MEMO

6月星願 スぺ番&新刊サンプル

2026/06/11 21:06
お知らせ同人新刊サンプル
2026年6月28日(日)東京ビッグサイトで開催される【星に願いを-day1- 恋するラムネ玉】にサークル参加します!

スペース番号:東3ホール よ08a
サークル名:水色欠片

頒布する予定の新刊サンプルを投稿しましたので、よろしければお楽しみください。
こちら最初はわりとコミカル(当社比)ですが、死ネタ(いつもの)になります。お手に取る際はご注意ください。

【涙雨】CP:五◎悟×女夢主
A6(文庫サイズ)/全86P
イベント頒布価格:1000円


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【涙雨 壱】

 何れ五条家の当主となられる五条悟様。
 その御方の護衛を務めて早十五年。
 文字通り死ぬまで守れという周囲からの期待もとい言いつけの下、私は今日も五条悟という人間の盾となり続けている。
 盾となり、とは言ったものの、五条悟という人間は誰かに守られるようなそんなか弱い人間ではないし、誰かに守られているだけの人間でもない。
 ならばどうして護衛だなんてお役目が存在するのか。
 単に五条悟という人間の命になんらかの危害が加えられそうになった時、文字通り身代わりになる、という。そんな役目が必要だったからだ。
 誰かの代わりに死ぬだなんて普通に嫌ではある。私の人生は私だけのものだし。
 そんな感覚はこの世に生を受けた瞬間から、否。呪力を持って五条家に生まれた瞬間、無いも同然。捨てるに限る感覚である。
 それに、意を唱えた瞬間、私の衣食住は簡単に奪われてしまうのだ。
 つまり私に許されていた選択肢はこの世にたったひとつ。
 五条悟を守り、有事の際には身代わりとして死にことだけ。

(……悟坊ちゃんはきっと、私なんかには守られたくないというのにね)

 まったく。大人というのは心底嫌になる。そんな大人の仲間入りをつい最近してしまったのだが、それはそれだ。
 しかしながら困った事態になったなあ、と頭を抱えているのも事実。
 もちろん護衛が云々の話ではない。否、それも含めての話ではあるのだが。

『高校は東京の高専に行く』

 それはまるで気紛れに発したような軽さで。けれども意思のある青い瞳は真っ直ぐとそこに居る者たちを射貫いた。
 本来、五条の人間ならば京都の高専に行くことが決まっている。
 だからこそ、その手続きを済ませますかといった時に放たれた言葉である。

(まったく。とんだクソガキ様にお育ちあそばれて)

 当時の凍り付いた空気を思い出し、思わず深い溜め息を吐いてしまった。
 いけない、いけない。これから悟坊ちゃんにお会いするのにこんな調子では、と頬を叩く。
 悟坊ちゃんはきっと、どんな我儘さえも叶えてしまうのだろう。
 まったく、困った御方だ。
 困った御方だと、そんな風に思われながらも誰も本当の意味で悟坊ちゃんに逆らうことは出来ない。五条家に仕えるということはそういうことだからだ。
 私が何を言っても無駄なのだろうな、と思いながら、「夏鈴さんの言うことなら聞くやも……」などと甘い考えで宣う老害、おっと失礼。お年寄りに背中をぐんぐん押されまくり、そんなご老害方に逆らえない私は、結果的に半ば強引ではあるが悟坊ちゃんを説得中である。
 正直、坊ちゃんがどこの高校に入学しようが私には関係ないのでこの時間は至極無意味ではあるのだが。
 そんなことを坊ちゃん相手に言ったところでそれこそ無意味だ。だってこの御方は一度決めたことは引かないもの。

「悟坊ちゃん。私も立場上、一度は言わなくてはならないので一応言いますが」
「前置きはどうでもいい。どうせお前も来るんだからさ」
「ああ、それですよ、それ」

 丁度よく坊ちゃんが自分から発してくれたお陰で、私は一応の釘を刺せるというものだ。

「坊ちゃん。坊ちゃんは生活能力が皆無どころかマイナスではありますが、寮に入ると仰っておりますね?」
「皆無って、お前……それ、お前が言う?」
「私は一応、身の回りのことは大体できますので」

