SS 81~100

※似非ホラーというか微塵も怖くないです
※一部微グロ表現有り
※後半会話文
※以上OKですか?






右手に握った鉄パイプを引き摺りながら「おーい」と声を出す。


「出ておいでー?何にもしないからさー」


多分。なんて心の中だけで呟いて、私は長く暗い廊下を歩く。
いや、実際長いなんてもんじゃない。かれこれ一時間は歩き続けているのにまだ先が見えないのだから。


「私疲れちゃったー、ねえ、出てきてよー」


廊下の先の暗闇に居るであろうモノに対して声を出せば、ざわり、空気が変わった。
嵐が来る前のような風を肌に感じて、鳥肌が自然と立つ。
腕に広がった鳥肌を見て「わぁお」なんて言えるくらいには心に余裕がある。
こんな時は弱気になってはいけない。
心に隙を作れば漬け込まれてしまうから。


「……やっと来たね?」


ズ、ズ、とナニかを引き摺るような音が聞こえてくる。
ズ、ズ、と音が近付いてくる。


「ここに来る前に一度会ってるから、二度目ましてかな」


暗闇から現れたのは下半身を失い、内蔵がぐしゅりと溢れ出す、長い髪で辛うじて女だと分かるナニカ。
その女は血走った眼で私を睨み付ける。


『よ、くもよくもよくもよくもあたしの下僕を消してくれたなゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない!!!!』


爛れた腕を使い凄いスピードで逃げる間も与えないとばかりに這いずってくるその女。
都市伝説の一つ。『ひきこさん』に、けれども私は悠然と微笑んで見せた。


「下僕って、あの貴女が引き摺ってボロボロにした少女達のこと?」


こてん、と首を傾げる。


「まあ、確かにお友達を無くすのは辛いよねぇ」


で、も。


「それで気が済んでれば良かったのに、貴女は私の可愛い可愛いお友達を怪我させるんだもん。だ・か・ら・容赦しないゾ☆」

『うるさいうるさいうるさいうるさいしししししね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ』


叫び声を上げながら迫ってくる『ひきこさん』が後一歩で私をその長い腕で捉えようとするのを交わし、私は持っていた鉄パイプを両手で力強く握り締めた。
再度体勢を立て直す『ひきこさん』に私は口元だけで笑いながら、


「そぉーれっ!」

『、ぐぁ、ぁ』


鉄パイプを『ひきこさん』の爛れた上半身と顔を縦一直線に抉るように振った。
『ひきこさん』はカエルが潰れた時のような声を上げながら後ろに倒れ込み、そのまま鉄パイプと共にスゥッと廊下に溶けるように消えていった。
ジメジメとした暗い空気が『ひきこさん』が消えたことによりいつも通っている学校の雰囲気に戻る。
外は綺麗な夕焼けで一瞬見蕩れるも、直ぐにある事を思い出した。


「やっば!部活!」


もうとっくに部活の始まっている時間だ。
口煩い幼馴染に怒られる事を想像して冷や汗が滲み出た。
あんなのに構ってなければ良かったなぁと後悔しながら、私は体育館に急いだ。








「てなことが三日前にあったんですけど、私の部活生活で初めての遅刻になったし、友達は傷付けられるしで、今でもあの子の事は恨んでます」

「……いやいやいや!普通のことっぽく言ってるけど結構な目にあってるよね!?大丈夫だったの!?」

「そうですか?あ、ちなみにあの後ひきこさんが部屋に来たんですけどね?これがウケるったら!盛塩で清めてるんで普通に入ってこれなくて最後には涙目で『いれてよぉ…』って言うんですよ。ああ、勿論入れませんけど。なので普通に無事ですね。でも『いれてよぉ…』って笑えません?爆笑してたら怒ったのかそれから毎晩来るようになっちゃったんですけどね」

「それ大丈夫なの!?」

「お前……鉄パイプなんて何処から拾ってきやがった!」

「突っ込むとこ違うよね!?」

「何か裏庭に落ちてたのを職員室に届ける途中だったんだよねぇ。まあ、消えちゃったからどうでもいいんだけど」

「うん?もしかして俺が可笑しい?この会話の流れだと俺が可笑しい!?」

「模部山先輩。大丈夫っすよ」

「ああ!やっぱり高橋も椎名の可笑しさに気付いて…」

「こいつ憑かれやすい体質らしくて俺も巻き込まれる形で中学の時から良く‘そういうモノ’に遭遇してるんすけど、対処方とか余裕で知ってるんで大丈夫っす」

「ぜんっぜん大丈夫じゃなかった!一回お祓いに行ってきなさい!先輩命令!」

「一回どころか何十回と言ってますよ?もう顔パスです。今日も行きます」

「最近は『また来たのか!』って怒鳴られる事もなく呆れられるようになったよな」

「ねー」

「ドヤ顔で言わない!ホントなんなのお前ら!」

「「ただの幼馴染ですが?」」

「ああ!類は友を呼ぶって奴ね!納得!」
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