twst
私の好きな人は可愛い。
それはもう、それがどんな姿でも可愛いと言えることだろう。
「フロイドが……可愛い?」
戸惑いの声と共に問うように言われたその言葉に全力で頷いた。
「監督生さん。いい機会です。今ならタダで呪いに掛かっていないか見て差し上げましょうか?」
「何を言っているのか分かりませんが……アズール先輩はフロイド先輩のことが可愛く見えないんですか?」
問いに問いで返せば、目の前のアズール先輩は大きな溜め息を腹の底から出しましたと言わんばかりに吐き出す。
「こちらこそ親切心で言っているんですよ? 監督生さん」
貴方もしや——
「あそこで荒れ狂いあのジェイドですらフロイドのことを全力で止めに入るレベルで怒り狂い、連続殺人鬼すらも真っ青な顔で逃げ出すような、そんなフロイドのことすらも可愛く見えているんですか?」
「ええ、めちゃくちゃ可愛いですよね」
「ちょっと貴女が何を言っているのか理解に苦しみますが……」
全力でドン引きしているアズール先輩のことは一先ず置いておいて。
私はフロイド先輩をふと見やる。
そこには暴れ回り、周囲の物という物を破壊し、ジェイド先輩に羽交い絞めにされていても暴れまわるフロイド先輩がいる。
(そりゃ、可愛くも見えますよ)
そんなきっと恋のフィルターが掛かっていようとも普通であれば怖いと思う、そんな姿。
けれども今の私にはとっても可愛く見えるのだ。
だってフロイド先輩が怒っている理由は単純明快。
魔力もないただの女というだけで馬鹿にしてきた生徒、その生徒に怒髪天の如く怒ったのだ。
私の心を傷つけた、そんな風に思って。
まったく、とても可愛らしい人だと思う。
私の心はそんなことで傷付かないというのに。
私の身体はともかく、心に傷を付けられるのはいつだってフロイド先輩だけだというのに。
そんな可愛くて、少し怖いフロイド先輩が私は好きだ。大好きだ。
この想いが叶わなくてもいいと、そう思っている。
思っているけれども、いつかは報われたいとも思っている。
二極化する気持ちはいつだって私の中に存在し、消えることはきっとないのだろう。
それでいいとも思っているし、それではいけないとも思っている。
とはいえ――
「今はこのままでいいと思ってはいるんだけどね?」
「監督生さん。手が空いているならフロイドを止めるのを手伝ってくださいませんか」
「なんでですか? ジェイド先輩?」
フロイド先輩を止める必要性が分からず首を傾げれば、アズール先輩はジェイド先輩の後方支援をするが如く、「いいから止めろ!」と普段の丁寧な口調を崩してまで声を荒げるのであった。
まったく、こんなに可愛い理由で怒っている可愛らしいヒトを止めるだなんて、みんな変なヒト達だなぁ。
「あなたにだけは言われたくありませんね」
ヒクヒクと頬を引きつらせるアズール先輩は「まったく、早くこの二人くっ付いてくれませんかね」なんて恨み事のような声を発していたけれど。
私はそんな言葉なんてまったく聞こえないですよというフリをして、仕方がないとばかりに例えこの目に入れたとしても痛くはないだろうフロイド先輩を止めに入るのであった。
それはもう、それがどんな姿でも可愛いと言えることだろう。
「フロイドが……可愛い?」
戸惑いの声と共に問うように言われたその言葉に全力で頷いた。
「監督生さん。いい機会です。今ならタダで呪いに掛かっていないか見て差し上げましょうか?」
「何を言っているのか分かりませんが……アズール先輩はフロイド先輩のことが可愛く見えないんですか?」
問いに問いで返せば、目の前のアズール先輩は大きな溜め息を腹の底から出しましたと言わんばかりに吐き出す。
「こちらこそ親切心で言っているんですよ? 監督生さん」
貴方もしや——
「あそこで荒れ狂いあのジェイドですらフロイドのことを全力で止めに入るレベルで怒り狂い、連続殺人鬼すらも真っ青な顔で逃げ出すような、そんなフロイドのことすらも可愛く見えているんですか?」
「ええ、めちゃくちゃ可愛いですよね」
「ちょっと貴女が何を言っているのか理解に苦しみますが……」
全力でドン引きしているアズール先輩のことは一先ず置いておいて。
私はフロイド先輩をふと見やる。
そこには暴れ回り、周囲の物という物を破壊し、ジェイド先輩に羽交い絞めにされていても暴れまわるフロイド先輩がいる。
(そりゃ、可愛くも見えますよ)
そんなきっと恋のフィルターが掛かっていようとも普通であれば怖いと思う、そんな姿。
けれども今の私にはとっても可愛く見えるのだ。
だってフロイド先輩が怒っている理由は単純明快。
魔力もないただの女というだけで馬鹿にしてきた生徒、その生徒に怒髪天の如く怒ったのだ。
私の心を傷つけた、そんな風に思って。
まったく、とても可愛らしい人だと思う。
私の心はそんなことで傷付かないというのに。
私の身体はともかく、心に傷を付けられるのはいつだってフロイド先輩だけだというのに。
そんな可愛くて、少し怖いフロイド先輩が私は好きだ。大好きだ。
この想いが叶わなくてもいいと、そう思っている。
思っているけれども、いつかは報われたいとも思っている。
二極化する気持ちはいつだって私の中に存在し、消えることはきっとないのだろう。
それでいいとも思っているし、それではいけないとも思っている。
とはいえ――
「今はこのままでいいと思ってはいるんだけどね?」
「監督生さん。手が空いているならフロイドを止めるのを手伝ってくださいませんか」
「なんでですか? ジェイド先輩?」
フロイド先輩を止める必要性が分からず首を傾げれば、アズール先輩はジェイド先輩の後方支援をするが如く、「いいから止めろ!」と普段の丁寧な口調を崩してまで声を荒げるのであった。
まったく、こんなに可愛い理由で怒っている可愛らしいヒトを止めるだなんて、みんな変なヒト達だなぁ。
「あなたにだけは言われたくありませんね」
ヒクヒクと頬を引きつらせるアズール先輩は「まったく、早くこの二人くっ付いてくれませんかね」なんて恨み事のような声を発していたけれど。
私はそんな言葉なんてまったく聞こえないですよというフリをして、仕方がないとばかりに例えこの目に入れたとしても痛くはないだろうフロイド先輩を止めに入るのであった。
14/14ページ