 じゃなくてですね。

「坊ちゃんは生活能力が皆無のくせに寮生活をしよう、だなんて無謀なことを仰っていますが、そこのところどうお考えなのですか?」
「どう考えてるって、別にそんなのお前が着いてくるんだから問題ナシでしょ」

 なんの疑いもない顔でそう言い切る坊ちゃんに、うっかり思いっきり目の前で溜め息を吐いてしまった。
 まったく、予想を一ミリも裏切って来ないクソガキ様ですねぇ、この御方は。
 内心でそんな悪態を吐きながらコホンと一度咳払いをする。
 誤魔化すだなんて坊ちゃんの前でする気は更々ない。
 建前上、取り繕ったのは外に控えている老害という名のお年寄りが聞き耳を立てているのを察知しているからだ。坊ちゃんもそのことには気が付いていらっしゃるが、生まれた時からそうであるので気にした様子はない。
 私は気になるんですけどねぇ。だってナニされるか分かりませんし。
 まあ、大人なので気にしないフリくらいはしますが。
 もう一度深く息を吐きながら、悟坊ちゃんを見やる。ああ、もう何言ってもダメですね、これ。
 だって目の前のクソガキ様はその気だもの。

「一応、言っておきますね。私、高専には入れませんが?」

 私はこう見えて二十歳だ。つい最近、大人の仲間入りをしたような人間ではあるが、一応大人なのだ。
 高専は子供が通うところ。そんな場所に大人は行けない。
 そう、至極当然のことを告げたのだが、坊ちゃんはまるで不満を絵に描いたような顔をする。

「そういう面倒くさいことくらい、幾らでもなんとかなるだろ」
「坊ちゃん。幾ら私でも、年齢操作は無理ですが」
「普通に俺付きの護衛のままくればいいじゃん」

 むう、と顔を歪める坊ちゃん。うん、そういう顔をされると心が揺れる。
 愛嬌という存在をお母様のお腹の中に置いてきた悟坊ちゃんでも、少しだけ愛嬌というものを感じて……。うん、仄かだけどそんな気だけしてしまった。

「坊ちゃん。一応言っておきますね?」
「なんだよ」
「寮生活というのは、自分ですべてを行うものなんですよ?」

 至極真っ当なことを言ったつもりだ。けれども坊ちゃんは未だ不服そうだ。
 まったく、この我儘坊やは。自分の意見だけで生きていらっしゃるんだから。
 まあ、それを私が矯正するとかそういう立場にはないんですけどね。
 料理然り、洗濯然り。まあ、無理だろうけど。家事なんてさせたが最後、洗濯機もキッチンも幾つあっても足りないことだろう。

「あのですね、坊ちゃん」

 まったく、この坊ちゃん一体誰が育てたんだ? という顔をしながら坊ちゃんに向き直る。坊ちゃんは決して折れなかった。なんだなんだ、今までにない程に頑固になってらっしゃる。

「だーかーらー? お前はただ着いてくればいいだけだって」
「ですから、そのお考えが甘いのだと言ってるんですよ」
「誰が甘えた坊ちゃんだよ」
「自覚あったんですか?」

 そんな会話をしながら、坊ちゃんは私の腕を掴む。
 一体なんなんだ、と思いながら私は坊ちゃんを見た。

「お前と絶対、俺は東京の高専行くからな!」

 それは後ろに控えている老害どもに届くような御声で。
 ああ、一応私が立場上で諫めていたことには気が付いていたのかと。そんなことを思いながら。
 これできっと五条悟、初めての寮生活は始まってしまうことなのだろう。
 私という生贄付きで。
 坊ちゃんがどの高校に通おうが絶対こうなるのは分かっていたから特に不服はないが。
 仕方がない。覚悟を決めよう。
 そう思いながらも深い溜め息を吐いてしまったのであった。


****


【涙雨 弐】

「坊ちゃん。正気ですか?」
「正気も正気、マジもマジ」

 悟坊ちゃんの東京行きは思っていたよりもすんなりと決まり、護衛としての私の東京行きもお年寄り連中の間で何があったのか分からないが、どうせ悟坊ちゃんが黙らせたのであろう。すんなりと本決まりになった。
 そうしてなんだかんだと忙しい日々を過ごしていたある日のこと。
 ふと、悟坊ちゃんはなんてことないようにその言葉を放ったのだ。

