SS 61~80

「アンタが好きだ」

「……うん?」


うん?
あれ、可笑しいよね?


「あの、言う相手間違えてない?」

「間違えてない。俺はアンタが好きなの」


あー、なるほど。
コレはあれか。
罰ゲームというやつだね。


「そうですか、お断りします」

「……はあ?」


なんでテメェなんかに断られなきゃいけねぇんだよって顔してますよー。
間違っても好きな子に告白した男の子の顔じゃアリマセンって。


「なんで断られなきゃいけねぇんだよ」


ほらやっぱり。


「いや、私あなたのこと良く知りませんし、そんな状態でお付き合いするのもどうかと思いますので」


これで穏便に終わるだろう。
うん、良かった良かった。
そう思ったけれど、彼はブスッとした顔で口を開いた。


「アンタに断られる理由が分かんねぇんだけど」


断られる理由が分からない?
そんなのこの告白が罰ゲームだからに決まってるじゃないですか。やだー。
どうして罰ゲームだって分かるかって?
いやいや分からない訳ないですよ。
だって、


「だってあなた。私のこと知らないでしょう?」

「……っ」


図星を突かれたような顔をしたのを見て、自分の考えが間違っていないことに今更ながらに安堵した。
そうじゃなかったらただの失礼な人になっちゃうからね。


「……なんでそう思ったんだよ」

「私のことずっと『アンタ』って呼んでたでしょう?普通告白時には名前を呼ぶものじゃないかしら?」


まあ、世間一般論は分からないけれど、私はそう思ってるものでね。
でも彼はずっと私のことを『アンタ』としか呼ばなかった。
そりゃあ、すっごいシャイさんだったなら別かもだけど、それでも呼び出しの時ですら名前を呼ばれないのはどうなのかなってね。


「だからこの告白は、あなたが罰ゲームか何かで全く知らない私に告白してきたんだろうなぁって」


当たってたかしら?
そう首を傾げれば、あなたは悔しそうに顔を歪めた。
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