうけれども。
それはそれ。その日まで楽しみに生きましょう。