「お前の制服姿が見てみたい」

 その言葉を聞いた瞬間、どこでそんな変態的な言葉を覚えてきたんですか? と言いそうになった。実際「どこで」まで言ってしまった。しかしながら言わなかった私も耐えたものだ。
 高校の時の制服を着るだなんて、なんて羞恥プレイだ。それを私にしろと? という、いっそ殺意的な何かに近い感情が湧いてしまった。
 ここで断りを入れておくと、殺意ではないですよ。だってほら、私は悟坊ちゃんの護衛ですから。ええ、まったくこれっぽっちも思ってはいないです。一回くらい本気で泣けばいいのに、くらいは思っていますが。

「どこでそんなプレイを覚えてきたんですか? 悟坊ちゃん」
「プレイ? 何言ってんの? 俺は単純にお前の制服姿を見たことがなかったから見てぇな、って言っただけだけど?」

 珍しく殊勝な悟坊ちゃんに、一瞬絆されそうになってしまったが、自分は騙されない。この御方はこうやって私を翻弄して楽しむのが好きなのだ。本当に、ある意味真っ直ぐお育ちになられたことで。
 一体どこの誰がこの御方をお育てになられたのか。近くに居続けて十五年。こんな発言をされたのは初めてで多少戸惑ってしまった。
 戸惑ったには戸惑ったが、事実は言わねばならない。

「悟坊ちゃん。言っておきますが私、制服は持っておりません」
「は? なんで?」
「そこまで驚きますか? 卒業式の日に捨てましたので」

 まあ、正確には老害という名のお爺さんたちに「そんな不要物は捨てろ」と言われたからなのだが。

「捨てた……⁉ なんで⁉」

 思っていたよりも悟坊ちゃんは驚いていらっしゃる。
 本当に凄く驚いていらっしゃるけれども、何を言っているのやら。

「なんでと言われまして、大した理由ではないのでお答えしかねます」

 そんなことを悟坊ちゃんに言えば、きっと怒るだろうし。老害の方を。
 そのくらいは分かるのだ。そのくらいのことを分かるくらいには、お傍に仕えているから。

「護衛のくせに口答えかする気かよ」
「悟坊ちゃん。お口が悪いですよ?」
「だからって、」

 そのまま悟坊ちゃんは何かを言いたそうにしていたが、私はサクッと言葉を遮る。
 こんな不毛な会話をしていても着地は出来ないだろうし。

「そんなことより悟坊ちゃん。荷造りは済ませましたか?」
「おわ……って、ない」

 会話の方向転換を図り、悟坊ちゃんは見事に引っ掛かってくださった。
 しかし明日にはもう五条家を離れて東京に行くというのに、どの辺りの荷造りが終わっていないというのだろうか。

「どの辺りがでしょう?」

 嫌な予感が襲い、恐る恐る聞いてみれば悟坊ちゃんは気まずそうに言う。

「……荷造りって、自分ですんの?」
「……坊ちゃん。念の為、再度お伝えしますね。良くそれで寮生活をするなどと仰いましたね?」
「だって! お前が居るのは分かってたし……」

 まったく悪びれもせずにそう仰る坊ちゃん。私はついうっかり溜め込み続けていた溜め息を思いっきり吐いた。
 幸せが逃げるとはいうが、五条に生まれた時点でそこまで幸せではないのでまあ、いいだろう。
 びくっと肩を揺らした坊ちゃんは、何をすればいいのか分からないなりに、荷造りを始めようとして――盛大に荷物をひっくり返してしまった。

