SS 21~40

痛いのだと泣くのです。
亡くしてしまったものが、大切なものだったのだと。
気づくことすら出来ずに、気づかせてくれた人が居なくなったと泣くのです。

胸にぽっかりと穴が空いて、塞がってくれないと言うのです。
塞いでくれていたのがあの子だったのだと。
気づくことが出来ずに、居なくなってしまったその人を想って、泣くのです。

あまりにも泣くものだから、さすがに哀れに思った私は、


「君がその子が居ないと死んでしまうと100年、想い続けたならば。次の世で君とその子を会わせてあげましょう」


そう君に言いました。
君は色を無くした瞳で「ありがとう」と嬉しそうに微笑みました。

いくらなんでも100年も思い続けることは出来ないと思っていたのです。
人間は移り変わりやすい生き物だから。
だから、こんなことになるなんて。
いくら私でも到底思いもよりませんでした。


「貴女のお陰であの子ともう一度会えたんだ。だから今度は、二度とあの子を無くさないように鳥籠に入れてずぅっと側に居ることにしたよ」


「名案でしょう?」そう言ってうっとりと笑う君。
泣いている君を哀れに思ったばかりに、どうやら私は君もその子も地獄への道に導いてしまったらしい。
ああけれど、


「ぜぇんぶ貴女のお陰。ありがとう」


人間とは本当に難しく、複雑な生き物のようですね。
死んだ先どころかこれからの生に地獄しか待っていなくても。
いとしい者と居られれば幸せなのだと確かに感じる生き物なのですから。

ならばそれでもいいのかと君に別れを告げて。
私はまた人間の声に耳を傾けました。

悲しみも苦しみも嬉しさも。
短い人生の中に確かに感じ取れる人間は、なんて複雑で、なんといとおしい存在なのでしょう。
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