SS 61~80
※温いですが性的表現があります。
人魚が人間になる為に捨てた海を自由自在に泳げるヒレ。
得たのは激痛走る不自由な2本の足。
人魚が人間になった時、それはどんな気持ちだったのだろう。
今まで生きてきた場所を捨ててまで会いたいとは願った気持ちは、どれほどのモノだったのだろう。
「ちょっとお嬢さん。そんなにくっ付かれると困っちゃうんだけどな」
「困ればいい」
「困るのはお嬢さんだよ?」
「あなたに与えられるモノなら何でもいい。何でも受け入れる」
「…そんなこと言っちゃダメでしょ」
食べられちゃうよ?
冗談半分、本音半分。込められたその言葉に、けれど彼女はぎゅうっと俺の腰に抱き付く力を強めただけで離れる様子はない。
困ったな、と先程放ったばかりだと云うのに再び反応し始めた熱にどうしたものかと天井を見やる。
起き上がった時に生じた微かな衣擦れに反応したらしいお嬢さんは、俺を離す気はないらしいし。
この海育ちのお嬢さんは怖いもの知らずと云うか。
自分が思ったままに動いてしまうから手に終えない。
そうして痛い目に会うのは自分だと、いい加減理解して貰いたいものだ。
「お嬢さん。今日は自棄に積極的だね?どうかしたのかい?」
「別に。ただあなたが何処かに行こうとしたから」
「水を飲もうと思っただけだよ。お嬢さんも喉渇いたろ?」
「…ん」
コクンと頷いたのを見て、けれど腰に回された細やかな腕は外される様子はない。
お嬢さん、と声を掛けても背中にグリグリと頭を押し付けられるだけ。
俺が離れる事を厭い、可愛らしい行動を取るお嬢さんに、本格的に襲ってしまおうかという気になってきた。
「お嬢さん。いい加減にしないと、明日はベッドから起き上がれなくなるよ?」
「別にいい」
「良くないよ。明日は俺と出掛ける約束をしただろう?」
「……大丈夫」
「じゃないよ。これ以上は手加減するつもりはないよ?」
お嬢さん、ともう一度声を掛ける。
背中に感じる彼女の暖かさは相変わらずで。
はあ、と息を吐く。
「後で拗ねたって知らないからね?」
知らない、なんて言ったところで。
俺はきっと拗ねた彼女の機嫌を取るのだろうけれど。
それは今言ったところで意味がない事だ。
言い終えるや否や体勢を入れ替えると、彼女をベッドに縫い付けて、その白い肌に唇を這わせた。
人魚が人間になる為に捨てた海を自由自在に泳げるヒレ。
得たのは激痛走る不自由な2本の足。
人魚が人間になった時、それはどんな気持ちだったのだろう。
今まで生きてきた場所を捨ててまで会いたいとは願った気持ちは、どれほどのモノだったのだろう。
――ただ分かるのは。
それほど強い感情を向けられて、嬉しくない訳がないという事。
俺に会いたい一心で海を捨て、家族を捨て、自由に泳ぎ回るヒレを捨て。
陸に上がって来てくれた。
想像することすら出来ない激痛が走っているというのに、彼女は俺の前に立って、会いたかったと涙を零した。
その涙があまりにも美しくて。
彼女から放たれた想いがあまりにも真っ直ぐで。
恋に落ちたのは、きっと一瞬のこと。
晒された足のふくらはぎには人では有り得ない鱗模様。
直ぐに気付いた彼女の正体に、ヒトになってまで会いに来てくれたのかと。
彼女に対していとおしさは更に募り、留まることを未だに知らない。
陸に上がった人魚のお嬢さん。
たった一度視線が絡んだ。
俺すら忘れているようなそんな出逢いで、俺に惚れてしまった哀れな子。
どれだけ君の身体に激痛が走っていようとも、どれだけ君が海に恋い焦がれても。
その2本の足では二度と自由に海を泳ぐことは出来ないし、家族の元に帰ることすら出来はしない。
いいや、俺がそんな気にさえさせはしないさ。
「会いに来たのはお嬢さんなんだから、勝手に居なくなったりしないでね」
「……居なくなる理由がない」
「そっか」
ポツリと溢した言葉に反応したお嬢さんのその言葉に。
嬉しいと笑みを浮かべて、汗ばんだ彼女の額にキスを落とした。
人魚が人間になる為に捨てた海を自由自在に泳げるヒレ。
得たのは激痛走る不自由な2本の足。
人魚が人間になった時、それはどんな気持ちだったのだろう。
今まで生きてきた場所を捨ててまで会いたいとは願った気持ちは、どれほどのモノだったのだろう。
「ちょっとお嬢さん。そんなにくっ付かれると困っちゃうんだけどな」
「困ればいい」
「困るのはお嬢さんだよ?」
「あなたに与えられるモノなら何でもいい。何でも受け入れる」
「…そんなこと言っちゃダメでしょ」
食べられちゃうよ?
