SS 121~140

好きだよ、だぁいすき。
語尾にハートマークでもついていそうな声音を発する男は、朝からニヤニヤと嬉しそうに私にひっつき虫をしながら愛を囁いている。
正直な話、鬱陶しいからやめて貰いたいのだが聞きやしない。
こいつは一体全体、何が目的なんだ?

「ねぇ、だいすき」

「それは分かったが、何が目的だ?私はきみの戯れ言に付き合う程、暇ではないのだが?」

「えー!だって、今日は良い夫婦の日でしょ?」

「……それがどうかしたのか?」

「……まさか、忘れちゃったの」

ガーン、なんて口で言っている男の言葉に、しかし私は首を傾げる。
はて、何か今日あっただろうか?
私は考え、そうしてひとつの答えが導き出された。

「私達の結婚記念日は、11月22日だが?」

「いい夫婦の日に婚姻届出したんだよねー。あの日の嬉しさは今でも覚えてるよ」

「そうだろうな。きみが半ば強引に『判を押さなきゃ死んでやる!』とまで言って婚姻届を出した日は半年前だからな」

「僕ね、子供が欲しいなぁ」

「唐突だな。真顔で何を言い出すんだ。きみは強請ればなんでも手に入ると思っているのか?私は子供を生産するマシーンではないぞ」

はあ、いつものパターンだ。
半年前、なんやかんやとありつつも婚姻したこの男のペースに巻き込まれてしまったら、本当に子供の1人や2人や3人や4人、普通に出来ているかもしれない。
何せこの男、かなりしつこいのだ。
性交渉という意味でも、性格的な意味でも。

「きみは何が目的だ?良い夫婦の日がどうした」

「んー。だってー、今愛しのきみに種付けしたら12月のクリスマスくらいには子供が出来てると思うんだよね?それって忘れられない記念日にならない?」

「この日に性交渉したから生まれたんだな、という考えはあまり持ちたくはないのだが」

というか、

「今日は23日だが?良い夫婦の日はまったく関係なくないか?」

「うーん。じゃあ!良い兄さんの日でひとつ!お兄ちゃんを作ってあげよーねー」

「迫り来るな。私はこれから仕事をしなければならないと言って、……ああ、もう!脱がすな!」

「声を荒らげるきみも好き」

にっこりと笑った男、いや。夫はそのまま私を抱き上げるとベッドへと運び、あとはもうなすがままだった。




「きみの考えを当ててやろうか?」

「うん?なぁに?」

「寂しかったなら寂しいと、そう言われないと私は仕事人間故に気付けない」

「……なぁんだ、気付いてたのか」

ぱちくりと瞬きする夫は困ったように口を開いた。

「きみはこういった行為はあまり得意じゃないでしょ?でも僕はきみと出来る限り愛し合いたい。だから、理由付けが欲しかったんだー」

本当はね?

「子供なんて要らないんだ。きみを独り占めしていたいから」

「馬鹿か、きみは」

「馬鹿とは失礼なー」

「では阿呆か」

「もー、……仕事邪魔したの、怒ってる?」

「別段怒ってなどいないさ。私はこれでも、きみを一番に考えてやれるくらいにはきみを愛しているのでな。子供が例え出来ようとも、それは変わらん」

「なぁに、それ」

クスクスと笑った夫は、私にひとつ口付けを落とした。

「そんなこと言われたら、張り切りたくなっちゃう」

「どうせ今日は解放する気はないのだろう。好きにしろ」

「ふふ、じゃあ、改めて」



いただきます。
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