太陽に透けると蒼く見える灰色の瞳を、魔女の瞳だと恐れられたのはいつだったか。覚えていない振りをしながら、この身はしかと覚えている。
それが私がこの世に生まれ落ちて与えられた業だから。
見極めるために。いつか私の命を脅かすモノから、この身と命を守る為に。

「そうね、だから 私はあなたを信じないのかも知れないわ。いいえ、信じられない、の間違いかも知れないけれども」

ミルクティー色のふわりとはした髪にまるで犬の耳が生えたかのように、目の前の彼は目に見えて落ち込んだ。
カラリ、とアイスティーと共に入っている氷が溶ける。私はそれ以上は何も言わず、からりからりと音を立てながらストローでアイスティーをかき混ぜた。

「でも、それでも、こうやって一緒には居てくれるんやな」
「そうね。──賭けているの」
「何を？」
「あなたが、私を落とすのを辞めるか、私が根負けしてあなたに落ちるかをよ」
「はは。性格わっるいなぁ」
「そういうクセに嬉しそうなのは何故？」
「なんででしょう？教えへんよー」

彼は先程までの項垂れた大型犬のような顔を消し、ブンブンとしっぽを振る……やはり大型犬のような雰囲気で嬉しそうにアイスティーのストローに口をつけた。
一体何が彼の琴線に触れたのかは分からないけれども、まあ、きっとこれも概ね私の未来に影響することではないのであろう。そう決定づけて、早々に頭を切り替えた。



これは小松大河というバスケだけが取り柄なただの人間の同級生が、瑠璃葉・アーウィンクという人間であり、そうでもないモノの運命の人になる、少し前のお話。