SS 41~60
空と海をそのまま閉じ込めた様な二色の青を持つ美しい女が居る。
その噂を聞いて、遥々小さな村に出向いた。
そこに居たのは、噂で聞いた以上の女。
「また来たの?」
「いけぬか」
「別に、ただうちの国の王様は随分と暇人なんだと思ってね」
「ふ、お前に会うために寝ずに仕事した。光栄に思え」
「……訂正。うちの国の王様は大が付く馬鹿ね」
はぁ、と呆れたように息を吐き出す女、リアナは腰に手を当てて「で?」と問い掛けてくる。
「暇人で大馬鹿な王様?今日は一体ナニを持ってきたわけ?」
「お前はもう少し自国の国王を敬ったらどうだ」
「敬えるようになったら敬って上げるわよ。少なくともこんな辺鄙な村に来てるうちは敬えないけど」
「全く。その辺鄙な村にわざわざ国王が来ていることに普通の女は自惚れるものなのだがな」
「あら、なら私は普通じゃないみたいね」
ああ言ったならこう言う。
国王相手にだって動じずに物を言う様に従者は眉をしかめるけれど。
私にしてみたら肩の力が抜けるようで、それが酷く心地良い。
「口の減らない女だ。……おい、アレを」
その言葉に従者は直ぐに1つの箱を持って側に寄る。
その箱を受け取りそのままリアナに渡せばきょとんとした顔をされた。
「まぁた意味の分からないくらい豪奢なドレスでも渡されると思ったら……なぁに、これ?」
「ドレスは着てはくれないだろう?」
「まぁね?あ、村の女の子は喜んでたわよ」
「だから、違うものにしたんだ」
「ふぅん」
箱をじぃっと見回して、不意に上蓋を開ける。
するとみるみる内にリアナの顔はしかめられていく。
「御返しするわ」
「それは困る。返すくらいなら捨ててくれ。まぁ、もっとも」
それは税の一端で買った物だがな。
そう言えば傍目から見ても嫌そうにソレを見て、重い溜め息を吐き出す。
「貴方が私に固執する理由はナニ?物珍しさ?眼の色意外は普通の村娘よ」
「……さあ?何故だろうな」
「は?」
「私とて分からぬ。お前のような娘に固執して、酷く滑稽だと思うよ」
リアナの言った通り、瞳以外はただの普通の村娘。
一国の王が欲する必要など無い筈なのに。
ただ欲しくて堪らない。
この腕で掻き抱いて、閉じ込めてしまいたい。
そんな風に思うのは生まれてこの方、お前だけ。
「私のものになってくれないか?」
「……」
「リアナ、せめて何か言ってはくれないか?」
指輪を見つめたまま何も言わないリアナに流石に不安になって、肩に触れて顔を見合わせる。
そこには相も変わらず美しい、二色の青。
「……あのさ、本当に意味が分からないのよね」
「お前を求める理由か?ならば私には答えられんぞ」
「……違うわよ」
「ならなんだ?」
「……私さ、言われるのよ。貴方が来る日はいつもそわそわしてるって」
「?」
「貴方と話してる時はいつも楽しそうだって」
意味分かんない。
眉を寄せるリアナを呆然と見つめる。
今の言葉はまるで、
「それを答えと受け取っていいか?いや、受け取るぞ私は」
「いやいや、受け取らないでよ。どんだけせっかちなの貴方は」
「気も急くに決まっているだろう!私がどれだけお前に焦がれて居ると思っているのだ!?」
「ちょっ、そんな事大声で言わないでよバカッ」
「馬鹿とはなんだ馬鹿とは!私は大真面目にだな」
「だから、まだ私的には返事してないから待ってってば!」
道端で大声で交わされる会話にいつの間にか村人が集まっていたが、今言われた言葉でそんな事を気にする余裕は消え失せた。
「……私、本当に取り柄無いわよ。がさつな方だし。国王に平気で暴言吐くし」
「そんなリアナに惚れたのだから気にする必要は皆無だ」
「っ、国王のものになる価値なんて無いわよ」
「私が欲したのだ。それだけで価値がある」
「……頑固」
「ふ、どちらがだ」
さっさと言え。
私はそんなに気が長くないんだ。
お前をものにするためにどれだけ辺鄙な村に無理をしてでも通ったと思っている?
私はもう、充分待ったぞ。
「……本当にこんなのでいいわけ?」
「ああ。こんなのが欲しくて堪らない」
「……うちの国王様は変わってるわね」
「ああ、そうだな」
ぎゅうっとスカートの裾を握っているリアナを包むように抱き締めて。
ようやく手に入ったリアナを確かめるように強く力を込める。
身動ぎを感じて胸を押される弱い力を感じて覗き込めば、
――見惚れるような二色の青と、赤。
「好きよ」
照れたように逸らされた視線を戻すように背に回していた腕を片方、頬に添えて真っ直ぐと見つめ返す。
そのまま腰を屈めて軽く唇に触れれば更に増す赤に小さく笑い、
「そうか。私は愛しているぞ」
そう言って、囃し立てるような外野の声に構わず。
染めた頬が熟れた林檎のように染まったリアナにもう一度口付けを落とした。
美しい二色の青よりも、
凛としたお前の心の美しさに囚われた。
そう言ったらお前はどんな反応をするのだろうな?
