SS 61~80

※死ネタ・血表現あります。




君を愛していたのだと。
もし僕がそう言ったなら、君は信じてくれるかい?


「……っハ、信じると思う?」


こんな状況下で。
こんなことをされて。


「んー。僕なら信じられないかな」


そう言ったなら、君はだろうねと呟いて力無く地面に頬を付けた。


「もう死ぬのかい?つまらないなぁ」

「……だ、れが、そうしたのかな…っ?」

「はは。僕だね」


僕が幾度も君に切り付けた包丁は、君の腹に突き刺さったまま。
こぷり、音がしそうな血液の珠は君の全身から零れ出ている。


「ねぇ、でも愛していたんだよ」

「ま、…た、それ?」

「ふふ。だって君、今にも死んじゃいそうでしょ?ちゃんと伝えるべき事は伝えておかないとさ」

「できれば、っは、こんな状況で、言われたくはなかった、わ」

「君はこうでもしないと信じてくれなかったでしょ?」


僕の愛を。
僕の本気を。
いつもいつも適当に交わして。
どれだけ僕が傷付いたと思っているの?


「傷付いて、傷付いて、いい加減疲れちゃったんだ」


今でも君を確かに愛しているよ。
君の痛みに歪んだ顔に愉悦すら走る。
どんな君でもいとおしい。
そりゃ、一番は僕に笑い掛けてくれた顔なんだけど。
僕はもう、僕以外にも見せる顔だけじゃ我慢できなくなっちゃったから。


「君を殺したら、君は僕だけのモノになる。幸せだな」

「……ばかね、」

「ふふ。馬鹿だよ」


意味、分かってないでしょ。
そう呟いて、君は微かに目を細めると静かに瞼を閉じた。


「意味なんて分からなくていいよ。だって君はもう僕のモノになったんだから」


君の心は要らない。
だって君は絶対にくれないだろう?
君の身体は要らない。
だってあの世とやらには持っていけないから。


だから君の命を僕に頂戴?


何も手に入らないなら。
確かに奪ったと実感出来る確かなモノを。
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