「……私も手伝います」

 そう言うのは必然だったのかも知れない。
 しかしながら……。

「坊ちゃん、その信楽焼は本当に必要だと思っているんですか?」
「うるせー! 誰も持ってくなんて言ってないだろ!」
「左様ですか」


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【涙雨 参】

 東京の山奥にあるその場所、呪術高専に悟坊ちゃんと二人で車で着いたその瞬間。
 悟坊ちゃんはあり得ないものを見るような表情をしながら呟いた。

「マジ、山奥」
「悟坊ちゃん」
 諫めるようにそう言えば、坊ちゃんは「分かってるよ」と静かに答える。
 私の言葉の意味が本当に分かっているのだろうか、この御方は。
 そう思わないことも少なくないけれども、坊ちゃんがそちらに意識したのを感じて坊ちゃんの傍にそっと近寄った。
 この行動に大した意味はない。幼い頃から叩き込まれているだけの言動だ。
 いざとなったら肉の盾になる、くらいの。その程度の意味でしかない。
 とはいえ、五条悟という人間にこの程度の肉の盾は要らないのだろうが。
 ――背後に二人、それより少し後ろに三人。といったところか。

「五条悟というのも大変ですね」
「お前、そんなのミジンコほども思ってないだろ?」
「ええ、思ってませんね」

 胡乱な眼差しで見られながら言われたその言葉に、即座にそう返した。
 思ってもいないだろと言われて、そりゃあまったく思ってもいないので、そうとしか返せない。だからこそ、そう返したのだ。
 この世界に『五条悟』という存在が生まれた瞬間、世界のバランスは変わったなどと言われているくらいですし。
 そんな世界的な変化が起きているのだ。そもそも困るとか、困らないのとか、そういう次元ではないのだ。
 私の世界もそこそこではあるが変わっているので、私の世界にもまあまあ五条悟の影響がないわけではないのですが、そんなことをこの御方に言ったところでそれこそ仕方がないことだ。
 私は身命を賭して『五条悟』を守る。それがこの世界に私という人間が生まれた理由で、何よりもの仕事なのだ。

「そんなわけで頑張ってください。ファイトです」
「お前ってさ……本っ当に! 俺のこと守る気ないよなぁ⁉」
「え? そりゃあ、あの程度の雑魚に負ける坊ちゃんでしたら、多少は守る気があったかも知れませんが……」

 あんな気配を悟られてしまうような雑魚に負ける坊ちゃんではないだろう。
 私の言葉に「あんな奴らに負けるわけねーだろ!」と悟坊ちゃんはぷんすこ怒られていた。怒り方だけは子供の頃から変わりがなく、可愛らしいものだ。

(まあ……悟坊ちゃんは子供なんですけどね。私から見ても、世間から見ても)

 忘れがちではあるが、この御方はまだ高校にこらから入学するような年齢なのだ。
 世界がこの御方を子供として居させてくれないだけで。
 どんなに足掻いても私よりも五つも下の、子供なのだ。
 悟坊ちゃんだっていつかは大人になる。それでも今はまだ、どう足掻いても子供で。それを大人が、子供に対して大人で在れと言っているだけで。
 そんなことを平気でいうような呪術師の世界も大概救いようのない世界だと思ってしまう。
 もっとも、私がどうこう意見出来る立場では当然のようにないのだけれども。
 悟坊ちゃんはそこのところ聡い御方だ。
 だからこそ悟坊ちゃんは私の前でだけは我儘に振る舞うのだろう。
 私に気を使わせないように。
 そんな悟坊ちゃんだからこそ、私も悟坊ちゃんがただのクソガキ様で居られる為に尽力したいと思ってしまうのだ。

「たまに思うけど、お前ホントに俺の護衛なんだよな?」
「そうですけど?」

 質問の意図に気付きながらも素直にそう答えれば、屍の山の前で悟坊ちゃんは盛大な溜め息を吐かれた。
 一体、何が原因なのでしょうねぇ。まったく皆目見当も尽きませんねぇ。
 入寮初日は、五条悟にとっても私にとっても日常の、そんな日であった。


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改めまして。
2026年6月28日に東京ビッグサイトにて開催される【星に願いを-day1- 恋するラムネ玉】にサークル参加します。

スペース番号:東3ホール よ08a
サークル名:水色欠片

イベント終了後、BOOTHにて通頒開始する予定です。
今年最後の(予定の)大型イベントへのサークル参加なので楽しんできたいと思います!
ここまでお読み頂きありがとうございました!

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