SS 81~100

食事終わりに恋人と良い雰囲気になって、「ベッド行くよ」なんて事を言われ、私も頷こうとした時。
ふいにリビングの壁に飾られている壁掛け時計が目に入り――私は叫んだ。


「ドラマが始まるぅ!!」

「……は?」

「ちょ、今すぐ退いて!ドラマ見なきゃ!」


グイッと力任せに恋人の身体を押し退けて、ローテーブルに置かれたリモコンを操作し目的のチャンネルに合わせる。


「ちょっと、まさかオレよかドラマ取るなんて言わないよね?」


大層不機嫌な声を出す恋人には悪いが、今は構ってなんかいられない。
毎週楽しみに見ているのだ。最終話が迫ってきた今。見逃せる訳がない。


「不機嫌な顔しないでよー。私の楽しみの1つなの!許して!後でなんでもするから!」


早口に捲し立て、テレビから視線を離さないでそう言う。


「なんでも?」

「……ん?うん。なんでも!」


丁度始まったドラマに意識の半分以上を持っていかれていた為に、恋人の問いを深く考えずに頷いた。
そんな私の様子をむすっとした顔で見ていた恋人が口角を上げぼそりと、


「約束だからね?」


なんて呟いていたが、テレビに釘付けになっていた私には幸か不幸か聞こえなかった。



その後、ドラマが終わった瞬間、良い笑顔を浮かべた恋人に問答無用で寝室まで連れていかれ、昼まで啼かされる羽目になるとは思わず、私はただドラマを堪能していたのだった。
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