SS 21~40

朝、腰に纏わり付く隣の温もりをひっぺがしてベッドから這い出る。
何も身に纏っていない身体が冬の気温に触れて震えた。


「さむっ」


思わず零れた声と、吐き出された白い息に改めて冬を実感する。
ついでに未だにベッドで布団にくるまって眠っている男を睨み付けておいた。
起こさないだけありがたいと思え。と内心で吐き出す。
起こすと鬱陶しいからというのもあるけれど。

寝室から出てさっさとシャワーを浴びる。
浴室の鏡に自分の裸体が写って、なんとも言えない感情が湧いた。
身体中の服を着れば見えない所に散った紅い華。
……ここまであると病気なんじゃないかと思いそうになる。
まあ、コレを付けたのがそもそも病的だからしょうがないか。

シャワーで清めて温まったので浴室から出れば、いつの間に起きたのか下にスウェットを着ただけの男がタオル片手居た。

こんな寒いところで突っ立ってたとか馬鹿じゃないの?

そう言えば、起きたら居なかったから。と不機嫌な声が返ってきた。
上半身裸で締まった身体を惜し気もなく晒す不機嫌な男。
ただ突っ立ってるだけで色気が溢れ出てるとかもうこの人どうすればいいんだろうね。


「さみぃ……」

「いや、邪魔なんだけど」


渡されたタオルは結局また男の手の中にいき、髪と身体を丁寧に拭かれる。
一通り終わったら頭の上に顎を乗せて覆い被さってきた。


「寒いんなら部屋行けば?てか退いてくんない?」

「やだ。さむい」

「だから部屋行けばって」

「やぁだ」


引っ付き虫状態の男を引き剥がすのもめんどくさくて、そのままリビングに引きずっていく。
リビングの中は暖房が効いていた。この引っ付き虫がつけてくれたのだろう。
ついでに下着と服も用意されていたけど、……うん。もう気にしない。
用意された下着を付けて服を着た、瞬間にソファーに押し倒された。


「むらむらしてきちゃった」

「トイレ行ってらっしゃい」

「付き合って?」

「死ねば?」

「ひどっ!」


酷い?はは、こちとら昨日アンタに好き勝手されて腰が死んでんの。これ以上されたら本気で死ぬ。

みーみー煩い男を押し退けながら、よいしょっと起き上がる。
……本気で力押ししてこない所はへたれなんだよね。


「お腹空いたからとりあえずご飯が先」

「……っ!あ、じゃあ俺作る!」

「よろしくー」


言葉の意味をちゃんと理解したのかバッと立ち上がった男はさながらわんこのようにキッチンに掛けていった。
その背中にヒラヒラと手を振って、ぼそりと呟く。


「私も甘いなぁ…」


キッチンから漂ういい匂いを感じながら、とりあえずこれからに備えて休んどこうとソファーに横になった。
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