【side story】春告げ鳥が哭いた日【完結済】

「菜月がお前にヤケに懐いているみたいだな」

「あれぇ、冬彦くん。もしかして嫉妬してるのー?」

「嫉妬なんてしてない……!」

否定する冬彦くんに、まぁまぁ、とあたしは手を上下に振った。
冬彦くんは釈然としない顔をしながらあたしのお気に入りのソファに座る。
あー、あたしのクッションが下敷きにされてるー。まあ、良いけど。

「菜月ちゃんとはちょっとお茶して買い物して勉強を教えてあげてるだけだよ」

「……なんで、お前が菜月と接触しているんだ」

「この前の『冬彦くんとの婚約解消しますわ!』問題から何故だか懐かれたんだよねぇ……なんでだろ」

なーんて。本当は菜月ちゃんの好きなことを調べて取り入っただけなんだけど、とは菜月ちゃんのことを好いている冬彦くんの前では言えなかった。

「まあ、菜月ちゃんもあのお嬢様気質で友達も居ないに等しかったみたいだし、あたしが友人ということでひとつ」

「不安要素しかないんだが」

「藤堂の家を黙らせる為にも、あたしを菜月ちゃんの友人ってことにしといた方が得策だとは思うなぁ」

「……そう、だな」

冬彦くんは半分納得して、半分不機嫌にそう言った。
不機嫌だってどうして分かるのかって?
そんなの見れば分かるでしょ。
もう一ヶ月もこの家に居候しているわけだし。

(一ヶ月、かぁ……)

上司からは何も連絡は来ないし、直属の上司からも勿論のように何もない。
正直言って不満だ。何がって、欲求が。
今まで適当な男で済ませていた欲求が、此処では解消できない。
このままでは仕事相手である冬彦くんを襲ってしまいそうになる。
それはしないけどー。要はそれくらい欲求不満だということだ。

「冬彦くんってさぁ」

「なんだ」

「女好きな男の子知らない?この際、年齢は不問とします」

「何故そんなことを聞いて来るんだ。今は菜月の話をしていた筈だが」

「それはもう解決したでしょー。で、知ってる?」

「そんな男、俺は知らない」

「まあ、冬彦くんの人脈じゃあ、そうだろうなぁとは思ってたから良いけどね」

はあ、しかしまあこの欲求不満をどう解消したものか。
ボスに言って適当で後腐れのない男を宛がって貰うか。うん、そうしよう。

「……男を紹介させて、お前は何をする気だったんだ?」

「んー。まあ、色々?」

「なら、」


この言葉がきっと。

あたし達を狂わせた。


「――俺でも良いだろう」
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