SS 41~60

森深くの切り株の上に腰掛けて。
柔らかで上等な絹に包んだ彼女を腕に抱く。
日に焼ける事は無くなった真白い彼女。
頭蓋の天辺に口付けを落とした。
滑らかな感触が唇に心地好くてふふ、と微笑みを浮かべる。
遠くで小鳥の鳴き声が聞こえて天を仰ぐ。
真っ青に晴れた空に雲は一つもなく。
頬を撫でる風が気持ちがいい。


「今日もいい天気ですねー」


返事はないと分かっている。
けれど返事を求めて居るわけではないから、別に構わない。

真白い彼女にもう一度口付けて。
空洞の目と目を合わせると、微笑みを浮かべる。


「ずうっと、一緒ですよ」


甘く囁いて、ぎゅうっと壊さない程度に真白い彼女を抱き締めた。





遥か昔に亡くしてしまった私のいとしいひと。


『ずっと一緒に居てあげる』


異形の私に。
死ねない私に。
そう言ってくれた、優しいひと。
こんな私を愛してくれた。
私のいとしい妹背。


「ずうっとずうっと、一緒に居ましょうね?」


ただの口約束だったのかも知れないけれど。
そんなもの、関係ない。


貴女が朽ちて還るまで。
私が朽ちて腐るまで。
私の側に、居てくださいね。
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