小ネタ

とある過去/灰青の音色

2020/04/05 16:21
散文連作幕の外
望めばなんでも手に入る人生だった。
望まなくてもなんでも与えられる人生だった。
だからあの人もあの冷たいだけの女より、可愛くてなんでも持っているわたしのことを愛してくれると信じていたのに。

「……っぐぁ」

どうして?どうして?
どうして踏まれているの。どうして髪を掴まれているの。
どうして――あなたはそんなにも冷たい目をしているの?

望めばなんでも手に入った人生だった。
わたしには輝かしい人生しか用意されていない筈だった。

「お前だけは、絶対に許さない」

楽に死ねると思うなよ。

そう言った愛しい人はただ冷たい眼差しで突き刺すようにわたしを見つめたまま。
わたしはただ、わけも分からずはらはらと涙を流しながら「どうして?」と呟き続けた。

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