誇り抱く桜の如く

出会いからきっと必然で。
出会わないことこそが不自然で。
だからこそ私は思うのです。

「劉桜様」

膝の上で眠る劉桜様の髪を撫でながら、その名を心の底からいとおしいと伝えるように呼ぶ。
劉桜様は深く眠っているのか答えはない。
最近政務でお疲れなようでしたから何かしたいと申し出たわたくしに、劉桜様は「膝を貸せ」と仰いました。

「わたくしの膝などで良ければ幾らでもお貸ししますわ」

そう言ってみたものの、この光景はなんともまあ。

「恥ずかしいですね……」

頬に熱を帯びるのを感じながらわたくしは劉桜様が起きられるまでジッと劉桜様の貴重な寝顔を拝見し続けていました。




「何を疲れた顔をしているんだ」

「……お、お気になさらず……」

「そうか?お前の膝は寝心地が良かった。また、頼む」

「……っう、……はい」

「なんだその一瞬の間は。嫌なら嫌だとハッキリ言え」

「い、嫌ではありません!まったく!これっぽっちも!」

「そ、そうか」

熱弁するように劉桜様にそう言えば、劉桜様は少し戸惑ったように目をぱちくりとさせて、そうしてふっと微笑まれた。

「お前の恥じらう顔は貴重だ」

「……っ!起きてらっしゃったのですね!劉桜様!」

「そうして声を荒らげるお前も貴重だ」

「……劉桜様?」

「なぁ、睡蓮」

「はい?」

真っ直ぐと劉桜様がわたくしを見つめるから、わたくしも真っ直ぐと劉桜様を見つめ返した。

「お前と共に居るのは、心地が好いな」

柔らかく微笑まれたそのお顔に、わたくしはどうしてだか泣き出したくなった。

「わたくしもですわ、劉桜様」

貴方様のお傍程、心地が好い場所はございません。
そう言えば劉桜様は優しく目尻を下げてわたくしを抱き寄せる。
優しい、壊れ物を扱う様なその仕草にまた泣き出したくなった。


「劉桜様……大好きです」


堪えきれない気持ちは口から零れ、劉桜様のお耳に届く。
劉桜様はわたくしの耳元に唇を近づけて囁かれた。


「俺もだ」


その言葉に目を見開く。

初めて聞いた劉桜様からの告白。
これが夢であるのなら、どうか覚めないで。
真であるのなら、永遠にこのままが良い。

比翼と連理のように互いが居なければ存在出来ないようなモノにわたくし達もなってしまえばいいのに。
浅ましくもわたくしは、この時そう思って、願いました。


覚めてしまった叶わない夢なのだと知る、その日までは。
5/18ページ