小ネタ
あの日のお味噌汁、美味しかったなぁ
2021/04/05 19:39散文
世界にひとりだけ。
きみだけが僕の特別で、何より大切な宝物。
なのにどうしてかな?
僕の手の中に来たきみが笑うことは、きみの生涯の中で一度もなかった。
神である僕が、人であるきみを手に入れる為に行った非道なことを、きっと怒っていたんだろうね。
あんなに笑顔を振りまいて、とても元気に走り回っていたのに。
僕の元へ来た時には、何もなかった。
きみは笑顔を失い、走る為の足には枷が嵌められていた。
僕がきみを求めて、そうして指示したとでも思っていたのだろうね。
恨みがましそうに僕をよく見ていたから。
でも、僕はそこまで求めていなかった。
人間が勝手にしたことなんだよ。
それだけは確か。
「僕はただ、きみに笑いかけて欲しかっただけなんだ」
七十年という人にとっては長い時を生き、そうして老衰で死んだきみの亡骸を抱きしめながら、そっときみの頬に口付けた。
塩辛い、味がした。
いつか昔。きみがまだ若かった頃に作ってくれた味噌汁によく似ている。
そう思ったら、また口の中が塩辛くなった。
きみだけが僕の特別で、何より大切な宝物。
なのにどうしてかな?
僕の手の中に来たきみが笑うことは、きみの生涯の中で一度もなかった。
神である僕が、人であるきみを手に入れる為に行った非道なことを、きっと怒っていたんだろうね。
あんなに笑顔を振りまいて、とても元気に走り回っていたのに。
僕の元へ来た時には、何もなかった。
きみは笑顔を失い、走る為の足には枷が嵌められていた。
僕がきみを求めて、そうして指示したとでも思っていたのだろうね。
恨みがましそうに僕をよく見ていたから。
でも、僕はそこまで求めていなかった。
人間が勝手にしたことなんだよ。
それだけは確か。
「僕はただ、きみに笑いかけて欲しかっただけなんだ」
七十年という人にとっては長い時を生き、そうして老衰で死んだきみの亡骸を抱きしめながら、そっときみの頬に口付けた。
塩辛い、味がした。
いつか昔。きみがまだ若かった頃に作ってくれた味噌汁によく似ている。
そう思ったら、また口の中が塩辛くなった。