SS 121~140

『魔法使いのちょこれーと』&『吸血鬼のちょこれーと』のあるかも知れないifのお話。




「アンタの血はS級ランクの毒で私は飲めないし、アンタは簡単に死んじゃうから、私は付き合う気が一切ないわ」

「ええー!じゃあ僕の血を人間と同じものに、あと不死の研究もするね!」

それが成功してもしなくても、僕と付き合ってよ!

馬鹿みたいな話だった。
アンタは魔法使いで、魔女族の中ではかなり変わり者だと聞いていたけれども、力は強い。
何も番を吸血鬼なんかにしなくても良いだろうに。

魔法使いのアンタが毎日やって来ては「好き」だの「愛してる」だの「僕の血を飲んで!」だの言ってくるのを躱す日々。
それが少しだけ楽しいと思うようになってきた時に、私は死んだ。
正確には仮死状態なだけで、不老不死の私は本来の意味では死にはしない。
本当に死のうと思ったら、千年くらいは血を我慢すれば死ねるかも知れないけれど。
そんなことを試す馬鹿は早々居ないだろうし。
私は仮死状態になってから半月もすれば回復して眠りから覚めるわけで。

まあ、つまり。私は死なないのだ。

なのに、それを知っている筈の魔法使いが私の上に覆い被さってピーピー煩く泣いている。

「何、どうしたのよ」

「君が、この世界から居なくなるのが怖い」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔でそんな事を言ってくる魔法使い。
情が湧かないほど非情ではなかった私は、彼を抱き締めた。

「死なないわよ、私は死なない」

「本当に?」

「ええ、」


――約束よ。


「あんな約束しといて何だけれども、私は今この時ほど死にたいと願った事はないわ。吸血鬼として生を受け、不老不死の身を与えられた私のこの身体が憎い程にわね?」


私に死ねない呪いを掛けた魔法使い。
私のこの世界で誰よりも何よりも大事な恋人は、今日、呆気なく死んだ。
老衰だった。
もう年も年だったものね?仕方が無いわよね。
良く不老の魔術を生み出して私に付き合ったものよ。感心するわ。
ねぇ、でも。不死の魔術は間に合わなかったわね。

「死なないでよ……」

死んだ抜け殻の躯に声をかける。
「うん、死なないよ!」
そんな声が聞こえて来そうなほど美しい顔は、けれどもどうしたって冷たいのだ。
私の両の目からは涙がボロボロと零れ落ちてくる。

「しなないで……おねがいだから……」

私をひとりにしないで。
寂しい。寒い。悲しい。苦しい。

私はあの時の彼のように涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で彼の躯に縋り付いた。



朝を待ち望んで眠った顔は幸せそうで。
私だけが迎えた朝なんて要らなかった。
不老不死の身体なんて、要らなかった。
死にたいと望んだのは、初めてだった。
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