SS 61~80

――説明して貰おうか?


ニコリと笑った彼の目が全く笑っていなくて、背筋がゾクリとした。


「俺はさ、別にお前に怒ってるわけじゃないんだよね?お前が悪いわけじゃないって分かってるからさ」


ただ、許せねぇよな。
お前が誰か知らねぇ糞野郎に触られたなんざ、許して言い訳がねぇ。


「い、や、でもさ、ただちょっと触られただけというか」

「ただ?ちょっと?ふざけたこと言うなよ。俺はお前に痴漢するだなんて大罪を犯したその糞を今からぶち殺してやりてぇくらいなんだから」


いくらお前でも、お前を軽んじることを言うなら許さねぇぞ?


「……そんな怒ることかな。本当にちょっと、触られただけだし」


そう言えば、彼はピクリとこめかみをヒクつかせた。


「だから、んなこと言うのはお前でも許さねぇって言ってんだろ」


腹の底から出したような低い声に肩を跳ねさせた。
これを聞けば流石に彼が本気で怒っていることが分かる。
と、同時に冷や汗が頬を伝った。


(これはマズイ。また前みたいなことになりかねない)


2ヶ月程前にも同じ様なことが起こり、その時は本当に死ぬかと思うくらいの“お仕置き”を受けたのだ。
アレは肉体的にも精神的にもキたし。本気で壊れるかとも思った。

なんとか回避する術はないものか。
そんな私の思いが伝わってしまったのか、彼はゆらりと瞳から光を消して私の腕を掴んだ。
そしてそのまま私をズルズルと引き摺るように引っ張ると、寝室の扉を開いた。


「お前はもうちょっと俺の愛を理解したほうがいい」


その言葉と寝室で何が行われるのか。2ヶ月前のことが脳内を過り、逃げようと足をバタつかせる。


「暴れんな」


けれどそんな些細な抵抗は簡単に封じられ、ポイッと投げ捨てられるようにベッドの上に放り投げられた。


「さて、」


そう言って私の腰を挟むように乗り上げた彼は、舌舐めずりをすると。
煮えたぎるような怒りをその瞳に宿して言った。



「――お仕置きの時間だよ」
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