SS 61~80

「私の全ては坊っちゃまの為にあるモノです。ですから貴方に差し上げられるモノは何一つありません」


私を欲しいと言って、私のこめかみに銃口を突き付けた男にそう返せば、男は呆気に取られたような顔をする。
けれどそれも一瞬で、素晴らしい!と声を上げた。


「君の忠誠心は素晴らしい!まさに私の理想です!諦めるなど出来そうにありませんね」

「それは困ります。お引き取り願わなくては坊っちゃまのお迎えに遅れてしまいますから」

「あのような勝ち気なだけの子供に貴女のような素晴らしく有能で美しい執事は勿体無い!私のような者こそが貴女に相応しい」

「私が誰に相応しいかなんて、貴方が決められる事ではありませんね。私は私の意思で坊っちゃまに仕えているのですから」

「どうしたって頷いてはくれませんか」

「頷く理由がありませんね」


そうですか、と呟いた男は、しょうがないですねと溜め息混じりに言って指を鳴らした。
すると何処からともなくスーツを着た男がぞろぞろと現れる。


「あまり手荒な真似はしたくはありませんでしたが、仕方がありません」


少し痛い目に合えば、貴女の気も変わるでしょう。
うっそりとした笑みを浮かべて背を向ける男。
男を隠すようにスーツを着た男達が私の前に立ちはだかる。
それらに、はあ、と溜め息を吐いた。


(申し訳ありません。坊っちゃま)


どうやら本日のお迎えは、十分ほど遅れてしまいそうです。
心の中で主である少年に謝って、男達を片付ける為に一歩足を踏み出した。
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