twst夢小説
自分はどう足掻いでもハイエナだ。それは逆立ちしたって変わらない。
なのに彼女はそんなハイエナに心を許した。
それは彼女の美点であり、汚点でもあった。
それでも自分は彼女という太陽のような存在に焦がれるように手を伸ばしてしまったのだ。
彼女は受け入れた。自分というハイエナを。もうこれはオレのモノだと、そう思っていた。
だというのに——
「ごめんなさい、ラギー先輩」
彼女は涙を浮かべながらオレに謝ってきた。内容は、彼女がずっと焦がれていたもの。
『元の世界に帰れる鏡を見つけたんです』と言ってきた時には、嫌な予感はしていた。けれども何処かで安心している自分もいたのだ。彼女はオレの手を取ったのだから大丈夫だと。
ああ、でも。
(ユウくんは違ったんスね……)
想いの重さに質量があるのなら、圧倒的に自分の方が重かったと。そういうことなのだろう。なんて滑稽なことだろうか。まるでピエロのようだ。
「そんなに謝らないで。ずっと帰りたかったとこじゃないっすか!」
ならばオレもその質量に見合った答えを出そうじゃないかと軽く答えれば、ユウくんは涙目のままもう一度「ごめんなさい」と謝ってきた。
「どうしてそんなに謝るんすか? 何かやましいことでもあるみたいな……」
「そんなことは、ないですけど……」
「なら、堂々と帰ればいいじゃないっすか」
「……ラギー先輩。あの、」
「いやぁ、めでたいっすね。ようやく帰れるなんて」
ああ、道化なのは確かなようだ。思ってもいない言葉がスラスラと出てくる。
「ら、ラギー先輩……」
「あ、もうこんな時間じゃないっすか。そろそろオレ、レオナさんを起こしに行かないといけないんで行くっすね。それじゃあ」
「……ラギー先輩!」
ユウくんが叫ぶようにオレの名を呼んだせいで、オレの道化の仮面は剥がれてしまったらしい。唇が震える。心の中はぐちゃぐちゃで決壊寸前のダムのようだ。
「ごめんなさい……」
「何に、謝ってるんすか?」
「嘘、吐きました……」
「嘘って……?」
「全部、嘘です。ごめんなさい」
ユウくんは泣き出しそうな顔でそう言った。嘘? 何が? 全部? つまり彼女はオレを騙したということか? それは——何故?
「なんで」
「少し、怖かったんです。ラギー先輩は雲のように掴みどころのない人だから、いつか私のことなんてどうでも良くなってしまうんじゃないのかって」
そう思ったら、嘘を吐いていました。
ユウくんは懺悔するかのように申し訳なさそうな顔をして、そうして困ったように眉を下げる。
「そんな顔、させる気はなかったんです」
「そんな顔って……」
ユウくんはオレの頬に手を伸ばし、そうして優しく包み込むように触れるとまたごめんなさい、と謝った。
「泣かせてしまう気は、なかったんです」
「泣く?」
自分が? あの、生まれた時以外は泣かなかったと言われた自分が、泣いているというのか。ただ人が一人居なくなる程度で。その程度で、オレはダメになってしまうのだと、そう言われたような気分になった。
「アンタが、」
それを認めたら、認めてしまったら。
——もう駄目だった。
「アンタがオレをこんな風にしたんすよ」
ユウくんがオレをこんなにも弱くしたのだ。ならばユウくんが責任を取るのが妥当というものだろう。
「私でいいんですか?」
「アンタがいいんすよ」
「本当に?」
「なんでそんな急に自信なくしてるんすか……」
「私はね、ラギー先輩」
あなたが笑っていてくれるのなら、元の世界に未練なんてもうないんですよ。それが分かりました。
「何言って……?」
「ふふ、なんでしょう?」
「アンタは……まったく。今回オレを泣かせたんすから、罰として今日はオンボロ寮でメシ食わせてもらうんで」
「いいですよ? それくらい」
「アンタ……言葉の意味分かって言ってるんすか」
「はい。私はラギー先輩になら何されてもいいと思っているので」
今回とても傷つけてしまったので、そのお礼にもならないですけど……。
「ラギー先輩。卒業したら一緒に暮らしませんか?」
「気の遠くなる話っすね」
でも、いいっすよ。
「その代わり、アンタもうオレから離れられると思わないでくださいね」
「……離れたくても、もう離れられませんから」
「? なんか言ったっすか?」
「ラギー先輩って、案外情熱的だなぁって」
「へぇ? こんなもんじゃないけど……オレがどれだけ情熱的か、今夜ユウくんに教えてあげなくちゃっすね」
「……お手柔らかにお願いします」
