MEMO
スパコミday3狗夢新刊サンプル②
2026/05/16 22:58お知らせ同人新刊サンプル
【嘘も真も】
A6(文庫)サイズ/全68P
イベント頒布価格:500円
CP:狗◎棘×女夢主
***
燃えるような赤い髪を風にたなびかせる彼女が自分の視界に入る。
その瞬間、思わず顔を顰めてしまった。
そんな自分に気が付いたのか、はたまた自分のことなんて気にも留めていないのか。
新緑を閉じ込めたような綺麗な瞳の中に【狗巻棘】という存在がしっかりと映り込んだ瞬間、柔らかに眦を下げ、唇を弧に歪めると、全力で最大限自分はここに居るんだとばかりに大きく手を振りながら彼女がこちらに近付いてきた。
「棘くん⁉ 棘くんだ! こんなところで会えるなんて、それはもう運命みたいな出逢い方だね!」
「こんぶ」
彼女の言葉に即座に違うと答えても、当の本人はまったく気にした様子はない。それどころかにこにこと音がしそうなほど満面の笑みを浮かべ、どんどんと自分の傍に近寄ってくる。
彼女を見ているとまるで笑顔の押し売りでもされているかのような気分になるが、彼女は自分を見ると自然に笑顔になってしまうから決して押し売りしてはいないらしい。
何度聞いてもその返答の意味は分からないが、どう考えてもそれは押し売りではないだろうか? と思ってはそこで思考を停止させる。そんなことに時間を割いても仕方がないだろうし。
実際に金銭が絡むという意味で売られてはいない上に、例え売られたとしても普通に要らない。その場でクーリングオフする所存でしかない。
「もー! そんな素っ気ないこと言って! 棘くんのそんなところも好きだよ!」
「すじこ」
彼女の言う運命が本当なら、この世に運命というのはそこかしこに散らばっていることであろう。
何故なら彼女と遭遇したこの場所は高専の敷地内。しかも彼女とは同じ学年で、なんならここはグラウンド。極めつけに言うならこれから体術の授業である。
これが運命だと言われても困るというもの。自分達は出逢うべくして出逢っているし、なんなら授業の時間を告げる鐘があと数分で鳴ることだろう。
彼女の「好き」は軽すぎて信じるに値しない。
実際そういう風に取られるよう、おにぎりの具ではあったが告げたこともある。
彼女はそれを聞いても傷付いた様子は一ミリもなく、なんなら「そんなこと言わないでよー。傷付いちゃうなあ」などとへらへらと笑って見せていた。
どこが傷付いたのだろうか? というか、どうやったら彼女は傷付くのだろうか?
彼女は自分のことを『好き』だと言う。けれども彼女は【狗巻棘】という存在が好きなだけであって、今目の前に居る自分という人間が好きなわけではない。
そのことを自分は知っている。
恋に恋した乙女状態――というわけではないことも知っているが、当事者たる自分にとったら彼女の言動は本気で迷惑でしかない。
そんなことを考えていたら彼女が一歩、また一歩と順調に傍に寄ってきているのが視界の端に映り、一歩近付かれたら一歩後退するを繰り返す。
何をされるというわけでもなく、もはやこれは条件反射としか言いようがないのだが。
まるで道化のような行動を二人で繰り返していれば「何してんだ? 棘、舞宵」とパンダがのそりと近付いてくる。
【舞宵】と呼ばれた彼女は「パンダくん! いつも通り棘くんに振られたところだよ!」と元気良く返事をしていた。
パンダもパンダで「ああ、いつものか」と納得したのか、それとも面倒事には巻き込まれたくない主義なのか、彼女の行動がまるで正常であるかのようにすんなりと受け入れている。
振られたと認識しているのなら近付くのをやめて欲しい。
彼女の言動に関して当事者たる自分にとって一言で言えば迷惑でしかないのだから。
彼女の好意はあまりに軽く、その言葉のすべてに重さを感じることはない。
それでもいつかの日に言われた言葉が不意に脳裏を過る。
「私ね? 棘くんの為ならとりあえず三人くらいは殺せるよ?」
濁りのないまなこで笑みを浮かべながら言われたあの言葉、今思い返しても重さの欠片もなかったと思う。
