SS 41~60

壊すのが怖いから。
好きすぎて怖いから。
だから他の女で発散したんだ。


そう沈痛な面持ちで言ったアンタを鼻で嗤う。


誰が壊れるのが怖いなんて言った?好き過ぎる?
ハッ!!上等じゃない。
そんなこと怖くも何ともないし、アンタが好きだから浮気をされても私が悪いのかと思って付き合ってきた。
でもアンタはそんな馬鹿みたいな理由で浮気を繰り返してたワケ?
今まで悩んでいた時間って何だったの?


「それで別れたくないとか言うわけ?」

「っ勝手だって分かってる。でも、」

「ふぅん。…で?別れたくなくて、でもまた浮気はするって?」

「そ、れは…」


煮え切らない言葉を肯定と取って、はぁ、と溜め息を吐き捨てた。
コイツの浮気はもう病気だ。
私には付き合いきれない。


「分かった。もう良い。別れよう」

「だから嫌だって言ってるだろ!」

「アンタが嫌だろうが関係ないわよ。私がもう無理だって言ってんの」


一度でももう無理だってなったらさ。恋人っていう関係は終わりだと思わない?
巻き返すだけの愛情をもう持てそうにもないし。
もう一度信頼するなんて出来そうにもない。

だから別れようと言った。
けれどコイツにはそれが分からないようだ。


「なんで?なんでだよ!俺はお前の為を思って他の女と居たのに!なんで別れるなんて言うんだよ!」

「はあ?」


逆ギレ出来る立場だと思ってんの?
額に手を当てて呆れ果てる。


「あのさ。私がいつアンタにそんなこと頼んだ?私は確かにアンタが好きだったよ?ていうか好きじゃなきゃ、浮気されてるの分かってて付き合ってられないから」

「じゃあ!」

「でもそれは私にも悪いところがあるかも知れないっていう前提があってからこそ。大体さ。アンタ私を理由にしてるけど、浮気してるのは全部アンタの都合でしょ?」


まさか気付いてないとか言わないでよ。
アンタは確かに病気みたいな浮気性だけど、そこまで馬鹿じゃないでしょ?


そう言えばグッと何かを呑み込んだような顔をする。
それを見て落胆よりもやっぱりねという気持ちの方が強く出たのを感じて。
この関係は随分前から終わっていたことに今更ながら悟って苦く笑う。


「分かった?」

「……どうしても無理なわけ」

「逆にどうしてまだ行けるとか思うワケ?」

「……俺がお前を好きだから」

「好きだから。それで解決するのは物語の中だけ。現実ではただの傲慢だわ」

「それでも好きなんだ」


真剣な顔でそう言うアンタに、何だかやる瀬無くなった。


それならさ、


「ちゃんと私に向けて示して欲しかったわ」


態度で、言葉で。
そうすればまだ、


「私達は続いて居たのかも知れないのにね」


そう投げ槍に吐き捨てると、アンタはもうどうしようもないことにやっと気付いたのか。
泣きそうな顔に無理矢理笑みを浮かべると「分かった」と力無く頷いた。
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