妖の王と巫女姫

この御方の傍にずっと居られたらいいのに。
そう切に願っては、瞼を閉じる。
すべてを忘れない為に。自分に刻み込む為に。

「蒼牙様」

ですから、困るのです。
そのような瞳で見つめられたら、勘違いしそうになります。
この世界で愛おしいモノを見付けた、と貴方は仰いましたね。
何故なら私は、私が一番――憎いのですから。

この想いには蓋をしよう。
二度と出てこないように。
決して表に出ないように。
厳重に蓋をして。鎖を巻いて。そうして水底に沈めてしまいましょう。

そうでなければ耐えられない。
そうでなければ壊れてしまう。

「その想いは勘違いです」

「何故、そう言い切れる」

「私が巫女姫だからですよ」

「揶揄うな、和泉」

「……蒼牙様。私は巫女姫。この国を守護するモノ」

国の結界を張り続け、命を賭して臣民を守る。
その為の条件は知っていますでしょう?
妖の王よ、もう一度言いましょう。

「――その想い、私には応えられません」

純潔であることが私に課された宿命。
子が大好きな貴方の想いには決して応えられません。
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