とはいえ額面通りに受け取るのであればその言葉はこれ以上ないほどに重たいのだろうが。
三人という数字がやけにリアルだし、普通に駄目だろうと思うのだが、彼女の中では決定事項なのか、何かあったら即座に言って欲しいと付け加えられた。その言葉を思い出して胃が一瞬キリリと痛くなった。
一瞬、ほんの一瞬だけこういった言動は一般家庭にとっては当たり前で、普通の人間にとってはそれこそ普通なのか? などとうっかり彼女の中にある当たり前に騙されそうになる。
だが、少なくとも自分達は呪術師。
一般家庭の出ではお互いにない。少なからず一般人とは感覚が違う、……とは思う。あまり一般人と付き合う環境下になかったから自信はないけれども。
感覚はそこそこ違うだろうが、そうは言っても一般人だってほぼ毎日毎時間の好意の押し付けはいっそノイローゼになるのではないだろうか? 実際自分はなっている。
最近では彼女の姿を見るだけで少しげんなりしてしまうくらいだ。ついでに胃がギュッと掴まれたかのように痛くなる。
任務が一緒に時は余計に疲労が強くなるのでさっさと終わらせてしまうに限ると、本来ならばそこまでサクッと終わる筈のない任務を早めに片付けることも多々ある。
きっと彼女はそんなことに気が付いていないのだろうが。気が付いていたとしても当然のように言わないだろう。
「棘くんは凄いね!」
そう言って仕事を終える自分を手放しで褒め称える彼女に、いっそ吐き気さえ覚えてしまうのだ。
自分が仕事をしている間、彼女は何もしていない、なんてことはなく。
しっかり呪霊を祓って祓って祓いまくっているので、口を閉じてさえいれば彼女はちゃんと仕事の出来る呪術師なのに。
だからこそ任務は任務と割り切って彼女との共同任務も文句は出来るだけ言わずにこなしている。
……いや、正確には何度か担任である五条悟に抗議の声は上げているのだが、当の教師は笑みをうかべながら決まって言うのだ。
「悪いね。今は舞宵の好きにさせてあげてよ」
そう言って自分の声には耳を傾けない。同じ生徒であるというのにこの扱いの差。まったくもって遺憾の意である。意義を何度訴えても五条悟の意見が変わることはなかった。
挙句の果てに「棘は嫌なワケ?」とへらへら笑いながらそんなことを言ってくる始末。思わず悪態を吐きそうになった。
嫌だから言っていると、何度もそう伝えているのにいつだってまともに取り合ってくれないのはどこのどいつだという話である。
そんなことを考えていたらいつの間にか授業を終えていた。怒りの力というのは怖いものである。
少しばかり解放されたあと、任務を告げられた。
「とっげくーん! また一緒の任務だね! よろしく!」
知っていた。知ってはいたが、車の前で待っていた彼女は自分を見た瞬間、きらきらと目を輝かせて仔犬のように近寄ってくる。特大の溜め息が出たのはもう許して欲しい。
「……明太子」
「あ、ひどーい! でもそんなところも好きだよ!」
最近共同任務の回数が増えている気がするが、あのメカクレ教師。一回くらい殴れるならばいっそ殴ってみたいものだ。
そう思って、実際に行動に起こしても許されるのではないだろうか? などと考えてしまう。
そんなことを思っていても別に彼女との共同任務は無くなってはくれないので仕方なく、しぶしぶ車に乗り込んだ。
「あのね、棘くん!」
そこから始まったノンストップの自分への賛辞と好意の言葉の数々に少し辟易しながらも、簡単な相槌だけを返し続け、それも段々と嫌になり最後の手段だとばかりに寝たフリをして難を逃れることに成功した。
隣に座っている彼女は自分が寝ていることに気が付くと、途端に静かになる。
――今度からこれを有効活用しよう。
そう思い勝利のガッツポーズを心の中でするのであった。
***
改めて5月31日(日)インテックス大阪にて開催されます
SUPER COMIC CITY関西33
超妖言2026大阪【呪転じて恋となす】
上記のイベントにサークル参加します!
