SS 141~160
「どこに行ってたの」
帰宅早々玄関で仁王立ちしている旦那に出迎えられた。
「起きたら居ないし、ぜんっぜん連絡付かないし、俺がどれだけ心配したか分かってる?ねえ、どこに行ってたの」
怒らないから答えてよ。そう言われたが、何を答えても怒るだろうことは明白だ。何せもう怒ってる。
めんどくさいなぁ、と思いながら、渋々答える。
「ご飯食べてきただけだよ」
「はあ?」
ほら怒った。なんて言ったら絶対面倒くさいから言わないけれど。
旦那は頬をひくひくと引き攣らせながら口を開く。
「俺というものがありながら外で食事してくるなんて酷い……!」
「うん。いや、アンタが居てもわたしの食事は補えないから」
何せ種族は『吸血鬼』
人間の生き血でしか生き永らえられないのに、どうして目の前の男が補えるというのか。
「お腹が空いたなら俺の血をいくらでもあげるって言ってるのにっ!」
「いや、アンタの血、劇薬じゃない。普通に死ぬけどいいの?」
男だけど『魔女』である旦那の血液は毒薬を通り越してただの劇薬だ。そんなもの一滴でも飲んだ日には一瞬で消滅する自信しかない。
「ヤダ!死ぬとか言わないで!」
「ああ、はいはい。ゴメンナサイ」
「おざなりに答えないでよ!」
「……」
めんっっどくさいなーなんて思ってます。ついでに女々しいなーとも思ってます。
でも何でこんな男と結婚したのかなーとは思わない。面倒くさくて女々しいのがデフォの男だと知っているから。
……ただ強いて言うなら出会う前に戻りたいかな。うん。
愛がないからではなく、ただ本気で面倒くさがりな私が一番付き合っていけないタイプだから。
……あれ?これって愛があるって言うのかな。
「とにかく!せめて今度は声掛けてから出掛けて。本気で心配したんだから」
「善処します」
「それ断りの文句!」
「食べないと死んじゃうからそこは何とも言えないわ」
そう言って笑えば、旦那は悔しそうに、泣き出しそうな顔をする。
なんともまあ、可愛いヤキモチだことで。
わたしが死んだら、寂しくて死んじゃう癖に。
食事をしても悲しませる、食事をしなくても哀しませる。
本当に、どうしろっていうのかな。わたしの旦那様は。
「もう逸そ俺の血で殺しちゃおうかな……」
「わお。バイオレンスな発想だね」
「もうそれしか無い気がしてきた」
「アンタがそうしたいなら、わたしは別に構わないわよ」
「……考えるの面倒なだけでしょ」
「ああ、バレた?」
拗ねた顔をする旦那に、でも嘘は言ってないよ?と返せば、知ってる、と照れた顔をされた。
うん。何処に照れる要素があったのか。
面倒くさくて女々しい旦那の照れどころが、二百年程側に居るけど未だに分からない。
まあ、でも。
「えっちなことするのはアンタだけだよ」
吸血衝動と共に襲い来る悦楽の感情が沸かなくなって久しい。それを告げれば旦那は顔を真っ青にしながら口を開く。
「俺以外の男とそんなことしてるって知ったらお前を殺して死にたくなるからヤメテクダサイ」
「あはは」
「笑い事じゃないよね!」
「そうかな」
「そうだよ」
帰宅早々玄関で仁王立ちしている旦那に出迎えられた。
「起きたら居ないし、ぜんっぜん連絡付かないし、俺がどれだけ心配したか分かってる?ねえ、どこに行ってたの」
怒らないから答えてよ。そう言われたが、何を答えても怒るだろうことは明白だ。何せもう怒ってる。
めんどくさいなぁ、と思いながら、渋々答える。
「ご飯食べてきただけだよ」
「はあ?」
ほら怒った。なんて言ったら絶対面倒くさいから言わないけれど。
旦那は頬をひくひくと引き攣らせながら口を開く。
「俺というものがありながら外で食事してくるなんて酷い……!」
「うん。いや、アンタが居てもわたしの食事は補えないから」
何せ種族は『吸血鬼』
人間の生き血でしか生き永らえられないのに、どうして目の前の男が補えるというのか。
「お腹が空いたなら俺の血をいくらでもあげるって言ってるのにっ!」
「いや、アンタの血、劇薬じゃない。普通に死ぬけどいいの?」
男だけど『魔女』である旦那の血液は毒薬を通り越してただの劇薬だ。そんなもの一滴でも飲んだ日には一瞬で消滅する自信しかない。
「ヤダ!死ぬとか言わないで!」
「ああ、はいはい。ゴメンナサイ」
「おざなりに答えないでよ!」
「……」
めんっっどくさいなーなんて思ってます。ついでに女々しいなーとも思ってます。
でも何でこんな男と結婚したのかなーとは思わない。面倒くさくて女々しいのがデフォの男だと知っているから。
……ただ強いて言うなら出会う前に戻りたいかな。うん。
愛がないからではなく、ただ本気で面倒くさがりな私が一番付き合っていけないタイプだから。
……あれ?これって愛があるって言うのかな。
「とにかく!せめて今度は声掛けてから出掛けて。本気で心配したんだから」
「善処します」
「それ断りの文句!」
「食べないと死んじゃうからそこは何とも言えないわ」
そう言って笑えば、旦那は悔しそうに、泣き出しそうな顔をする。
なんともまあ、可愛いヤキモチだことで。
わたしが死んだら、寂しくて死んじゃう癖に。
食事をしても悲しませる、食事をしなくても哀しませる。
本当に、どうしろっていうのかな。わたしの旦那様は。
「もう逸そ俺の血で殺しちゃおうかな……」
「わお。バイオレンスな発想だね」
「もうそれしか無い気がしてきた」
「アンタがそうしたいなら、わたしは別に構わないわよ」
「……考えるの面倒なだけでしょ」
「ああ、バレた?」
拗ねた顔をする旦那に、でも嘘は言ってないよ?と返せば、知ってる、と照れた顔をされた。
うん。何処に照れる要素があったのか。
面倒くさくて女々しい旦那の照れどころが、二百年程側に居るけど未だに分からない。
まあ、でも。
「えっちなことするのはアンタだけだよ」
吸血衝動と共に襲い来る悦楽の感情が沸かなくなって久しい。それを告げれば旦那は顔を真っ青にしながら口を開く。
「俺以外の男とそんなことしてるって知ったらお前を殺して死にたくなるからヤメテクダサイ」
「あはは」
「笑い事じゃないよね!」
「そうかな」
「そうだよ」