SS 41~60

「さ、佐藤くん!一緒に帰らない?」

「別に構わないけど、一回千円からね?」

「……お付き合いしているにも関わらずお金を取るのですか」

「世の中ギブ&テイクですからね」


涼やかな顔をする佐藤くんに「ただの守銭奴ではないですか」と言いながらお財布を出す。
ここで払ったら彼女の定義が無くなる気がしないでもないけれど、佐藤くんは本気で払わないと一人で帰ってしまうから背に腹は代えられない。


「まいどー」

「絶対一緒に帰ろうね!」

「はいはい。お金貰ったんだから約束は破りませんよ」


佐藤くんの言葉に一応安心しながら、私は「じゃあクラス帰るね」と佐藤くんに告げる。


「うんじゃあね」

「佐藤くん冷たい!そんなとこも好きだけど!」

「はいはい」


おざなりに手を振られてクラスに帰る。
と、いっても隣のクラスだから直ぐそこなんだけど。
自分のクラスに入ると、一番の親友の由衣ちゃんに抱き着いた。


「あああああ!今日も佐藤くんが格好良すぎて生きるのが楽しい!」

「暑苦しい」

「由衣ちゃんも冷たい!」

「あたしとあんな男を一緒に括らないで」

「ごめんなさい」


しょぼんと肩を落とせば、「まあ可愛いから許してあげるわ」と頭を撫でられる。


「んで?佐藤がなんだって?」

「佐藤くんと一緒に帰れることになったの!」

「……またお金払ったの?」

「だってやっと恋人になれたんだもん!一緒に帰りたい!」

「アンタ達の関係をどう頑張って見ても恋人同士とは呼ばないわよ」

「いいの!由衣ちゃんに何言われても幸せだから!」


力強くそう言えば、由衣ちゃんは呆れたようにため息を吐いた。


「……まあ、アンタがそう思ってんならいいんじゃないの?」

「そう言ってくれるのは由衣ちゃんだけだよ!由衣ちゃん超愛してる!佐藤くんの次に!」

「はいはいあたしもよー」


ぽんぽんと背中を叩かれて私は由衣ちゃんに擦り寄った。



たとえ他人から見たら歪な恋人関係だったとしても、私は幸せだからいいのです!
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