スペース番号:3号館 せ50a
サークル:水色欠片
狗夢新刊2種類と、支部再録加筆コピー本1種類、狗夢既刊2種類を置きます。
ひとり参加のため、いつも以上にポンコツだと思います。
ピッタリ会計だと大変嬉しいです。
どうぞご縁ありましたら、よろしくお願いいたします。
A6(文庫)サイズ/全68P
イベント頒布価格:500円
CP:狗◎棘×女夢主
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燃えるような赤い髪を風にたなびかせる彼女が自分の視界に入る。
その瞬間、思わず顔を顰めてしまった。
そんな自分に気が付いたのか、はたまた自分のことなんて気にも留めていないのか。
新緑を閉じ込めたような綺麗な瞳の中に【狗巻棘】という存在がしっかりと映り込んだ瞬間、柔らかに眦を下げ、唇を弧に歪めると、全力で最大限自分はここに居るんだとばかりに大きく手を振りながら彼女がこちらに近付いてきた。
「棘くん⁉ 棘くんだ! こんなところで会えるなんて、それはもう運命みたいな出逢い方だね!」
「こんぶ」
彼女の言葉に即座に違うと答えても、当の本人はまったく気にした様子はない。それどころかにこにこと音がしそうなほど満面の笑みを浮かべ、どんどんと自分の傍に近寄ってくる。
彼女を見ているとまるで笑顔の押し売りでもされているかのような気分になるが、彼女は自分を見ると自然に笑顔になってしまうから決して押し売りしてはいないらしい。
何度聞いてもその返答の意味は分からないが、どう考えてもそれは押し売りではないだろうか? と思ってはそこで思考を停止させる。そんなことに時間を割いても仕方がないだろうし。
実際に金銭が絡むという意味で売られてはいない上に、例え売られたとしても普通に要らない。その場でクーリングオフする所存でしかない。
「もー! そんな素っ気ないこと言って! 棘くんのそんなところも好きだよ!」
「すじこ」
彼女の言う運命が本当なら、この世に運命というのはそこかしこに散らばっていることであろう。
何故なら彼女と遭遇したこの場所は高専の敷地内。しかも彼女とは同じ学年で、なんならここはグラウンド。極めつけに言うならこれから体術の授業である。
これが運命だと言われても困るというもの。自分達は出逢うべくして出逢っているし、なんなら授業の時間を告げる鐘があと数分で鳴ることだろう。
彼女の「好き」は軽すぎて信じるに値しない。
実際そういう風に取られるよう、おにぎりの具ではあったが告げたこともある。
彼女はそれを聞いても傷付いた様子は一ミリもなく、なんなら「そんなこと言わないでよー。傷付いちゃうなあ」などとへらへらと笑って見せていた。
どこが傷付いたのだろうか? というか、どうやったら彼女は傷付くのだろうか?
彼女は自分のことを『好き』だと言う。けれども彼女は【狗巻棘】という存在が好きなだけであって、今目の前に居る自分という人間が好きなわけではない。
そのことを自分は知っている。
恋に恋した乙女状態――というわけではないことも知っているが、当事者たる自分にとったら彼女の言動は本気で迷惑でしかない。
そんなことを考えていたら彼女が一歩、また一歩と順調に傍に寄ってきているのが視界の端に映り、一歩近付かれたら一歩後退するを繰り返す。
何をされるというわけでもなく、もはやこれは条件反射としか言いようがないのだが。
まるで道化のような行動を二人で繰り返していれば「何してんだ? 棘、舞宵」とパンダがのそりと近付いてくる。
【舞宵】と呼ばれた彼女は「パンダくん! いつも通り棘くんに振られたところだよ!」と元気良く返事をしていた。
パンダもパンダで「ああ、いつものか」と納得したのか、それとも面倒事には巻き込まれたくない主義なのか、彼女の行動がまるで正常であるかのようにすんなりと受け入れている。
振られたと認識しているのなら近付くのをやめて欲しい。
彼女の言動に関して当事者たる自分にとって一言で言えば迷惑でしかないのだから。
彼女の好意はあまりに軽く、その言葉のすべてに重さを感じることはない。
それでもいつかの日に言われた言葉が不意に脳裏を過る。
「私ね? 棘くんの為ならとりあえず三人くらいは殺せるよ?」
濁りのないまなこで笑みを浮かべながら言われたあの言葉、今思い返しても重さの欠片もなかったと思う。
