SS 81~100

「貴方が浮気しようが何をしようが、もう、どうでもいいよ」


彼女のその言葉を聞いて、スゥッと血の気が引いていく音がした。
それでも諦めの悪い俺は、言葉を紡ぐ。


「……ど、いうこと?」

「言葉の通りだよ」

「だから、どういうことだよ!」


声を荒げた俺に対して、彼女はいつもと何ら変わらない口調で告げた。


「貴方が浮気をしても、きっと私は貴方を許してしまう。貴方の事が好きだから耐えようと思ってしまう」


だから、もういいの。


「好きにしていいよ。私はもう、何も言わないから」


彼女の言葉が胸に突き刺さる。
好きにしていい、だなんて。
そんなの、俺の事だなんてどうでもいいと言っているようなものじゃないか。


俺はこの時、ようやく自分が犯した事の重さに気が付いた。
気が付いたけれど、もう全てが遅かった。
彼女は俺に好きにしろと言った。
それはもう自分は俺の浮気に対して口を出さないということで。


「……っ、ちが!俺は、ただ!」


お前に妬いて欲しかっただけなんだ!
そんな最低な言葉を吐き出そうと思った。
けれどそれは叶わなかった。


「何度も言うけど、もういいよ。貴方が私を好きではないと分かったから、だからお願いだから言い訳なんてしないで。期待をさせないで。私はもう、傷付きたくはないの」


そう言葉を遮った彼女に、どんな言葉を掛ければ正解だったのだろうか?
ただ一つだけ分かるのは。


――俺がどれだけ言葉を尽くそうと、彼女は決して俺を信じてはくれないのだろうということだけ。


その事実に、泣きたくなった。
けれどもう、俺には嘆くことすら許されてはいないのだ。
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