その噂を聞いて、遥々小さな村に出向いた。
そこに居たのは、噂で聞いた以上の女。
「また来たの?」
「いけぬか」
「別に、ただうちの国の王様は随分と暇人なんだと思ってね」
「ふ、お前に会うために寝ずに仕事した。光栄に思え」
「……訂正。うちの国の王様は大が付く馬鹿ね」
はぁ、と呆れたように息を吐き出す女、リアナは腰に手を当てて「で?」と問い掛けてくる。
「暇人で大馬鹿な王様?今日は一体ナニを持ってきたわけ?」
「お前はもう少し自国の国王を敬ったらどうだ」
「敬えるようになったら敬って上げるわよ。少なくともこんな辺鄙な村に来てるうちは敬えないけど」
「全く。その辺鄙な村にわざわざ国王が来ていることに普通の女は自惚れるものなのだがな」
「あら、なら私は普通じゃないみたいね」
ああ言ったならこう言う。
国王相手にだって動じずに物を言う様に従者は眉をしかめるけれど。
私にしてみたら肩の力が抜けるようで、それが酷く心地良い。
「口の減らない女だ。……おい、アレを」
その言葉に従者は直ぐに1つの箱を持って側に寄る。
その箱を受け取りそのままリアナに渡せばきょとんとした顔をされた。
「まぁた意味の分からないくらい豪奢なドレスでも渡されると思ったら……なぁに、これ?」
「ドレスは着てはくれないだろう?」
「まぁね?あ、村の女の子は喜んでたわよ」
「だから、違うものにしたんだ」
「ふぅん」
箱をじぃっと見回して、不意に上蓋を開ける。
するとみるみる内にリアナの顔はしかめられていく。
「御返しするわ」
「それは困る。返すくらいなら捨ててくれ。まぁ、もっとも」
それは税の一端で買った物だがな。
そう言えば傍目から見ても嫌そうにソレを見て、重い溜め息を吐き出す。
「貴方が私に固執する理由はナニ?物珍しさ?眼の色意外は普通の村娘よ」
「……さあ?何故だろうな」
「は?」
「私とて分からぬ。お前のような娘に固執して、酷く滑稽だと思うよ」
リアナの言った通り、瞳以外はただの普通の村娘。
一国の王が欲する必要など無い筈なのに。
ただ欲しくて堪らない。
この腕で掻き抱いて、閉じ込めてしまいたい。
そんな風に思うのは生まれてこの方、お前だけ。
「私のものになってくれないか?」
「……」
「リアナ、せめて何か言ってはくれないか?」
指輪を見つめたまま何も言わないリアナに流石に不安になって、肩に触れて顔を見合わせる。
そこには相も変わらず美しい、二色の青。
「……あのさ、本当に意味が分からないのよね」
「お前を求める理由か?ならば私には答えられんぞ」
「……違うわよ」
「ならなんだ?」
「……私さ、言われるのよ。貴方が来る日はいつもそわそわしてるって」
「?」
「貴方と話してる時はいつも楽しそうだって」
意味分かんない。
眉を寄せるリアナを呆然と見つめる。
今の言葉はまるで、
「それを答えと受け取っていいか?いや、受け取るぞ私は」
「いやいや、受け取らないでよ。どんだけせっかちなの貴方は」
「気も急くに決まっているだろう!私がどれだけお前に焦がれて居ると思っているのだ!?」
「ちょっ、そんな事大声で言わないでよバカッ」
「馬鹿とはなんだ馬鹿とは!私は大真面目にだな」
「だから、まだ私的には返事してないから待ってってば!」
道端で大声で交わされる会話にいつの間にか村人が集まっていたが、今言われた言葉でそんな事を気にする余裕は消え失せた。
「……私、本当に取り柄無いわよ。がさつな方だし。国王に平気で暴言吐くし」
「そんなリアナに惚れたのだから気にする必要は皆無だ」
「っ、国王のものになる価値なんて無いわよ」
「私が欲したのだ。それだけで価値がある」
「……頑固」
「ふ、どちらがだ」
さっさと言え。
私はそんなに気が長くないんだ。
お前をものにするためにどれだけ辺鄙な村に無理をしてでも通ったと思っている?
私はもう、充分待ったぞ。
「……本当にこんなのでいいわけ?」
「ああ。こんなのが欲しくて堪らない」
「……うちの国王様は変わってるわね」
「ああ、そうだな」
ぎゅうっとスカートの裾を握っているリアナを包むように抱き締めて。
ようやく手に入ったリアナを確かめるように強く力を込める。
身動ぎを感じて胸を押される弱い力を感じて覗き込めば、
――見惚れるような二色の青と、赤。
「好きよ」
照れたように逸らされた視線を戻すように背に回していた腕を片方、頬に添えて真っ直ぐと見つめ返す。
そのまま腰を屈めて軽く唇に触れれば更に増す赤に小さく笑い、
「そうか。私は愛しているぞ」
そう言って、囃し立てるような外野の声に構わず。
染めた頬が熟れた林檎のように染まったリアナにもう一度口付けを落とした。
美しい二色の青よりも、
凛としたお前の心の美しさに囚われた。
そう言ったらお前はどんな反応をするのだろうな?