とはいえ額面通りに受け取るのであればその言葉はこれ以上ないほどに重たいのだろうが。
三人という数字がやけにリアルだし、普通に駄目だろうと思うのだが、彼女の中では決定事項なのか、何かあったら即座に言って欲しいと付け加えられた。その言葉を思い出して胃が一瞬キリリと痛くなった。
一瞬、ほんの一瞬だけこういった言動は一般家庭にとっては当たり前で、普通の人間にとってはそれこそ普通なのか? などとうっかり彼女の中にある当たり前に騙されそうになる。
だが、少なくとも自分達は呪術師。
一般家庭の出ではお互いにない。少なからず一般人とは感覚が違う、……とは思う。あまり一般人と付き合う環境下になかったから自信はないけれども。
感覚はそこそこ違うだろうが、そうは言っても一般人だってほぼ毎日毎時間の好意の押し付けはいっそノイローゼになるのではないだろうか? 実際自分はなっている。
最近では彼女の姿を見るだけで少しげんなりしてしまうくらいだ。ついでに胃がギュッと掴まれたかのように痛くなる。
任務が一緒に時は余計に疲労が強くなるのでさっさと終わらせてしまうに限ると、本来ならばそこまでサクッと終わる筈のない任務を早めに片付けることも多々ある。
きっと彼女はそんなことに気が付いていないのだろうが。気が付いていたとしても当然のように言わないだろう。
「棘くんは凄いね!」
そう言って仕事を終える自分を手放しで褒め称える彼女に、いっそ吐き気さえ覚えてしまうのだ。
自分が仕事をしている間、彼女は何もしていない、なんてことはなく。
しっかり呪霊を祓って祓って祓いまくっているので、口を閉じてさえいれば彼女はちゃんと仕事の出来る呪術師なのに。
だからこそ任務は任務と割り切って彼女との共同任務も文句は出来るだけ言わずにこなしている。
……いや、正確には何度か担任である五条悟に抗議の声は上げているのだが、当の教師は笑みをうかべながら決まって言うのだ。
「悪いね。今は舞宵の好きにさせてあげてよ」
そう言って自分の声には耳を傾けない。同じ生徒であるというのにこの扱いの差。まったくもって遺憾の意である。意義を何度訴えても五条悟の意見が変わることはなかった。
挙句の果てに「棘は嫌なワケ?」とへらへら笑いながらそんなことを言ってくる始末。思わず悪態を吐きそうになった。
嫌だから言っていると、何度もそう伝えているのにいつだってまともに取り合ってくれないのはどこのどいつだという話である。
そんなことを考えていたらいつの間にか授業を終えていた。怒りの力というのは怖いものである。
少しばかり解放されたあと、任務を告げられた。
「とっげくーん! また一緒の任務だね! よろしく!」
知っていた。知ってはいたが、車の前で待っていた彼女は自分を見た瞬間、きらきらと目を輝かせて仔犬のように近寄ってくる。特大の溜め息が出たのはもう許して欲しい。
「……明太子」
「あ、ひどーい! でもそんなところも好きだよ!」
最近共同任務の回数が増えている気がするが、あのメカクレ教師。一回くらい殴れるならばいっそ殴ってみたいものだ。
そう思って、実際に行動に起こしても許されるのではないだろうか? などと考えてしまう。
そんなことを思っていても別に彼女との共同任務は無くなってはくれないので仕方なく、しぶしぶ車に乗り込んだ。
「あのね、棘くん!」
そこから始まったノンストップの自分への賛辞と好意の言葉の数々に少し辟易しながらも、簡単な相槌だけを返し続け、それも段々と嫌になり最後の手段だとばかりに寝たフリをして難を逃れることに成功した。
隣に座っている彼女は自分が寝ていることに気が付くと、途端に静かになる。
――今度からこれを有効活用しよう。
そう思い勝利のガッツポーズを心の中でするのであった。
***
改めて5月31日(日)インテックス大阪にて開催されます
SUPER COMIC CITY関西33
超妖言2026大阪【呪転じて恋となす】
上記のイベントにサークル参加します!
スペース番号:3号館 せ50a
サークル:水色欠片
狗夢新刊2種類と、支部再録加筆コピー本1種類、狗夢既刊2種類を置きます。
ひとり参加のため、いつも以上にポンコツだと思います。
ピッタリ会計だと大変嬉しいです。
どうぞご縁ありましたら、よろしくお願いいたします。
