SS 101~120

私の恋人は話し掛ければつまらなそうな顔で「いい加減黙ってくれませんか?酸素の無駄ですから」とか言ってくるような、少しばかり冷めた恋人だ。


ある日落ち込んだことがあって黙って恋人の隣に座っていたら、ニュースを見ていた恋人が不意に、


「嫌に静かですね。普段の喧しさはどうしたんです?」


と声を掛けてきた。
それに「そうかな?」と曖昧に返す。
会話はそれで終わるかと思いきや恋人はこちらを見ずに更に続けた。


「あなたは単細胞なんですから、溜め込んでいないでいつもみたく喧しくしていればいいじゃないですか」

「……珍しいこと言うね。変なものでも食べたの?」

「失礼ですね。僕は至ってまともですよ」

「それでも、珍しい。明日は雪でも降るんじゃないの?」

「梅雨入りしたばかりに雪なんて降るわけないでしょう」


馬鹿じゃないですかと言うような目でじろりと見られた。
それに、わからないじゃない、と冗談で返す。
いつの間にか頬が上がり、笑顔を作っていた。
素直じゃない恋人なりに励ましてくれたのかと、そう思うと更に笑みを作ってしまう。


「何ニヤニヤしているんです?」


訝しげな言葉。
それに「嬉しいからだよ!」と笑顔で返す。
恋人は意味が分かりませんと呟いて、またニュースに目を向けてしまった。
けれど私は見てしまった。
普段は仏頂面の恋人口元に小さな笑みが浮かんでいたのを。


私の恋人は言葉はキツいし、たまに本当に好かれているのかと分からなくなる時もあるけれど。
それでもやっぱり。
世界で一番の恋人だと思うのだ。
4/20ページ