「シシシ。どうしようかなぁ」
なのに彼女はそんなハイエナに心を許した。
それは彼女の美点であり、汚点でもあった。
それでも自分は彼女という太陽のような存在に焦がれるように手を伸ばしてしまったのだ。
彼女は受け入れた。自分というハイエナを。もうこれはオレのモノだと、そう思っていた。
だというのに——
「ごめんなさい、ラギー先輩」
彼女は涙を浮かべながらオレに謝ってきた。内容は、彼女がずっと焦がれていたもの。
『元の世界に帰れる鏡を見つけたんです』と言ってきた時には、嫌な予感はしていた。けれども何処かで安心している自分もいたのだ。彼女はオレの手を取ったのだから大丈夫だと。
ああ、でも。
(ユウくんは違ったんスね……)
想いの重さに質量があるのなら、圧倒的に自分の方が重かったと。そういうことなのだろう。なんて滑稽なことだろうか。まるでピエロのようだ。
「そんなに謝らないで。ずっと帰りたかったとこじゃないっすか!」
ならばオレもその質量に見合った答えを出そうじゃないかと軽く答えれば、ユウくんは涙目のままもう一度「ごめんなさい」と謝ってきた。
「どうしてそんなに謝るんすか? 何かやましいことでもあるみたいな……」
「そんなことは、ないですけど……」
「なら、堂々と帰ればいいじゃないっすか」
「……ラギー先輩。あの、」
「いやぁ、めでたいっすね。ようやく帰れるなんて」
ああ、道化なのは確かなようだ。思ってもいない言葉がスラスラと出てくる。
「ら、ラギー先輩……」
「あ、もうこんな時間じゃないっすか。そろそろオレ、レオナさんを起こしに行かないといけないんで行くっすね。それじゃあ」
「……ラギー先輩!」
ユウくんが叫ぶようにオレの名を呼んだせいで、オレの道化の仮面は剥がれてしまったらしい。唇が震える。心の中はぐちゃぐちゃで決壊寸前のダムのようだ。
「ごめんなさい……」
「何に、謝ってるんすか?」
「嘘、吐きました……」
「嘘って……?」
「全部、嘘です。ごめんなさい」
ユウくんは泣き出しそうな顔でそう言った。嘘? 何が? 全部? つまり彼女はオレを騙したということか? それは——何故?
「なんで」
「少し、怖かったんです。ラギー先輩は雲のように掴みどころのない人だから、いつか私のことなんてどうでも良くなってしまうんじゃないのかって」
そう思ったら、嘘を吐いていました。
ユウくんは懺悔するかのように申し訳なさそうな顔をして、そうして困ったように眉を下げる。
「そんな顔、させる気はなかったんです」
「そんな顔って……」
ユウくんはオレの頬に手を伸ばし、そうして優しく包み込むように触れるとまたごめんなさい、と謝った。
「泣かせてしまう気は、なかったんです」
「泣く?」
自分が? あの、生まれた時以外は泣かなかったと言われた自分が、泣いているというのか。ただ人が一人居なくなる程度で。その程度で、オレはダメになってしまうのだと、そう言われたような気分になった。
「アンタが、」
それを認めたら、認めてしまったら。
——もう駄目だった。
「アンタがオレをこんな風にしたんすよ」
ユウくんがオレをこんなにも弱くしたのだ。ならばユウくんが責任を取るのが妥当というものだろう。
「私でいいんですか?」
「アンタがいいんすよ」
「本当に?」
「なんでそんな急に自信なくしてるんすか……」
「私はね、ラギー先輩」
あなたが笑っていてくれるのなら、元の世界に未練なんてもうないんですよ。それが分かりました。
「何言って……?」
「ふふ、なんでしょう?」
「アンタは……まったく。今回オレを泣かせたんすから、罰として今日はオンボロ寮でメシ食わせてもらうんで」
「いいですよ? それくらい」
「アンタ……言葉の意味分かって言ってるんすか」
「はい。私はラギー先輩になら何されてもいいと思っているので」
今回とても傷つけてしまったので、そのお礼にもならないですけど……。
「ラギー先輩。卒業したら一緒に暮らしませんか?」
「気の遠くなる話っすね」
でも、いいっすよ。
「その代わり、アンタもうオレから離れられると思わないでくださいね」
「……離れたくても、もう離れられませんから」
「? なんか言ったっすか?」
「ラギー先輩って、案外情熱的だなぁって」
「へぇ? こんなもんじゃないけど……オレがどれだけ情熱的か、今夜ユウくんに教えてあげなくちゃっすね」
「……お手柔らかにお願いします」
「シシシ。どうしようかなぁ」