SS 141~160

それが例えば嘘でも良かったんだ。
きみを救える嘘ならば、それがなんであろうとも良かったんだ。

「どうして……」

呟いた声は、けれども一番届いて欲しい人には届かない。
くたりと横たわるきみの腹からは真っ赤な華が咲いていた。
留まることを知らないかのように咲き続けるその華をとめる手立ては、ない。
何故ならばソレは、俺がやったことだから。

「俺は、どうして……」

魔力が強く、民衆に恐れられていたきみを救う為に嘘を吐きました。
きみを助ける為に、きみを殺すという嘘を吐きました。
けれどもその嘘は真になりした。
民衆は俺ときみが好き合っていることを知っていたのです。
暴徒化した民衆は彼女を襲い、

──俺が見つけた時には既に、虫の息でした。

「きみが、何をしたって言うんだ?」

魔力が強いだけのただの女の子に寄って集って暴力を奮い、殺めた。
嘘を吐いた俺が悪かったのだろうか。
魔物として見られていた彼女を殺せると気付かせてしまった、俺が。
俺が、悪かったのか。

「……ぁ、」

「……っ!」

何かを言おうとして、けれどもその声は音をなさない。
生きてくれ!なんて、言えなかった。
こんな虫の息なのに、それでも尚、きみは笑っていたから。

「もう、楽になれ」

ぼろぼろと零れる涙はきみの頬をも濡らして、まるでやまない雨でも降り注いでいるかのようだ。

何かを言いたかった。
愛していると、そう伝えたかった。
けれどもそれも卑怯な気がして、結局伝えられないままに、きみはゆっくりと息を引き取った。

叫び出したいような、どうして良いかもわからない衝動に駆られて、きみの亡骸にすがり付いて。

泣いて、泣いて、泣いて。

──朝になった時、俺は誓った。

「きみに害なしたすべてを、壊す」

そう吐いた言葉は、きみが死ぬきっかけになってしまった俺さえも例外ではないのだろうなと、壊れかけた心で思った。
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