Another Story

「もちもちくん……早く会いたい……」

隣で寝ていた瑠璃葉が不意に発した寝言。
その言葉に、俺は一呼吸置いて叫んだ。

「もちもちくんって誰!?浮気!?」

「……ん、大河……?どうしたの急に叫んで……」

しかも、こんな深夜に。
そんな言葉と非難の声を上げられたが俺には確かめなければならないことがある。

「なあ、瑠璃葉。もちもちくんって何?」

落ち着いた声を出したつもりだった。
けれども彼女にかけた声は震えていた。
もしかしたら浮気をされているかも知れない。
そんな不安感が襲う。

「……もちもちくん?NとHが付くテレビ番組に出てくるゆるいキャラクターのこと?」

「……嘘言わんでもええねんで?」

「嘘?私がそんなくだらない嘘に時間を割くメリットは何?」

「……ちなみにそのもちもちくんて、どんなん」

「四角くて、すべすべした見た目で」

「角餅!すでにもちもちしてへん!」

「五分アニメなのだけれでも、最後に決め台詞で終わるのよ」

「……た、例えば?」

「え?ええと……『餅に勝てぬ敵など居ない』とか、『強い餅が最強だ』とか?」

「あのテレビ局……常日頃思ってたけど、何やってんのん……」

「なかなか面白いわよ。シュールで」

「いや、いや。……一回見てみるわ」

瑠璃葉が珍しくウキウキとした顔をしながらそんな話をしてくるから、俺はそこで何も言えなくて。

「日本のアニメは面白いわね」

でもその言葉には同意できなかった。

「たぶん瑠璃葉が見てるもちもちくんより、もっと面白いアニメあるで!?」

「もちもちくんは最強だと自分で言うところが面白いのよ」

「分からへん……日本人やけどそのアニメを作った人間の感覚が分からへん……」

そんなことを話し合った、深夜二時の出来事。
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