冗談半分、本音半分。込められたその言葉に、けれど彼女はぎゅうっと俺の腰に抱き付く力を強めただけで離れる様子はない。
困ったな、と先程放ったばかりだと云うのに再び反応し始めた熱にどうしたものかと天井を見やる。
起き上がった時に生じた微かな衣擦れに反応したらしいお嬢さんは、俺を離す気はないらしいし。
この海育ちのお嬢さんは怖いもの知らずと云うか。
自分が思ったままに動いてしまうから手に終えない。
そうして痛い目に会うのは自分だと、いい加減理解して貰いたいものだ。
「お嬢さん。今日は自棄に積極的だね?どうかしたのかい?」
「別に。ただあなたが何処かに行こうとしたから」
「水を飲もうと思っただけだよ。お嬢さんも喉渇いたろ?」
「…ん」
コクンと頷いたのを見て、けれど腰に回された細やかな腕は外される様子はない。
お嬢さん、と声を掛けても背中にグリグリと頭を押し付けられるだけ。
俺が離れる事を厭い、可愛らしい行動を取るお嬢さんに、本格的に襲ってしまおうかという気になってきた。
「お嬢さん。いい加減にしないと、明日はベッドから起き上がれなくなるよ?」
「別にいい」
「良くないよ。明日は俺と出掛ける約束をしただろう?」
「……大丈夫」
「じゃないよ。これ以上は手加減するつもりはないよ?」
お嬢さん、ともう一度声を掛ける。
背中に感じる彼女の暖かさは相変わらずで。
はあ、と息を吐く。
「後で拗ねたって知らないからね?」
知らない、なんて言ったところで。
俺はきっと拗ねた彼女の機嫌を取るのだろうけれど。
それは今言ったところで意味がない事だ。
言い終えるや否や体勢を入れ替えると、彼女をベッドに縫い付けて、その白い肌に唇を這わせた。
人魚が人間になる為に捨てた海を自由自在に泳げるヒレ。
得たのは激痛走る不自由な2本の足。
人魚が人間になった時、それはどんな気持ちだったのだろう。
今まで生きてきた場所を捨ててまで会いたいとは願った気持ちは、どれほどのモノだったのだろう。
――ただ分かるのは。
それほど強い感情を向けられて、嬉しくない訳がないという事。
俺に会いたい一心で海を捨て、家族を捨て、自由に泳ぎ回るヒレを捨て。
陸に上がって来てくれた。
想像することすら出来ない激痛が走っているというのに、彼女は俺の前に立って、会いたかったと涙を零した。
その涙があまりにも美しくて。
彼女から放たれた想いがあまりにも真っ直ぐで。
恋に落ちたのは、きっと一瞬のこと。
晒された足のふくらはぎには人では有り得ない鱗模様。
直ぐに気付いた彼女の正体に、ヒトになってまで会いに来てくれたのかと。
彼女に対していとおしさは更に募り、留まることを未だに知らない。
陸に上がった人魚のお嬢さん。
たった一度視線が絡んだ。
俺すら忘れているようなそんな出逢いで、俺に惚れてしまった哀れな子。
どれだけ君の身体に激痛が走っていようとも、どれだけ君が海に恋い焦がれても。
その2本の足では二度と自由に海を泳ぐことは出来ないし、家族の元に帰ることすら出来はしない。
いいや、俺がそんな気にさえさせはしないさ。
「会いに来たのはお嬢さんなんだから、勝手に居なくなったりしないでね」
「……居なくなる理由がない」
「そっか」
ポツリと溢した言葉に反応したお嬢さんのその言葉に。
嬉しいと笑みを浮かべて、汗ばんだ彼女の額にキスを落とした。